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中途採用をしていた時の話

目標を達成するために必死だった。
今期の採用計画通りの人数を採用できなかったら評価を下げると言われていたから。

いつものように採用面接に来た人の窓口対応をした。
小さな会社なので、求人の掲載媒体選定から応募者と面接官のスケジュール調整、筆記試験採点合否通知入社準備まで、中途採用に関わることを、面接以外はまるっと1人でやっていた。
緊張した青年だった。
緊張がほぐれてその人の良さが面接で100%伝わってほしかった。
それはその人のためというより自分の利益のためだった。

笑顔で声をかけた。
「緊張していますか?」
声色にも細心の注意を払った。威圧感がない声の張り方で、でも明るく安心できるような大きさで。
「面接官の方は厳しい方じゃないので大丈夫ですよ」

私はしばらくして適応障害になって仕事を5ヶ月くらい休職した。働きすぎたみたいだった。

休職して自分がしてきたことの無意味さを強く感じた。あんなに頑張っていたのに、私がいなくても会社は回った。
私の上司は私自身を見ていたわけじゃなかった。私の後ろにある仕事のキャパシティを見ていたから目が合っているように見えていただけだった。

復帰した今もその人は会社にいる。最近は少し仲良くなって、いろいろ話すようになった。
あなたは周りに恵まれていると言っていた。会社にいるみんなに会いたいから会社に来ていると言っていた。そんな感性を持ったあなただから周りに感謝できるんだ。そんなあなたに会えてよかった。

あなたが会社にいてくれること、周りに恵まれていると思ってくれることで、私が感じていた頑張ることの虚しさなんて吹き飛んだ。

会社にいてくれてありがとう。

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