【公式見解】油圧ショベルの通称〈ユンボ〉の由来

表題について、三菱重工業株式会社 神戸造船所の機関紙『神船時報 第264号』に次のような文章が掲載されている。

 (前略)
ちなみにユンボ Yumbo とはウォルト・ディズニ ーの漫画映画に出てくる小象のニックネーム。小さいが重量級のショベルに匹敵するという意味のほか、ショベル部分が象 の鼻の形に似ているので名づけられたフランス人のユーモアに富んだ商標である。

(『神船時報 第264号』昭和35年8月16日発行 1面)


神船時報の記事をもって公式見解とする。


以下、全文と記事画像
*()内は筆者注、組文字をひらいた以外は原文ママ

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神船時報 第264号 昭和35年8月16日発行

シカム社と技術提携成立 ユンボ・ショベルの生産へ
来秋から明石工場で 市販は来春

当社はかねてよりフランスのシカム社とユンボ・ショベル7機種に関する技術提携の交渉を進めていたが、去る(昭和35年8月)2日外貨審議会から正式認可された。当所では今秋(昭和35年)から操業する明石工 場=明石市魚住町清水で同機の生産を開始し、来春(昭和36年)より市販に入る予定である。

ユンボ・ショベルは作業、 旋回、走行の各操作をすべて油圧で行なうのが特徴で特にクローラ(無限軌道) 走行が油圧により左右別々に独立回転できるという世界でも珍しい設計になって いる。またショベルは0.3立法メートルがから0.6立方メートルのバケット容量で重心が低いため、35%こう配でも作業することができる。そのほかバックフォ、クラムシェル、クレーン、リッパ 、プレードなど約三十種のアタッチメントを交換すればあらゆる種類の掘削工事や運搬工事に使えるという重宝さ。 一方、エンジンは35馬力から60馬力の空冷または水冷式ディーゼル・エンジンで、平方セン チ当たり90キロの油圧ポンプを駆動するが、これによって得た油圧が油圧モータを動かして前記 クローラを走行させるほか、正逆両方向に素早く 360度の旋回もできるようにしている。さらに油圧ジャッキによってショベルの操作が行なえるのも、この油圧の力によっている。 土木工事の掘削、積み込み 削溝などの作業にはパワ・ ショベルが広く用いられているが、在来の機械はいずれも運転が複雑で、歯車伝導機構やウインチ巻き上げ機構、クラッチ装置などにいろいろ技術的難点がありまた能率、耐久度でも信頼性に乏しいので、当所はこれらの諸欠点を克服して世界に誇るに足る高性能、小形、軽量の優秀機を生産す ることにして、今回の技術提携に踏み切ったものである。その機種には次の7種がある。 

>03立方メートル系統=Y35形(クローラ式)H25形(タイヤ式) S25形(ト ンラック積載式)および特殊形2種
>0.6立方メートル系統=Y500形(クローラ式) S500形(トラック積載式)

なおユンボ・ショベルの販売権は日本、韓国、台湾のみ当社が独占、中共、フィリピン、タイ、ビルマ、マラヤ、インドネシア、香港、カンボジア、ベトナム、ラオス、セイロンの各地域は当社とシカムで話し合って決めることになっている。
ちなみにユンボ Yumbo とはウォルト・ディズニ ーの漫画映画に出てくる小象のニックネーム。小さいが重量級のショベルに匹敵するという意味のほか、ショベル部分が象 の鼻の形に似ているので名づけられたフランス人のユーモアに富んだ商標である。

ユンボの専門工場
シカム(S・I・C • A・M)社の正式名称はコンツリクシオン・ダパレイユ ・メカノ・イドローリークヨ工業会社 Société Industrielle de Construction d'APPareils Mécano-HydrauLiques NSSといいフランスのリヨン市とその郊外に本社および四工場がある。従業員約350人で、ユンボ・ショベル の製作を始めたのは第2次大戦後。全油圧式の小形パワーショベルの生産では世界最高の専門メーカーである。

(『神船時報 第264号』昭和35年8月16日発行 1面)


商標としてのユンボ
昭和63(1988)年 株式会社レンタルのニッケン (同社は三菱商事の子会社) が商標申請を行い、平成1(1989)年 登録番号 第2086745号として登録されている。

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