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もっとファンタジーを! 第六章「Joyful in the world」

気づけば隣の世界のどこかわからない草原に居た。
 そして俺の周りには大勢の地球人がいた。
 俺は成功したのだ。
大規模な隣の世界への移動に。
そして、大勢の人の命を救った。
 「おい、赤城…。お前…」
 「俺も能力が強化されたみたいだ。」
 「それもそうだが、お前みんなを救ったぞ‼」
 周りを見渡すと多くの人々が地面に座り込んでいる。
 俺が助けたんだ。
 だが、みんな困惑している。当然だ。ここは隣の世界…。
 隣の世界に来た…?地球人が?
 その瞬間俺と大輝は気づいた。
 「大輝‼」「赤城‼」俺たちは顔を合わせる。

 「「魔力をあげないとマズイ!」」

 以前、大輝と静心は魔力を持たない状態でこの世界に来たことで魔力に体がやられてしまった。そのせいで静心はまだ体が植物状態のままだ。
 すぐにこの人たちにも魔力をあげないとどんなことになるかわからない。
だが、俺と大輝には「ギフト」を使うことはできない。
 「大輝、この人たちに事情の説明とか頼めるか?」
 俺よりも快活で能力も見た目にわかりやすい大輝はこれに適任だろう。
 「おう!任せろ!そっちは頼んだ!」
 そう言われるや否や俺はワープの魔法ですっ飛んだ。
 まずここがどこかわからないので一旦真上にどんどんワープして飛ぶ。当然浮遊は出来ないがどんどん落ちる。
 落ちながら上に上に移動し、周りを見渡す。
 そして、かなり広い森の向こうに街を見つけた。多分ウェンティたちがいる街だろう。
 森も相当広いがウェンティのいる街が大きくて助かった。
 俺は出来るだけ急いだ。
 しかし、森に行くのは躊躇われるので、俺は落ちながら斜め上前に飛び続け、空に居る状態を保ちながら向かった。
 これは相当、本当にかなり疲れたが、なんとか街へ近づく。
街の概観が見えてくると思った通りいつも来ていた街だった。
 この世界に来る前はお昼前だったので、まだ日付が変わる前だろう。
 急いで城へ入り、とにかくウェンティに会わせて欲しいと頼んだ。
 ただ事ではないことを察知したのかこの前とは別の警備の人がウェンティを呼んできた。

 「アカギ!どうしたの!?」
 ウェンティもただならぬ状況を察したのだろう。慌ただしくやって来た。
 俺はウェンティに事情を説明、すぐにギフトを使える人何人かに手伝ってほしいと頼んだ。
 すると、ウェンティはその場で魔法を使う。両手をガシっと合わせ、祈るようなポーズを取る。そしてその手を中心に緑色の魔法とそれに伴うオーラが発生。そのオーラが風のようにウェンティの周りに渦を作り、だんだんと散らばる。
 「メッセージ。オーダー。王室救護部隊、2~4級魔導士は至急、エントランスフロアに。」
 魔法による伝令だろう。流石次期王室賢者と言った感じで、カッコいい。
 俺がウェンティのカッコよさと青竹色というか若竹色の魔法に見惚れていると
 「アカギ、ちょっと待ってね、すぐにみんな集まるから!」と言われた。頼もしすぎる!
 そして、本当にすぐに恰好を整えた部隊が集結。中にはアクアラング医師もいる。
 ウェンティが事情を簡単に説明し、俺を先頭に案内することに。
 箒で空を飛ぶ人はいないようだったが、各々自分に合った飛び方をしてついてくる。
 俺はカクカクと上下にワープする拙い移動。ウェンティは緑色の風のオーラを纏ってそのまま飛んでいる。アクアラング医師は水の竜のようなものの背中に乗っている。
 その他にも鳥のオーラに乗るもの。実際に召還した鳥のような生物にしがみつくもの。布に魔力を送ってそれに引っ張ってもらうなど本当に様々だった。
 森が近づくと一瞬皆に躊躇いが見られたものの、そのまま上空を飛ぶのはまだ安全らしいので森の上を突っ切っていった。
 しばらく飛ぶとそんな異質千万な空飛ぶ集団がたくさんの地球人がいるところへ集結。
 近づくと大輝が自分の能力を見せながら説明をしているところのようだった。
 だが、怒っている人が多くいるらしい。様々な感情の人が居るその上に俺たちが舞い降りる。
 全員が俺たちを見上げて唖然としている。
 そりゃそうだ。奇妙奇天烈な状況なのだから。
 なんか色々と言っている人が居るが、一刻を争うので、有無を言わさずに王室の部隊が「ギフト」を使用する。そして直後に「トランスレイト」、翻訳の魔法も使用。ここからは次期王室賢者のウェンティが説明を始める。
 しかし、それよりも早く「ギフト」を受けた自分の身体たちが応える。「何かしらの能力が使えるようになったこと」と「ここは隣の世界」だということを。
 それを否が応でも感じ取る。それをここにいる地球人全員が実感する。
 俺も大輝も静心も経験したあの感覚。
 そう、ここにいる全員が今能力を手に入れたのだ。
 だが、こうするしかここにいる人たちを助けるすべはなかった。
 身体が理解すればウェンティの説明もみんなある程度は納得した。
 そして、俺の能力がないと地球に帰れないことも伝えられた。
 「この世界からみんなが居たチキュウに戻るためには、現状はここにいるアカギの能力しかない。だから、みんなアカギに従ってほしい。」
 みんなしぶしぶと言った感じであった。
 だが、すぐに地球に戻るわけにはいかないのだ。
 俺の能力はこっちの世界のどこから帰ろうと入って来たところからしか出られない。
 そして、今、俺たちが入って来たところには倒壊したビルがあるはずだ。このケースは初めてだが、万が一の場合、出た瞬間に潰れるなんてこともあるかもしれない。何かしらの方法で検証する必要がある。
 とりあえずそれが思いつくまではみんなには落ち着いてここに居てもらう必要がある。
 俺が連れてきた地球人は全部で31人。結局俺の強化された能力がどの程度の範囲を移動させたのかはわからない。ビルの下敷きになった人が居ないことを祈るばかりだ。
 そして、この31人にそれぞれの能力を聞いたが、地球に戻れるような能力はなかった。
 少しの間、大輝、ウェンティ、アクアラング医師とかと相談していた。助けた人たちの中には「早く地球に返してくれ!」などキレ始めた人も居るが、なんとか周りの魔導士たちがなだめる。
しかし、結局糸口は見つからず。さらにこの草原にいると夜行性の野生動物に襲われる可能性があるというので一度みんなで街へ戻ることに。
 道中も色んな人と色々と議論を交わしたが、結局俺が一度戻ってみるしかなさそうだった。
 さらに、みんなの話を聞くと、俺は落ちてきたビルの中に居た人も同時に救ったらしい。どうやら今までは平面的に使用されていた能力が空間に拡張されたようだ。道中みんなから感謝された。きっとあそこ周辺にいた人は全員救えたようだ。
 街に着いた。初めて来た地球じゃない世界の様子にみんなある程度の興味関心を持っているようだった。さっきまで怒っていた人もなんだか高揚を感じ取れる。
 この街、というかこの世界に宿泊施設はない。そもそも旅人という感じの人が極端に少ないと聞いた。それなので、王室の中にある家来たちの生活空間に案内される。
 ウェンティによって集められた家来たちも別の世界の話に興味津々なようで、地球人とこの世界の人での交流がはじまった。
 俺と大輝、そしてウェンティがみんなの前に出る。一応改めて今の状況などを説明する。
ここに来る前、各々が各々の能力を手に入れたことで不安に思う人も居たのだが、それを大輝が「せっかくなら楽しもうぜ‼」と言い、なんにんかが「そうだな!」「おー‼」など賛同を表したことで一体感が生まれた。もちろん中にはその空気に馴染めない人も居るだろうが、どうせ地球でこの能力たちは使えない。というか使ったらどうなるかわからない。一応その説明も俺たちでしておいた。なので、今せっかく隣の世界にいるのなら使いまくろう!と。まあこれが合っているのかはわからないけど。
これにはもう一つの意図があった。
能力を手に入れたとはいえある程度使いこなせなければ静心のようにやられてしまうこともある。この前の大輝の修行で分かったようにある程度使い慣れることでそれを軽減させられるようなので、みんなには能力を思う存分使ってもらい異にしたのだ。
 少しすれば一団の中の何人かは意気投合もしたみたいでお互いの能力について話したりなんだりと楽しそうであった。結果オーライ? 
 
 そしてとりあえず俺が一度地球に戻ることに。だが、死んでしまっては困るので、ウェンティに防御魔法を一応付与してもらう。かけてもらったのは一度だけ受けた衝撃を跳ね返すというもの。これなら仮に瓦礫に埋まっても平気なはずだ。
多分地球に戻っても有効だろうがそれでも不安はぬぐえない。
 考えうるパターンは3つ。
 一つは平面座標、緯度経度が固定で倒壊した瓦礫の上に出るパターン。二つ目は偶然瓦礫に隙間が出来ていてそこに入るパターン。そして三つめは場所も高さも固定で向こうに行った瞬間に瓦礫に潰されるもしくは瓦礫の中に出てくる。これのどれかだ。
 最後のパターンになればウェンティの魔法が発動することを祈るしかない。
 発動しなければ、俺もここにいる地球人の人々も終わりだ。
 まあ、もう深いことは考えても意味はないのでとりあえず行く。
 「アカギ、気を付けてね…‼」
 「赤城、おまえと出会えてよかったぞ…‼」
 「ウェンティはありがとう、大輝は…帰ってきたら殴らせろ。」
 「お前がフラグ立てんなっての!」
 「わかっとるわ!じゃあな!」
 そう言うと俺はその場で能力を使う。
 一か八かだが、なんだか少し高揚している自分がいる。
 みんなが俺を見ている。
 自然と口角が上がるのを感じつつ、右足を思いっきり踏み込んだ。
 グワン!
 
 気が付くと俺は、瓦礫の上に居た。
 とりあえず生きている。よかった。
どうやら仮設1が立証されたということだろう。これなら安全に全員を地球に戻すことが出来そうだ。良かった。と思ったが、俺はふと周りを見る。
 俺の周り、視界の範囲にいる警察、消防、作業員の大勢が俺の方を見て驚いていた。上空には報道関係と思われるヘリコプターもいる。
 冷静になれば瓦礫の上にいきなり少年が現れたのだ。しかも、多分能力を使ったから光を伴って。これは、やっちまった。
 急いで俺はもう一度能力を使って隣の世界に戻る。
 しかし、出てくるのは例の草原なので、そこから再び急いで城に戻らなければならない。
 地球には安全に戻れそうだが、これはまた別の問題が発生しそうだ!
 あー!もう!!!
 疲れるなあ!!
 
 城内に戻ると歓喜の声が上がった。
 「おお!赤城!」「アカギ!無事でよかった!」という二人の声の他にも地球への帰還を望む人たちからの賞賛も響いた。
 そうか、まずはこれだよな。正直それどころじゃなくて忘れていた。
 みんなに事情を話す。
 まずはめちゃくちゃ疲れていること。
 あの移動方法はもっとなにかないか今度考えよう。
 そして、上手く瓦礫の上に出ることはできたが、周辺は捜索やら事故処理、報道関係の人間で埋め尽くされていて、今出ていくとそれはそれで別の問題が発生しそうだということを伝えた。
 ウェンティ含む王室の人たちは報道という概念がない、というかテレビが無いのでそこは疑問に思ったようだが、人命救助だというと伝わった。
 そしてこれに伴ってすぐには帰ることが出来ないだろうということもその場にいる全員に伝えた。
 これには当然賛否が割れた。今すぐに返して欲しいと願う人もいるし、それこそ俺たちが初めに憂慮した能力者だということがバレた後のことを考えている人も居た。今回は報道も居たので尚更だろう。
 王室の人は歴史ある旅館のように「ゆっくりしていきなよ~」といった感じだったのでありがたい。
 話し合った結果、ひとまずは休むことになった。
 こちらの世界はもうすぐ日が昇るという頃。なので地球はもうすぐ夕方だ。
 この日が沈むタイミングで向こうに戻れば顔などの問題は平気と考えられた。そして、戻った後は各々の能力を使い速攻で散らばり、離れてから落ち着いてそれぞれの生活に戻ることになった。
 そして、もう一つ憂慮していたみんなが地球に戻った後のことなのだが、なんとウェンティは大輝の魔力コントロールの成功を見て研究をしたらしく、新しい魔法を完成させていた。
それは俺たちの生命力と魔力を安定的に結び付け、変換できる方法と魔法だ。これによってここにいる人たちは多分地球に戻っても平気だということだった。
つまり、修行せずとも魔力に体が蝕まれることが無くなるということだ。
 
 そして、しばらくゆったりと過ごし、日が昇った。この間にウェンティがみんなに魔法をかけて回っていた。これでここにいる地球のみんなが静心のようになることはないだろう。
 
日が昇ったということは向こうでは日が沈み切ったはずだ。つまり、出発の時間。
 全員がエントランスの広場に集まる。
 一応全員いるか人数を確認する。すると。
 「あれ…?一人いない…?」
 「え、マジで?」
 みんながざわつく。数え間違いだったのか?不明だ。 
 どうしようかと思っていると何人かからせかされたので、とりあえずウェンティに頼んでおく。
 「ウェンティ、こっちで地球の人見つけたら保護しておいて!」
 「うん!わかったわ!気を付けてね、アカギ」
 「おう、また遊びに来るよ」
 「うん、待ってる」
 そして俺は王室の人たちに遠ざかるように言い、戻る人たちはもっと近寄るように言った。
 「みなさん、くれぐれも目立つことはしないように!そして、戻ったら速攻で散らばってください!」
 みんなが頷いた。
 作戦開始だ。
 こっちに来た時の感じで能力の使用範囲をイメージする。今度は球状に。
範囲は並んでいるみんなをちょうど囲むように。
 そして、俺の右脚が水色と赤色に光り出す。
 「いくぞ!」
俺は強く右足を踏み込んだ。
グワン!
 
 俺たちは地球に戻ってこれた。
 まだ周りで作業をしている人たちがいる。しかし、もう気にしていられない。
 全員が瓦礫の上に出れたのかは確認できないが、とりあえず「じゃあ!」という俺の掛け声とともに全員が四方八方に、各々の能力で散らばる。
 俺と大輝は同じ方向に。このまま少し離れたビルの間の暗いところまで飛んでいくことに。振り返ると綺麗な色の光がたくさん散らばっていった。
 こりゃ、大変なことになりそうだ。
 そう思ったものの、なぜか口角が上がる。それぐらい綺麗な光景だった。そして、楽しそうに思えた。
 
 俺と大輝は話していた通りに適当なビルの間に着陸する。
 「ふう、疲れた。」
 「いやー、本当に赤城はヒーローだよ」
 「主人公っぽい?」
 「ああ、主人公っぽい。」
 「能力はお前の方が主人公向きだけどな!」
 「俺たちの漫画描くか?」
 「絵、下手じゃん。」
 こんな感じでひとしきり安堵と疲労でその場にへたり込んで笑い合った。
 多分、俺たちは世界を捻じ曲げた。
 退屈だった日常がここ最近は刺激的すぎる。まあ、能力はそんな頻繁に使うわけではないので俺たちは普通の高校生だ。
 ただ、他の人とは違う、秘密を持っている感じがとても心地よかった。
 
 家に帰ると家族がなにやら盛り上がって俺にも「ねえ、これ見た!?」と言って来た。
 みんなテレビを見ているので俺もその画面を見る。 
 ここで俺は今日、地球で起きたことを知る。
 不可解なビルの倒壊事故が起きたのだ。それも近くの街で。そりゃ騒ぐわな。と思いつつも、俺は別のことで少し焦った。それは、その報道、拡散のされ方であった。
 テレビやネットのいたるところで「死傷者ゼロ!?」「消えた人々‼」「謎の青い光」などなど見出しが立っていた。
 どうやら、今回のビルの倒壊はそもそも原因からして不可解らしかった。
 謎の光とデカい音が響いたかと思うと突如としてビルに亀裂が入り、人々が歩く道路へ落ちてきた。大勢が巻き込まれた‼と各組織が捜索をするものの、だれ一人見つからない。そして、近くの防犯カメラにはビルが落ちる直前に謎の青い光が辺りを照らし…。
 確かに事情を知らなければ不可解千万。
 さらには「突如現れ、消えた人影‼」なんというのもあり、「ああ、俺か」と思った。
 直接見ていたという人の証言。煽る報道。
 赤と青の光を残して消えた謎の人影。
 マズいと思った。
 そもそもきっかけとなった光。
 まるで俺が初めて向こうに飛ばされたときのようだ。 
 きっとまたなにかあったのだろう。
 そして、インターネットでは報道よりも何倍も盛り上がっていた。
きっとその後はは警察が捜査を打ち切り、ビルの残骸の撤収が終わるだろう。ただ、インターネットではある程度の期間は盛り上がりを見せるはずだ。
 まあ俺の正体がバレてないなら平気だろうが、落ち着くまでしばらくは能力を使うのはやめておこうと思った。
 
 週明けの学校にて。昼休みに俺と大輝は静心のいる北棟へ。
 「おーい、静心、来たぞー」
 「おーい。」
 「あ、二人とも、聞きたいことがある」
 「ああ、どうせあれだろ?」
 「ビルの倒壊。」
 「そう、それ。あれ、救ったのって赤城だよね…?」
 「ご名答!」
 「そして俺たちと同じような能力者がたくさん生まれましたとさ!」
 「やっぱ…?マズくない?」
 「まあ、命は救えたし…仕方なかったかな、と」
 「一応俺たちから能力者だとバレると絶対ややこしいからあんま能力使うなよーって言っといた。」
 「うーん、それならいいのかな…?」
 「まあ、俺たちも全部信用してないから多分もう世界は変わるぞ」
 「だな。ネットの考察すっげえし。」
 「こわいなあ…。」
 「そうだ、あと!静心に朗報!」
 「あ、そうだ!」
 「え、なに??」
 「ウェンティが魔力コントロ―ルの魔法を発明したんだ!」
 「俺たちが救った人はみんなそれで平気らしい!」
 「え、やった!これで元に戻れる!」
 「長い間ごめんな、でもどっちにしろ体をどうにかしないと…。」
 「そうだよな…。」
 「いやいや、僕の身体が弱いからだから仕方ないよ。それで、僕からももう一つ。」
 「お、なになに?」
 「朗報か?」
 「うん、僕も能力であれこれ試して、多分レベルアップ?したみたい!」
 「大輝と同じ発想だ。」
 「お!すげえじゃん!」
 「うん。それでね、物理的に物に干渉できるようになったから、僕自身で僕の身体を運べるようになったんだ!」
 「お!ということは」
 「病院の外に運べる!」
 「そう!夜とかなら隣の世界に持っていけるかも!」
 そんなことを話していると後ろから叫ばれる。
 「あ‼こんなところにいた‼」
 声の主は一発でわかった。入江だ。
 振り返って「あ、彼女」「お、朱里!」というが、
 「なにか隠してるでしょ!?」
 と詰め寄られる。
 あー、マズいことになったパート2。
 どうやって誤魔化そうかな…。
 
 赤城たちがそんなことをしているその頃の隣の世界にて。
 「本当にここは地球じゃないんだな…。物語の世界に迷ってしまったのか…。」
 一人の男が隣の世界の森を彷徨っていた。
 「なんか変な力も手に入れたし、すごいな本当に。」
 彼は赤城が地球に戻っている間に一人城から離れ、辺りを散策していた。
 「せっかくこんなところに来たんだからたっぷりと見物させてもらうよ。次の作品に生かせるかもしれない…。」
 その男、小説家の黒鳥くろとりはじめという。
 「そこの地球人。」
 突如として森の中から声が聞こえる。
 「俺か?」
 「ああ、そうだ。お前は素質がある。力が欲しくないか?」
 「本当にRPGみたいだな。でも俺はもうさっき力を手に入れたぞ?」 
 「はあ、とにかく、お前を私のところに招待する。」
 「は?」
 その声のあと、突如として黒鳥の身体が光り始める。
 黒鳥が気が付くと、目の前には人の形をした光の塊が、居た。
 「やあ、創造主君。」
 
 

ぐんぐんどんどん成長していつか誰かに届く小説を書きたいです・・・! そのために頑張ります!