あるところに、白い布がありました。 天使の羽のように白く、清潔で美しい白い布をみんなが欲しがりましたが、 白い布は自分が汚されることを嫌いました。 ある日、隣町の王女様が白い布を拾い上げ、こう言いました。 「これは、これは。なんて綺麗な布なのかしら。ちょうどいいサイズに、ちょうどいいさわり心地。決めたわ。この白い布は私のハンカチにしましょう」 それを聞いた白い布はピッと王女様の人差し指を噛みました。 「痛いっ!」 とっても可愛らしいドレスをまとった王女様のことは気に入ったけ
ノーンさんの家には、かかしがいました。 着られなくなった服や汚れた布で作られたかかしは、ひょろんとしていていつもうつむいていました。 かかしは立派なりんご畑で朝も昼も夜も過ごしていましたが、うつむいているかかしは、落ちて腐ったりんごしか目にすることができません。 かかしの頭上には空が果てしなく、模様を描きながら進んでいるというのに。 背筋を正してしゃんとしたい、とかかしは願っていましたがくたくたの布で作られたかかしはどうしたってうつむいてしまうのでした。 ふと、
幸せ。 あなたが笑っていると、幸せ。 あなたが喜んでくれるなら私、なんでもするわ。 コメディアンになって、 涙がでるほど笑顔にさせてあげる。 ケーキ屋さんになって、 あなたのほっぺたが落ちるようなおいしいケーキを作ってあげる。 魔法使いになって、 ゲームも、人形も、本も あなたが欲しいもの全部あげるわ。 お花になって、あなたのために摘まれにゆくね。 寂しい夜、 そっと寄り添う毛布になって あなたの涙をふきとってあげる。 あなたが苦しいと私も苦しい。 あなたが痛い