ここへ来てごらんなさい、雲が!
居室から移動できる人たちが、毎食ご飯を頂く食堂。
そこが『歌声広場』の会場となっています。
私がうかがうのが 午後3時より少し前。
皆さんがおやつを召し上がっている横で、
ゆっくり、静かに、キーボードの準備をします。
少し、ポロポロとBGMを弾いたりなんかもして・・・。
いつも窓際の席のテーブルにつき、
一人でおやつを食べていらっしゃる女性。
酸素を鼻から送っているのだろう、大きな酸素発生器を車椅子と共に
ガラガラと職員さんが運んできて、席についておられる。
100才近いだろうか、でも大きな声で歌ってくださる。
「供給する酸素の量が減ったんですよ!」と
あるとき、その方の方に優しく手を置きながら、職員さんがおしえてくれた。
「歌を歌うようになって、調子がいいんです!」
ほんとに、他の人より一番最後まで声が続いている。
息が長い! たくさん息を吸えているのだろう。
歌い終わりに声がのびているので、
その方の発声が終わるのに合わせて、私は伴奏を閉じる。
なんか、とても嬉しい!
***
あるとき、準備をしている時間に
「先生、ここに来てごらんなさい」
窓の外を見ながらおっしゃった。
「どうしましたか?」
車椅子の同じ目線に下りて、窓の外を見る。
「きれいな雲ねぇ~」
ほんと! 立っていては見えなかった。
低い位置から眺めて 初めて見えた 入道雲。
施設から出ることのない人たちにとって、
外の景色は鮮やかな 夏の青。