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おでんの日

自己紹介の好きな食べ物の欄に「おでん」と書き始めたのはいくつくらいからだっただろう。
1年間夕食の献立がおでんでも食べ続けられるかもしれない…と真剣に考えてしまうくらいには好きな食べ物である(ちなみにそのおでんの隣に「白身魚」と書くくらいには白身魚のことも愛している)。

でも、おでんを作り出すには気合いがいる。
まず、厚揚げとがんもは必ず豆腐屋で買うと決めている。がんもは色々種類があって、毎回どれを買うか悩まされる。
他の材料はスーパーで購入するけれど、もち巾着は欠かせないし、練り物は三色だんご、丸天、ちくわ、ごほう天は最低限用意する。
もちろん、大根、たまご、こんにゃくなどの主役級も忘れてはならない。
おでんを作る日は朝からとりかかる。
大根の下茹でをして、茹で卵を作り、その間に出汁を取る。
出汁はたっぷりの鰹節で取り、練り物と厚揚げたちは油抜きをして、結び昆布と一緒にいざ、出汁の中へ。 
初日はあまり煮込みすぎないほうがおでんは美味しいと思う。出汁を吸ってくたくたになったおでんは二日目楽しめばいいのだ。練り物たちからいい味が出汁に染みたところで火を止めて、後は味が馴染むのを待つ。

という感じで毎回作っているので、おでんを作る時は前日から買い出しが出来て、朝から時間がある日、しかもそこそこ懐が暖かい時でないと、よし、作るぞ!とならないのだ。

子供の頃、おでんの翌日は親に頼んでお弁当にもおでんを入れてもらった。
実家のおでんは味は美味しかったものの、母はそれほどおでんに重きを置いていなかったのか、おでんの主役とも言える、大根、たまご、こんにゃく、の全員が揃っていることは稀だった。
練り物がまったく入っていない時もあった(なぜ練り物が無いのにおでんを作ろうと思ったのか謎である…)だけど、絶対に入っているものもあった。
セレベスである。
セレベスとは、粘りがあんまりない里芋のことで、農家の親戚から頂いたこの芋が必ず母の作るおでんの中には入っていた。
だから私はずっとセレベスはおでんの定番の品なのだと思い込んでいた。そうじゃないということを知ったのは、大人になってからである。
セレベスは私が住んでいる地域でもたまに見かける。しかし、セレベスを見かけた時とおでんを作りたい時のタイミングが当然重なるわけではないので、なかなかおでんのセレベスを食べることが出来ないのが悲しい。

私が子供の頃から食べていたおでんは、いわゆる関西風おでんである。
だから、東京のコンビニではんぺん(あの球体のやつ)を見た時は驚いて、一緒にいた人に「あれ何ですか?」と聞いたりした。
食べる直前の鍋に放り込んでぶわわと膨らむはんぺんが面白くて、東京で出会って以来、はんぺんは私のおでんの仲間入りをした。

こんなふうに子供の頃から好きだった味を入れたり、大人になってから出会ったものを入れたりして、面倒くさい下準備もすべて終わって、おでんをくつくつと煮ている時、心の底からしあわせを感じる。

明日の夕飯はおでんだ。

特に懐は暖かくないし、朝からおでんを作るほど暇でもないけど、えいやと今日材料を買って来てしまった。
当然こんな日もある。

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