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食べ物がでてくる話

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お腹が空いている人も空いていない人も読んでください。
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#エッセイ部門

健康なお肉

健康なお肉

わたしの父は獣医さんである。
と言っても、今では実家で腰をさすっているただの爺だ。もうしばらく会っていない。

父はよく、食卓で本日の食材紹介をしてくれた。

「このお肉は佐藤さんとこのやから美味しいぞ〜」

「この卵は嶋さんとこのやから新鮮や、ほら黄身の色がちゃうやろ」

わたしは何でも食べる子どもだったので、とりあえずふぉんふぉんと相槌を打って、目線はご飯から外さなかった。

「お前は俺のお陰

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「あれが地下で寿司を売る女ね」

「あれが地下で寿司を売る女ね」

大学時代、デパ地下の寿司屋で一年半ほどアルバイトをしていた。

デパートのアルバイトというのは、働き始めるまでに様々な試験がある。使える商品券と使えない商品券、株主優待にポイントカードの併用、クレジットカード決済に一部ポイントでの支払い、それら幾通りものパターンを覚える必要があり、三度ほど試験もあった。あとは申し訳程度に言葉遣いやお辞儀の訓練もあった。
そして何より、デパートは女の園でもあった。従

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サーモンと私の進化論

サーモンと私の進化論

一時期私は狂った様にサーモンばかり食べていた。

サーモンはどうしてこんなに美味しいのだろう。
特にお寿司におけるサーモンは最高だ。
黄味がかったオレンジ色に光刺すあの艶。
柔らか過ぎず、それでいて頼りない訳ではない、あの独特の歯通り。分厚いと尚良い。
声高らかにサーモンを注文し、濃いオレンジ色のカサついた鮭を出された日には、この世の終わりといった気分になる。
鮭じゃねえ!!!サーモンを食わせろ!

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