愛月ひかるさんの退団発表によせて(ファン歴3ヶ月半のヅカオタの決意表明のようなもの)

 こんな冗談のようなタイトル、やっぱり信じられないな。夢か現か、今年4月の星組の『ロミオとジュリエット』をきっかけにどうしようもなく心惹かれて浮かれたり、好きすぎてしんどいという新たな感情の扉が開いたり、とにかくこんなにふわふわしていた気持ちに、ついに決着をつける時が来たようです。宝塚歌劇のことは恐らく一生好きだけど、愛さんのいない歌劇団なんて全く想像できないな… これから待ち受ける喪失感はどれほどのものだろう。少しでも想像して辛くなってしまうほど、ふわふわしていたはずの気持ちが、いつのまにか心の深いところまで浸透していたようです。
 寂しい、悔しい、何が当てはまるのかなと昨日から考えているけれど、とにかく惜しいです。これから益々輝かれる生徒さんだと思っていたので。人知れず色んな思いを背負って、舞台に立たれていたのかな。それがいつからだったのかは分からないし、私を沼に引き摺り込んでくださった時点で既にそうだったかもしれない。そんなことを微塵も感じさせず、宝塚を愛する気持ちと共に、男役の姿を通して夢を見せてくれた。恋をさせてくれた。こんなに高いプロ意識をここでも実感するなんて、益々惚れてしまうよ。

 8月3日のことを忘れないために書きます。現実から目を逸らさないために。そして、数多の宝塚ファンそれぞれが同じ気持ちを持っているなんてありえないこの界隈で、自分のスタンスを示しておくために。

 もう特定の誰かのファンになることはないかな、歌劇団の生徒全員を平等に愛そう。そう思いながら各組を観劇する中で、ある日突然訪れた「まて…あの光は…そこにいるのは愛月ひかるさん…?」という、どう扱ったら良いかわからないこの巨大感情。重すぎる恋煩いにくらくらしつつ、再び舞い戻ったすみれの園で薔薇の花束を抱えて迎えにきてくださったのが、愛月ひかるさんでした。(いやこの表現照れちゃうでしょ…// 宝塚界隈でよく見るこの表現、使うかどうか最後まで迷ったけどせっかくなので…(崩)!今更ファーストフォトブックを読み始めたのですが、まさにこれなんです(笑)。薔薇の花束を手にする愛さん。肩に担いでる表紙も、右手で持って佇む全身が写る裏表紙も、とにかく最高にかっこいいです。すごく絵になる人。)
 あんなに話題になった「愛ちゃんの死」じゃなくて、昨日は「愛ちゃん」としてTwitter上の日本のトレンドに入っているのを見ました。「死」がなくたってトレンド入りしちゃう愛さんはさすがだなと誇らしくなったり、そんなに嘆かれているのは色んな方に愛されてきた証拠だなと実感したり。でもそれだけじゃない、一人の女性が決断した人生をかけた進退までもが、エンタメの一つになって消費されてしまう事実を突きつけられたわけでもあって。夢を売る仕事って、それだけの覚悟が必要なんだな…と改めて思わされる。

 もちろん純粋に「何で今なの?」と疑問に思う気持ちも拭えません。公式発表が出て、この浮かれたお祭り期間の終わりを告げられたからと言って、素直に受け入れられるほど良い子ではありません。もっと観たかったな、追いかけたかったな。
 出逢ったのが私は遅すぎました。正確にいうと、ずっと前から公演でお姿は拝見していたものの、心臓を射抜かれたタイミングが遅かった。何をするにもスーパー遅くて(ひいひい言いながら円盤1本見るのにものすごい時間をかけたりしてて…なんかもうアホなのかな…)、それぞれの生徒が持つ限られた時間のことから目を背けていたんだと思います。
 それでも今、「間に合って良かった」という気持ちが何よりも強いです。ロミジュリ期間のあの熱量と勢いに身を任せ、臆せずその魅力に飛び込み、心ゆくまで『マノン』に通えたこと。運命だなって浮かれていたこと。愛さんを愛する皆さんと少しずつTwitterでお話できたこと。何をするにもすごく楽しかった。

 次の公演で誰も退団しないなんてありえないと思ってたので、集合日が来れば色んな苦しい感情が沸くだろうなと思い、その日の前に滑り込めますように…と、本音を言うと半分勢いのような気持ちで『マノン』の感想を書きました。勿論この時は何も知りませんでした。何のフラグにも気づかなかった、愚かなファンなのかもしれません。だから心の準備なんてできるはずなかった。


   そして昨日のこと。集合日当日だとも知らず、公式を見る前にお知らせをいただいて、ご卒業を知り、いやいや見間違いでしょう、嘘でしょうと。もう一回確認したら本当で、信じられない気持ちで呆然としていたらディナーショー開催が発表され、公演日程を見に行ったら「サヨナラショーを実施します」と書いてあって。
 こんな時にもかかわらず、(まだチケットもないのに)千秋楽やディナーショーの日は休みを死守しようと今から根回しを始めたり、遠征を何回増やそうか考え始めた自分に驚いた。とにかく機会を逃さないように。こんな時でも、いやこんな時だからこそ、ヅカオタの理性はしっかり働くのですごいよね。

   私個人の話をすると、「恋」なのか何なのかわからないこのふわっとした気持ちに「尊敬」の気持ちが加わり「愛」になって、ようやくこれからもっと…!という、楽しくて仕方のない時期でした。こればっかりはどうしようもないことだと思うけど、どうして私はいつもタイミングが悪いんだろう、もう少しだけでも早く出逢えなかったのかな、と今までのヅカオタ歴を考えても嘆きたくなります。いつも遅い。好きになったら退団発表。もう誰のファンにもならない方が良いのかもしれない、と昨日はそれも考えてかなり沈みました。それでも、無理やりお気に入りの生徒を見つけるものでもなく、やはり然るべきタイミングで運命のように出逢うものだと信じていたいです。その気持ちは絶対に手放したくない。

   Twitterのフォロワーの皆さんやリアルな友人達、そして過去のnoteをご覧いただいた方がいらっしゃれば分かっていただけるかと思いますが、愛さんを追いかける前に頻繁に通っていたのは、2年前の月組です。

 誰かが退団発表をした時の、色んな人が憶測で好きなことを言い、勝手に当事者や関係者達を被害者として扱い、関係のない生徒までをも話題に出して各々が勝手に物語を作り、嘆き始めるこの流れが、心の底から苦手です。「報われて欲しい」という言葉も辛いです。「〜切り」は見つけたらブロックするかもしれません。2年前がどんな雰囲気だったかを今のタイムラインに持ち出すつもりもありません。だって別物だから。別人だから。2人が同じ状況、同じ気持ちで卒業するなんて絶対ありえない。今まで並べてお名前を上げたことはなかったけれど、美弥るりかさんと愛月ひかるさん、この2人それぞれに対して、全く別物の愛と尊敬の気持ちを抱いています。私の人生を彩ってくださった、唯一無二の大切な存在です。『Flame of Love』と『All for LOVE』。比べるつもりは全くありません。

 退団発表、サヨナラショー実施決定、ディナーショー開催決定、と色々な情報解禁を受け、この流れ知ってるぞ…と勿論思いました。そして、あの時は数日後に写真集発売が発表され、大劇場のサヨナラショーと主演公演がセットにされた円盤も出たな、ブロマイド付きで…とかね。(TCAの方角に向かって願いを込めて)
 過去に比べて「番手」の重要性が揺らいでいることは否定できないし、恐ろしいことだと思う。宝塚歌劇ってこれで良いのかな… 。生徒や宝塚ファンにとって目指すべき場所で、その先へと続くものだと思ってた。「異例のサヨナラショー実施」みたいに今回も書かれてたけど、「2番手退団」こそ異例だという認識は、令和の宝塚には馴染まないのかな。それでも一つだけ確かなことは「決断の真相は生徒本人にしかわからない」ということ。どういう経緯があったのか、本当のことは愛さんにしかわからない。今後スカステで退団番組が放送されるのかな。歌劇やGRAPHでサヨナラ特集も組まれるのかな。辛いけど、その中で語ってくださることを信じるしかない。

 ショックで納得できない気持ちは、正直なところしばらく拭えそうもありません。惜しむだけじゃなく、誰かのせいにしたら良いのでしょうか。愛さんがあんなに愛した歌劇団のことを罵るべきでしょうか。もっと生徒を大切にして欲しい、と言うべきでしょうか。でも、よく目にする「大切にして」って何なんだろう。どうやるんだろう。明確な基準すらない、運や縁に左右されることが大きい、厳しい競争の世界だって分かりきっているのにね。
    何が言いたいのかというと、劇団人事については、公式情報以外をソースに憶測で話をしたくありません。こんなにも厳しい世界で、これまで立派に歌劇団の生徒として大活躍されてきた愛さんへの敬意と、彼女に思いを寄せる私自分の心を守るためです。今後もこのアカウントでTwitterを続けるためにも、このタイミングで言わせていただきました。

 「誰かの目に映る“愛さんの退団“」を気にするよりも、もっと有益なことに時間を使うべきですよね。こんなに色々書いてしまったけど、実は昨日からタイムラインを追ってないので(ちらっと見えたものが私にとってアウトだったので、やめてしまいました)、ここで大好きな愛さんの話をします。
 今年の春に星組のロミジュリを観劇してから、見える景色が変わりました。毎日が彩りました。ときめいたり、感動したり、興奮したり、舞台の上の愛さんを追いかける中で、心が動く瞬間がすごく楽しかった。心惹かれる相手に感情の手綱を握られてる感じがたまらなかった。舞台の上では思いっきり“雄”なのに、時々垣間見える可愛い姿がたまらなくて、えっ、この色気、思いっきり男役だよね…?でもすごく可愛いし綺麗なのはどうして…って混乱する瞬間が気持ちよすぎた。可愛いのかっこいいのどっちなの。どっちもだよ。スカステの録画を引っ張り出して、下級生時代のぴよぴよした愛さんにきゅんきゅんした。かと思えば、5月に放送されてたドリタイを何度も見たり、KAATに沢山通ったり、研15の今の愛さんが表現される「究極の男役像」や「宝塚への愛」の虜になっていった。

 卒業後も活躍される方はとても多く、そのまま宝塚にいたら叶わなかった姿を拝見できることもある。それでも、現役生徒でいてくれる時間は特別で、すみれ色のヴェールに包まれた夢は期間限定のもの。魔法が解けたら二度とその時間は返ってこない。有限の時間の中で生徒生命を全うする姿こそ本当に美しいもの。これから益々輝きを纏っていくのだろうな… 想像するだけでもぞくぞくする。そして、サヨナラショーにディナーショー、退団に向けてこんなに何度も機会を用意されてるってことは、今からだってもっと好きになったって良い、夢中になって良いよ、どんと来い、ってことだよね。昨日からずっと、『不滅の棘』の楽曲の中の「スターは必ず蘇る」というフレーズが脳内ループしています。

 愛月ひかるさんの退団発表を受けて私が残したかったことは、これで全てです。気持ちを綴るのはこのくらいにして、お手紙を書きたい。その後は、また楽しい話ができたら良いな。まだ追えてない過去の公演が沢山ある。家にある数年分のGRAPHや歌劇を片っ端から確認したい。愛さんのことをまだ全然知らない。時間がいくらあっても足りない。
 心を決めた時の自分の勢いと行動力は褒めたいけど、それとは裏腹に、実はファン歴が浅すぎることをとても負い目に感じています。でも間に合ったのだから、遠慮してる場合じゃないよね。そう改めて気合を入れて、もう一度飛び込んできます。

 今ならようやく言える気がします。覚悟がないと言えない、重い言葉だってさすがに分かっているので。2021年夏、宝塚歌劇団における私の“ご贔屓”は星組の愛月ひかるさんです。綺麗事でも何でもなく、今の星組のメンバーの中で輝く愛さんに出会えたことこそ、私の財産となりました。星組をまるっと愛しています。
 退団者7名、そして星組生の皆さん、ファンの皆さん。全員揃って完走できますように。最後まで愛に溢れた期間となりますように。


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