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『自転車免許証』のお話

自身が通っていた小学校には、おそらく全国的にも珍しい「自転車免許証交付制度」があった。

道路標識の知識や運転技術を学校独自に判定するもので、小学3年生以降の毎1学期に運動場で行われていた。

恐らくその事情はこうである。

小学校から5キロほど離れた場所に同校の分校があった。

かつてはその分校だけで卒業まで進級させていたらしいが、児童数が減り、いつの時点からか、小学校3年生から本校通学となった。

その際の通学の「足」として、自転車通学を許可したらしい。

しかし、全児童に対する交通安全教育は不可欠ということで、全校児童を対象とした免許制を導入した。

1学期になると、運動場に自動車教習所さながらのコースが出現する。

それらは石灰とライン引きで記された先生お手製によるものだが、交差点や一時停止場所、クランクやS字カーブなど、なかなか本格的なものだった。

ほどなく、学校への自転車の持ち込みが許可され、どこかの授業時間を使って、右手を使った方向指示の方法や、左右確認の際の声出し(右良し、左良し)などを習い、あとは休み時間などにひたすら練習する。

そして試験日当日。

各要所に教師が立ち、減点方式で採点していく。

安全確認を忘れてしまったり、S字でフラフラして万が一足をついても減点である。

そして集計の結果、合否が言い渡される。

仮に不合格になってもその日のうちに追試験が行われ、全児童が免許証を取得するのだが。

試験終了後、紙製の自動車免許証が交付され、運転時には携帯が課される。

大抵はヘルメットの内側の脳天あたりに挟み込むのがセオリー。

たまに、携帯を忘れ、先生に道でバッタリ会おうものなら、免許不携帯で注意されやしないかとヒヤヒヤしたものだ。

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