心と刃

 『鬼滅の刃』の原画展に行きました。
 その時に思ったことのお話です。


 家族を鬼に惨殺された主人公が、鬼に変えられた妹を人間に戻す方法を探しながら、仲間と共に鬼と戦う。
 
 日本では知らない人の方が少ないかもしれないと思ってしまう程、大ヒットした国民的漫画のあらすじだ。

 かく言う私がこの漫画を読むきっかけになったのは映画である。
 「大ヒットしてるらしいし、観たいねぇ」とほとんど未履修の状態で、夫と軽い気持ちで映画館に入った。
 約2時間後、マスカラがほぼ落ちた。
 その数日後、本屋のお会計で初めて万を超えた。

 世の不条理、欲望や未熟さに抗うも、それらを受け入れることができず、ただ強さを求めた結果、無辜な人々に暴力を振るい、幸せを奪う、醜い姿となった鬼たち。

 世のため人のため、悲しみや苦しみ、悪しき物を根絶するため、理不尽なまでに不利な状況であろうと、どんなに強い相手にも、最期まで意志を貫き戦いきった柱たち。

 何度も己の弱さに直面し苛まれても、それから決して目を逸らさずに真正面から向き合い、鍛錬と経験を積み、自ら自分を鼓舞し、刃を振るい続けた主人公たち。

 自分の弱さに絶望するまでに打ちのめされた時、「鬼」にならずにいられるのか。
 自分が死ぬかもしれない、諦めても仕方のない状況で、ここまで強くいられるのか。
 困難に直面して、未熟さを他者から追及され、また自ら実感してしまった時に、腐らずに、歩みを止めずにいられたか。

 この作品を読むたびに、自分の心も刃のように打ち直される感覚を覚える。
 心という刃の、弱い部分、曲がっている部分、綻んでいる部分と向き合い、それをひたすらに叩いてまっすぐにする。
 そして、再びその刃を引っ提げて、世の中の苦しみに立ち向かいながら、自分の信じる道を進んでいく。
 
 にわかで始まったが、本当の意味で強い自分であるために、今後の人生に不可欠な漫画の一つである。


 家のソファの横の手を伸ばしたら届く小さな本棚。そこに我が家の鬼滅はずらりと並んでいる。また全巻引っ張り出して、ローテーブルに積み上げて、ゆっくり読もうかな。

 

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