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週記12月(その4)

自分が29歳のころのことを思い出していた。

転職したはいいが、採用してくれた上司がいきなり異動し、新しい上司とはまったくソリが合わなかった。暇で暇で暇で暇で暇で、このままだと朽ち果ててしまいそうだと通信教育で勉強をはじめた。まずは通関士、次に簿記、そのあとに手を出したのがフェローアカデミーの通信添削だった。通関士は貿易実務の仕事を続けないとあまり意味がなさそうで、途中でやめた。簿記は今、確定申告のときにめちゃくちゃ役に立っている。ときおり会計分野の翻訳仕事も請けているので、簿記は本当にやってて良かった。

29歳のわたしはまだまだ精神的に幼く、舌禍で人様にご迷惑ばかりおかけしていた。人として成長途上にあるのに生物学的年齢は適齢期とやらに達していて、職場でも家でも変な線引きをされていた。

職場では、25歳以上の女性はもはや女性ではないと公言するバカ。

実家では、早く結婚しろ、30代の女は価値が半減するとディスる父。

手に職を付けて、そんなノイズと戦おうとしていた。虚勢を張って、上へ、上へと勝ち上がっていくことばかり考えていた。職場のバカや、ソリの合わない上司と喧嘩して、父の強制で、したくもない見合いをさせられて。

翻訳の勉強は、そんなわたしにとっての救いだった。フェローアカデミーの会員誌『アメリア』がアメリアという名前になる前の編集長さんとやり取りを始めたのもそのころ。出版翻訳と実務翻訳のどちらに進もうか悩んでいたとき、相談に乗っていただいた。

ひとまず実務翻訳の勉強をする。力がついたところで出版翻訳を学ぶ――と決めたのが30歳。5年で結果を出すと目標を立て、公約どおり5年で独立し、会社をやめ、フリーランスになった。

29歳は、吹っ切れる直前の暗黒の時代だった。

なんでこんなことを書いているかというと、現在29歳の、新進気鋭の脚本家さんがトーク番組でちょっと残念な発言をしたのを見たから。彼女はすばらしい才能の持ち主で、これからどんどんいいものを書いてもらいたい。でも、29歳ってまだ頭でっかちだったり、考えがまとまっていなかったりもする。さて自分は何をやってたかと記憶を巻き戻してみたら、結構転機を迎えていたのだね。たまにこうやって自分を振り返るのはいいことかもしれない。

29歳は終わりじゃない、まだまだこれからの年齢なんだと再認識した週。


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