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オンラインイベントと身体性

コロナで外出があまりできなくなってから、オンラインのイベントに参加する機会が増えた。いろんな人がZoomやInstagramやYouTubeで発信し始めているので、結構色々楽しめるようになってきた感じではある。その一方でオンラインでの体験と実際にその場で体験することの違いも考えてみる機会になった。今回はその中でも特に印象に残る経験であったZoom演劇鑑賞とZoom座禅会参加について触れてみたい。

Zoom演劇:『未開の劇場ーオンライン版』(上記写真)

以前劇場で観たこともある、『未開の劇場』をオンラインでやるというので楽しみにしていた。その一方、演劇というと劇場というあの独特の張りつめた空気感のなかで体験することがとても重要と思っていたので、どこまで面白いものができるのかという点と、オンラインで観ているとどうしても観る側の緊張感が続かないので、そこに何か工夫するのかという点を気にしながら観ていた。

結論から言うと、とても面白い体験だった。何故かというと、もうすでにZoomでの会議なり、飲み会なりを体験していることもあり、Zoomで人の話を聞くということがリアルな体験として感じられること、その上、13人の出演者の台詞の間合いとかが絶妙だったことにある。緊張感という点では、実際のZoom会議でもあるように、劇中にブレイクを入れ、参加している俳優を限定することで13人で話しているより、ゆったり聴けるという感じをうまく作っているなと思った。初日のゲネプロの際には若干長いなと思って、確かに途中で気が散ってしまうことがあったのだが、本番初日にはすっかり修正されていてびっくりした。

劇場であってもずっと座って観劇するという点についてはオンライン演劇であっても変わらないように思うが、台詞を言う役者の位置によっては、観ている側も顔や視線を動かしたりするので全く体を動かさないオンライン演劇とは違う体験になるのではと思うのだが、Zoomで会議をしているという設定にしたことによってそこが回避され、観客もZoom会議の見ている1人という感じになれたのが良かったと思う。Zoom会議の良いところ、悪いところをメタ的に観察しているような感じも面白かった。逆に言えば、こういう特殊な設定でなければなかなか面白いオンライン演劇ができるのだろうかということは疑問としてはある。

Zoom座禅会

先日、Zoom座禅会なるものに参加してみた。曹洞宗の僧侶の方が画面の向こうで座禅の指導をして、それに対して参加者が個々に座禅をし、その後、感想をコメントして、僧侶の方が答えるという感じのイベントだった。文字で書くとなんてことのないイベントのように聞こえるが、意外に楽しかった。

理由を考えてみるに、座禅にあまり慣れていないと1人でやるのは難しいがZoom越しとは言え、そこに明らかに何人もが同時に座禅していることがわかると何故かみんなでやっているという空気感が伝わってきて、明らかに1人でやるより集中できた気がする。それでもZoomでずっと座禅してればいいというわけでもなさそうだ。つまり話をずっと聞いているというのでなく、その間に座禅という身体を動かすという時間が入っていることによって全体としてのZoomイベントが充実したものになっていたと思う。

オンラインイベントの可能性

今後もしばらくはオフラインでのイベントが厳しい状況の中で、オンラインイベントはどんどん増えていくだろう。そうなるとオンラインの前にいる観客を単なる観て聴いてるだけの人から、身体の動きを伴って如何に巻き込んでいくか(参加している感を出すか)が今後のオンラインイベントの差別化になるように思う。オフラインのイベントに近づけるというのではなく、オンラインならではの楽しみ方を如何に提供できるかということになる。


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