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もっとファンタジーを! 第八章「Absolutely aberration」

朝、というかほぼ昼に起きるといつぶりかの静心からのメッセージが届いていた。
 「無事、退院しました(ピース)」
 それに俺と大輝は超絶大きな歓喜のメッセージを送る。事前に話しておいた偽装行為だ。
 まあ、ここまでする必要もない気はするが、念のため。
 そして、午後は大輝と二人で静心のお見舞いに行く。まだ最後に異常がないか検査があるので、退院は明日になるだろうということだった。
 ようやく本当に「日常」が戻ってくる気配がした。
 当たり前の日常に退屈していた俺にとってここ最近は奇妙奇天烈にあてられて楽しんではいたのだが、流石に怒涛過ぎて疲れていた。
 非日常もほどほどだな、少しの間は退屈でも日常を楽しもう。
 
と思っていたのだが、そう簡単にはいかなかった。
 同じ日に二つの事件が起きたのだ。
 まず、俺と大輝が病院から出るとほぼ同時にとあるネットニュースが流れてきた。

 【速報】小説家の黒鳥創、ビル倒壊の消えた一人であると公表。

 「おい、赤城、これ見ろよ」そう言って大輝が見せた画面にはそう書かれていたのだ。
 「え、これマジ?」
 「この前のやつ、本当だったのか…」
 「な、知ってたらサインもらってたわ。」
 そう。この公表したという黒鳥創という人は俺と大輝、静心が三人とも知っている小説の作者だ。最近はSNSでも短編の漫画を描くなど活動は多岐にわたる凄い人だ。俺たちが好きなブルーノートの作者、御影先生とも交流があることで俺らの間じゃ有名だ。
まさかそんなすごい人が居たとは!
てか俺が助けんじゃん!
 俺たちは記事を開いて読んでみる。すると、最後の方に
 「尚、黒鳥氏はその体験後、自身に特殊能力が身についたとも公言。ただし、科学的根拠はない。」
 と書かれていた。
 おいおい、能力者だということを公表しやがった。しかもそこそこちゃんと発信力のある人が。
 大輝と「これはやべえ。」みたいなことを話していたが、逆に考えるんだ。これを好機と捉えよう!
 世間に非科学的なものが登場した。それも覆せない事実として。これを世間や科学者、報道はどう処理するのか見てみたい。これは俺たちの今後も大きく左右することだ。
 黒鳥創はSNSで自身の能力について説明し、その動画も載っていた。
 そこにははっきりと黒鳥創の背後から伸びる白い半透明の腕が写っており、コメントもかなり賛否別れていた。
 動画の最後には「今後も定期的に私が経験したこと、私の能力のことを話すつもりだ。」と言っていた。
 元々黒鳥創のファンだった人たちも「先生すごいです‼」派と「こんなフェイクを流すなんてガッカリしました…」派に分かれ、さらにはこの件で知った人たちもあーだこーだ言って議論が交わされている。
 俺と大輝は今後の動向に注視するということでそれぞれ家に帰った。
 家に帰った後は試験も近いので黒鳥創のことは半分忘れて勉強に勤しんだ。

 そして、本日二つ目の事件は起きる。
 夕方になり俺は親が夕飯を作っている後ろのリビングで適当にニュースを見ていた。忙しかったとはいえ流石に一気に詰め込んで勉強するものではないな、超疲れた。そんなことを想いながら脳死でテレビを見ていると、速報が入った。

 【速報】新宿区の路上で男が暴走

 見出しだけではさっぱりわからないが、ニュースキャスターが慌てて原稿を読み上げる。
 「速報です。先ほど、東京都新宿区の路上で男が暴れていると通報が入りました。詳しい状況はまだわかっていませんが、甚大な被害が出ている模様です。」
 テレビ局がかなり騒がしい。
 その様子を感じてか親も俺の隣に座る。
 「えー、先ほどの件ですが、現場と中継が繋がっております。現場の大場さん。」
 「はい。」
 「状況はどうなっているでしょうか?」
 「はい。ただいま、私の後ろで、まさに、まさに男が暴れています。警察が一定の距離を保ちながら牽制ししているのですが、なにやら男は一緒に居た男をなにか道具で襲い、そのまま周りの人にも危害を加え始めたということです。」
 「道具と言うのはなんでしょうか?」
 「それはですね、…とにかく私の後ろを見てください!」
 そういうと映像はキャスターの後ろの映像をアップにした。
 すると、そこには…。
 3本の鎌状の黒い尻尾が生えた男が警察と対峙していた。
 間違いない。能力者だ。
 「もう、どうなたっていい!」そんなことを叫びながら、パトカーをいとも簡単に切り裂く。
 「俺は、さっきクソゴミな上司を殺したア!これで俺は解放される!ハハハハ!」
 「俺はお前らより強いんだよ!なのに俺よりもいい生活しやがって!」
 「あー!イライラする!」
 そんなことをずっと言っている。
 失うものが無くて武器を持つと人はああなるのだな。勉強になった。
 そしてその直後
 画面の中から聴こえてきた警察の声。
 「発砲許可が下りた!全員、構え!」
 「撃て!」
 その直後鳴り響く銃声。
 男は自身の尻尾で器用にそれを防ぐと、めちゃくちゃ速い速度で警察に反撃。次々警察の体が引き裂かれる。
 おいおい…。これは色んな意味でまずいぞ。
 隣で親もあれこれと言っている。
 警察が無残にやられた直後、一つの影が現場に落ちてきた。
 白いなにか塊。
 男も警察もそれに気を取られている。
 そして、次の瞬間。白い塊が解けたかと思うと、そのまま解けたひも状のものが腕の形になり、男を貫通した。半透明なのですり抜けたような感じだ。
 男が静まり返る。そして、刹那。発砲音が響いた。
 半透明の腕が消え、男がその場に倒れる。
 そして、腕の主が画面に映る。
 そう、黒鳥創だ。
 黒鳥創は自身の能力を語っていたので、男は黒鳥創のなにかしらの作品を追体験させられただろう。そして、その生まれた隙に誰かの銃弾が男を仕留めた。
 黒鳥創は、男が警察に連れて行かれるのを見ると、近づく警察よりも早くどこかへ消えた。
 
 この中継は多くの国民が見ていた。 
 誰もがこの世界に入って来た異能を認めざるを得なくなった。
 午後に黒鳥創の告白があり、その夕方にはそれが確信に変わったわけだ。
 さらに黒鳥はヴィランを倒したのだ。至るところで称賛の声が止まない。
 
 だが、翌日にはインターネットの声は様子を変える。
 「でも、こんな能力を持ってる人が他にもいたり、そこら辺に居るとか怖くね?」
 的なやつだ。まあ、当然の反応だろう。俺も能力を持っているなんて公表しなくてよかったと心底思った。
 学校でもみんな昨日の話をしているようだった。当然だ。
 そして、いつものように俺の席に集まった大輝、静心、入江。四人で他の人たちとは違う「ヤバくね?」を連発していた。
 少し、状況がマズい。
 俺たちが能力者ということはもちろん知られていないが、万が一バレた場合、どうなるかわからない。
 必然的に能力を使うことは減りそうだ。

 一方の黒鳥創。

 ピーンポーン
 「黒鳥先生、入りますよ‼」
 担当編集の辻井だ。
 「黒鳥先生、なにやってるんですか!あなたは!」
 「なにって?」
 「昨日のあれですよ!」
 「人助けのことかい?」
 「う、ま、まあ…、とにかくですね!」
 「私は人助けをした!個人的なことだがこの力の練習にもなった!いい機会じゃないか!」
 「でも、世間からの風当たりを考えてくださいよ」
 「風当たりだ?確かに昨日はSNSでもテレビでも褒められまくってたのに今日見たら掌返しが増えたよな、だが!これが俺だ。」
 「まあ、先生らしいですけどね、批判が増えると先生の本、売れなくなっちゃいますよ?」
 「ああ、それでもかまわない。私のことを信じてくれる人に伝わればいいさ。全員のことなんて初めから考えてないよ。」
 というか昨日の犯人。ふれた瞬間に少し考えとかを見させてもらったのだが、そもそも心のうちに黒い塊があって、能力によって簡単に上司に復讐が出来てしまったわけだ。色んな意味でかわいそうな人間だった。
 その後は普通のやり取りをし、辻井は帰った。
 さて、今日も執筆を続けよう。

 数日後。
 インターネットでの論争は激化。それに昼のニュースでも議論が行われ始めていた。「専門家」なるものもたくさんいた。なにが専門家だ。
 最終的には「これは最早認めざるを得ない事象」「国がもっと研究すべき」「新しい法案を作るべき」などでまとまっていた。
 確かに私が向こうの立場でも同じようなことを言うかもしれないが、今はまさに当事者だ。仮に俺を捕まえようとするなら、その時は容赦しない。
 これに自己防衛が認められないならいよいよこの国は終わりだ。
 それからの数日間、執筆活動の傍らで能力の練習をし、その様子もSNSに載せたりした。大丈夫。いくら叩かれても私はこの力がある。
 
 そしてこの日、次の事件は起きた。
 「今日、午後1時頃、都内の高校で放火事件が発生しました。犯人の少年は昼休みの時間にいきなり友人に向かって火を放ったということです。幸い、火はすぐに消し止められ、火事は最小で済みました。火を放たれた少年と、その周りにいた数人が火傷を負ったとのことです。尚、犯人の少年はすでに身柄を拘束されています。」
 
 その後、インターネットで被害者と名乗る人物や同じクラスだという人物からの証言が上がった。
 どうやら、犯人の少年は友人に能力が使えるようになったことを言ったらしい。初めはみんな「かっけえ!」とか囃し立てていたが、すぐに迫害のターゲットになった。
 そして、それに怒った少年は友人に向けて能力で炎を放った。と。
 なんとなく予感はしていたが、これが本当なら世間からの風当たりは悪くなるに決まっている。
 「あーあ。またやらかしたやつが。」
 ついそう口から漏れてしまう。本当に、バカはこれだから困る。
 流石に私がこの件に対して何も言わないのは変なので、意見を言うために動画を撮影してSNSに載せた。
 「今日また能力者と思われる事件が起きた。だが、全員が全員こんなやつじゃない。私はこの力を自分のために、みんなのために有効に使いたいんだ。だから迫害はやめて欲しいと思っているよ。馬鹿が力を持つべきではなかったが、こればっかりは偶然でしかない。だから、これを見ている能力者、下手に使えば首を絞めるだけだ。良い方向に使え。以上!」
 まあ、これに対してもまた色々と言われるだろう。だが、それでいい。
 議論が激化し、逆にだんだんいい方向になってくれれば。
 「これは神からのギフテッドだ。地球のために使う。」
 
 翌日、千代田区、警視庁本部。
「えー。ここ数日の人間による超常現象的事件に伴い、対策本部を仮に設置することになった。一応の名前は、仮設超人事案対策本部だ。」
 ざわつく会場。
 「そして、この対策本部の統括長に、梶白かじしろ幸樹こうきを任命する。以上。」
 いきなりの発表に会場はざわついたままパラパラと拍手が鳴る。謎の空間。
 「参ったなー」
 そうつぶやくと、同僚から労われる。
 さっきこの発表を行った上司は「梶白君、確か理系大学の出身だよね?だから任命したんだ。悪く思わないでくれ。部下につく人は各部署で立候補を一人取ってみるから。一人も居なかったら誰かにお願いするよ。捜査に進展があれば人数も増えるからがんばりたまえ。」
 そう言い残して消えていった。
 いたるところから「ありゃ実質左遷だよな。」「かわいそうだわー」みたいなことが聞こえてくる。
 参ったな、こりゃ。
 とりあえず、色々調べるかー。
 と思い、俺はデスクに向かう。
 すると、トントンと肩を叩かれた。
 「梶白さん」
 振り返ると若い婦警が立っている。
 「私、超人事案対策本部に立候補しました。白鷹しらたか檸檬れもんと言います。よろしくお願いします。」
 「ああ、立候補ね。よろしく。でもなんでこんな左遷先に自ら?」
 「ここ最近SNSで能力者であると発信している黒鳥創ってご存じですか?」
 「ああ、さっき色々見たよ。小説家の人だね?」
 「はい。あの人と私、同級生で」
 「ほう。それで?」
 「あ、少し関わりもあったものですし、力になれるかなと思いまして…。」
 なるほど。なんだか面白くなりそう。
 退屈しなそうだ。
 「じゃあ、早速だが、黒鳥創に連絡とってみてくれるか?」
 「はい!わかりました!」
 
 同日、赤城たち。
 「おい、みんな、これ見たか?」 
 放課後に俺はネットニュースを見せる。
 「あ、それさっき教室で言ってるやついたわ!」
 「こっちのクラスにもいた。」
 「ヤバいよね!また能力者でしょ!?」
 「なんかすでにいじめ?っぽいことが始まってるみたいだよな…。」
 「なんか、怖いわ。能力者ってこと隠しておいてよかったわ。」
 「本当ね。」
 「あんたらがいじめられたら能力で追い返しちゃえ!」
 「ダメだって、逆効果だよ。」
 「そうだよ朱里。てかやっぱ朱里は能力持ってなくてよかったわ。」
 「そうだね。面倒くさいよ。」
 「えー、でもカッコいいじゃーん」
 そんなやり取りをして家に帰る。
 家に帰ってからインターネットでのあれこれを見たが、この前よりも能力者に対して悪い意見が増えた。そりゃそうか。
 勝手に肩身が狭く感じている。
 SNSで黒鳥創が「能力はいい方向に使えばいい」と言う風に言っていたが、共感だ。本来ならこれをいい方向に使えれば、俺の能力だって科学界に激震を走らせることが出来る。ただ、風当たりが強すぎる。静かに暮らすしかない。
 
 同時刻、黒鳥創。
 電話が鳴った。
 「はい?」
 「あ、黒鳥先生、今取材?のお願いがあったんですけど。」
 「どこから?」
 「警察です。」
 嫌な予感が走る。
 「要件は?」
 「この前の黒い尻尾の犯人ついて聞きたいそうです。」
 「なるほど…。」
 「どうします?」
 「少し考えさせてくれ。」
 警察か…。流石にすぐに逮捕されるとかそう言うことは無いだろう。ただ、確実に警戒はしてくるはずだ。
 逆にここで渋れば怪しまれるか…?
 一度赴いて反応を伺うのは、アリだ。
 よし。
 少し思案し私は辻井に折り返しの連絡を入れてアポを取ってもらった。
 
 翌日のお昼。都内のカフェに赴く。
 ウェイターに予約している「梶白」ということを伝えると席に案内された。
 近づくと、向こうがこちらに気付き、立ち上がる。
 そこには私服の男女が居た。
 「黒鳥創先生、本日はご協力ありがとうございます。」
 「ありがとうございます。」
 「あ、いえ、全然大丈夫ですよ。」そう言って二人の対面に座る。
 「改めて、私が警視庁、超人事案対策本部本部長の梶白幸樹です。」
 「同じく、白鷹檸檬です。」
 「よろしくお願いします。」
 白鷹檸檬だと…?そこも気になるが、別のこともかなり気になった。
 「超人事案対策本部、ですか?」
 「はい。最近起きた二つの事件で新設されました。」
 「ほう…。」まさかもう警察もここまで動いているとは…。
 「流石にもうこの二件で我々も認めざるを得なくなりました。しかし、対策をしようにもその詳細を我々は知りません。なので、能力者であると公表している黒鳥創先生に是非協力してほしいと考えております。」
 「なるほど…。」まあ言いたいことはわかる。
 「具体的にはなにをすれば良いのでしょうか?」
 「まずは黒鳥先生が持っている能力を科学的に解析させていただきたいと考えております。そのうえで、これら能力をどう規制していくのかを一緒に、能力者の視点から考えていただければと思っております。」
 これは俺にとっても別段悪い話ではない。この能力に関してももしかしたら科学的なことがわかるかもしれない。ただ、執筆に影響が出るのはごめんだ。
 「わかりました。私も気になることが多いのでぜひ協力したい。ただ、執筆に影響の出ないようにお願いしたい。」
 「もちろんです。先生の仕事には支障の出ないようご都合はすべて合わせるつもりです。」
 「ありがとうございます。早速なのですが、能力を少し拝見することは可能でしょうか…?」
 「構いませんが、人目に付くところでは少々都合が悪いので場所を変えませんか…?」
 「ええ、では警視庁本部に行きましょうか。上司にも会わせたいですし。構いませんか?」
 「構いません。向かいましょう。」
 ここから警視庁までは歩いてもそう遠くないので三人で歩いていくことに。
 道中で気になったことを聞いてみた。
 「そういえば、白鷹さん、ですよね?」
 「はい。」
 「もしかして、出身同じだったりしません??」
 「そう!覚えてたの!?」
 「もちろん、そんな試験のたびに苦労しそうな名前、憶えてるさ。」
 「嬉しいなー、私、黒鳥くんともまた話せると思ってここの部署に立候補したの」
 「わざわざか、でも、嬉しいよ。あの時のお礼もまだ出来てないし。協力は惜しまないよ。」
 まさかとはおもったが、この白鷹檸檬、俺と中高と同じ学校だった人だ。なんなら、俺の中ではトップクラスに印象深い人物だ。大人になって様子はまるで変わったが、警察官になったのはとても納得できる。
 懐かしいな。
 そんな話をワイワイとやり、時折梶白からの質問も飛び、楽しく警視庁本部に着いた。
 なんだか、この人たちとならこれからも楽しくなりそう、そう思ってた。
 
 しかし、この後それは打ち破られる。
 警視庁に着いた私は、まずはこの超人対策本部?を作ったという梶白の上司に会い、さらに偉い人偉い人にと会った。言葉を交わす全員から「協力に感謝する」と言われた。
 そして、私の能力のお披露目タイム少し広めの会議室に梶白、白鷹をはじめ色んな人が集まった。
 せっかくこんなに人数が居るので、使っていなかった「物語の配役を決めて演技を行わせる」をやってみることに。
 「では、はじめます。」
 そう言うと私は白い左腕を出現させ、一人一人に触れていく。そして、配役を適当に決め、演劇スタート。今やってもらっているのは私の二作目のラノベだ。各々が配役通りにセリフを言っており、なんだか面白い。
 少し時間があるので、先ほど触れた人たちの記憶を振り返る。
 すると、いわゆる「お偉いさん」ぐらいの人たちの考え、それが明確に伝わって来た

 俺は使い捨てられる。
 
 能力者に対して厳しい規制を敷くつもりだ。
 政治家と癒着している。
 能力者たちが迫害を受ける。
 それを流れてきた記憶、考えから瞬時に悟った。
 これでは協力は出来ない。
 ここにいては何をされるのか分かったものではない。
 ただ、梶白と白鷹だけは違った。
 梶白は半ば強引にこの決定を受けて普通にやる気がないし、何も考えていない。事務的に仕事をしている。そして、白鷹は、さっき言っていたように俺と再び会うために立候補したようで、俺に協力的なのも事実だ。
 問題はその他の連中だ。
 今彼らは俺の術中にいるが、完全に敵だ。
 どうしたものか。
 俺は少し考えてから能力を解いた。
 先ほどまで能力にかかっていた人たちが感嘆の声を漏らす。梶白と白鷹もだ。
 「凄い。これが超能力…。」そんな意見が飛び交う。
 そして、すぐに私は部屋から出る。
 「本日はありがとうございました。あなたたちの考えはよくわかりました。わかりあえないなら協力は出来ません。」
 半ば宣戦布告を行った。私はここで気づいた。
 私は明確に怒っていたのだ。
 能力者は悪くない。手にした人間自身が悪い。殺人が起きたからと言ってナイフの使用を禁止したりしない。能力は使い方で良い方向に使える。
 私の能力はこの世界をも変えられる。
 この狂った世界を。 
 私が部屋を出たのを梶白と白鷹が追いかけてくる。
 「ちょっと!黒鳥くん!」
 「一体いきなりどうしたんだ!」
 「二人は本当に関係ない。あと、気をつけてくれ!」
 ただ、警視庁の内部構造がわからなかったためか閉まっているドアにぶち当たる。
 「ちょっと、どうしたの?黒鳥くん。」
 
 俺は先ほどのことを話した。
 
 二人は信じられないという様子を少しだけ見せたが、多分、ある程度分かっていたのだろう。
 大人しく私を解放してくれた。
 白鷹は最後に
 「なにか力になれるなら言ってね。」
 「私も、二人がこれで仲悪くなったら嫌だしな、協力は惜しまないよ」
と二人は言ってくれた。
 ありがたいが、あくまでも二人は警察だ。
 俺はこれから追われる対象になりかねない。
 これから警察がどう動くのかわからないが、一応備えておこうと思った。
 
 その日の夜中。
 「ソウ、そっちに連れて行ってくれ」
 そう言うと、外が一瞬光り、気づけば私はソウの目の前に来た。
 「ありがとう。」
 「いやいや、僕も色々と楽しませてもらってるし、いつでもどうぞだよ!」
 「最近色々と能力を使ってみたんだ。そろそろ次の能力も開放してほしいのだが…。」
 「うーん。正直もう少し慣れてからの方がいいと思うんだけどな…。」
 「できれば早く欲しいんだ。能力者の地位が落ちてしまう前に。」
 「でもなー。壊れちゃうかもよ?」
 「構わない。俺は地球を変える。その後はどうなってもいい。」
 「変えた後の世界、見たくないの?」
 「大丈夫だ。」
 「地球人ってやっぱ不思議だよね。そう思ってる人何人も見てきたよ。僕はここからそれを見るのが好きなんだけどね。まあ、いいよ。解放してあげる。」
 「ありがたい。面白いものを見せるよ。」
 「お願いねー」
 そういうとソウは俺に向かって右手をかざした。
 直後、体に流れる電撃のような感覚と痛み。
 
 それが落ち着くと、俺は新しい能力を手に入れていた。
 「そうだ、ついでに教えて欲しいことがあるんだけど。」
 「いいよ、なに?」
 
 同時刻、赤城。
 もう寝ようと思って部屋の電気を消した。そして、ベッドに横たわると、いきなり空が少し光った。
 なんだ?と思い外を見る。
 星空も見えているし雷ではなさそうだ。
 途端、全身に襲い掛かる強烈な違和感。
 直感だが、誰かが隣の世界に移動した。
 どうやって?
 そう思ったが、多分これは事実だ。
 なにかが起きようとしている。

ぐんぐんどんどん成長していつか誰かに届く小説を書きたいです・・・! そのために頑張ります!