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歌が心を開いた瞬間

介護施設での【歌声広場】

写真は施設の化粧室にあったバラ。
清潔で、いつも心のこもった対応をしてくださる有料老人ホーム。

これはコロナ禍前の出来事です。

***

こちらの介護施設の入居者の中には重い認知症の人も少なくない。
ほとんどの人が車椅子のまま、各居室からスタッフに誘導されてお集まりくださっています。
歌える人も、また歌うことができない人も、一緒に音楽を楽しんで頂いています。

イベントの真ん中くらいで、隣の人と手を繋いで歌う歌があるのだけど、決してこれを強制したりはせず、
「お隣の人と手をつないでみましょうか?」と声をかけると、こちらでは なんだか照れながら、あちらでは仲良し同士なのか『待ってました~』とばかりに手を差し出しておられる。
お隣の人と距離がある人は、気をきかしたスタッフがそばに行って手を繫いでくださっていたりする。

一人の女性、、いつも無反応で こちらのよびかけに反応することは少ない。いや、反応できないんだろうと思う。重い認知症。

その女性が、この日はすすんで隣の人に手を差し出したのだ!
お隣の人も気持ちよくこれに応じてくださって、ぎゅっと手を握ったまま次の歌にうつった。
そんな様子をちらりと見えたときに、私もそばに居たスタッフも、胸にぐっとくるものがあった、、そして じ~んとした嬉しさのままピアノに向かって伴奏を弾くこととなった。

繫いだ手を少しゆらしながら「夕焼け小焼け」の歌はすすんだ。
・・・からすといっしょにかえりましょう・・・
歌い終わって、幼い頃の思い出とともにみなさん穏やかな顔になって、このコーナーは終わるはずだったのだが・・・・。


ふと見ると、まだ繫いだ手をほどかずにいる。
お隣の人も優しいまなざしで繫いだままにしてくださっている。

それからずっとその手を離さずに、次の歌も、その次の歌も、ずっと手を繋いだまま。

最後まで口で「歌う」ことはされなかったけれど。
きっと心で存分に歌ってくださっていたのだと思う。

***

最後に私は、隣の席の女性にお礼を申し上げた。

そうすると、1時間中 一言も発しないままだったその女性が
「ありがとう」と口を開かれた。

担当のスタッフの目にも涙が。
コミュニケーション、取れてる!!

※コロナ禍に入り、こういうことはできなくなった。
「手を繫いで」なんて、とんでもない。
声を出す場面ではマスク、人との距離は十分とって・・・
私はみなさんのそばへは行けない。

だから、かえって思い出すのかも知れない。


#介護施設

#介護施設レクリエーション

#歌声

#認知症

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