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#26速球を投げるために必要なトレーニング要素

こんにちは!

先日、このようなtweetをしました。

今回はこの内容について深掘りして話をします。

❶瞬発力の向上

投球フォームは足を上げるところから、フォロースルーまで約1.7秒…2秒弱という短い時間で完了する動作です。そのうち足を上げた後、いわゆる並進運動で足を着くまでは平均して0.82秒。

皆さんもご存知の通り、投球において最も出力に貢献するのは下肢の筋力です。しかし、スクワットでどんな高重量を持ち上げられても、出力するでの速度が遅く投球に活かせないのであれば意味がありません。これを「力の立ち上がり速度」…いわゆるRFDと呼びます。

簡単に説明するとRFDとはどれだけ早く力を発揮できるかを表す概念です。下の図をご覧ください。

(画像:筑波大学 陸上競技研究室のページから引用)
縦の軸が力、横の時間が時間の経過を表しています。仮にこのAの選手がスクワット180kgを持ち上げ、Bの選手は120kgを持ち上げたとしましょう。
Bの選手はAの選手に比べて、最大筋力は劣っているかもしれませんがRFD(力の立ちあがる速度)は優れています。

このRFDを高めるトレーニングが所謂、「瞬発的なトレーニング」です。具体的に言えば、プライオメトリクスと呼ばれるジャンプ系の内容であったり、メディシンボールを投げるようなトレーニング…全身の反動を使った内容が多いのが特徴です。
プライオメトリクストレーニングはこちらの動画で紹介しています⬇︎


❷柔軟性の維持および向上

これには「力積」が大きく関わってきます。
力積とは簡易的には「物を動かすエネルギーは力×時間の値が大きいほど増加する」という意味です。立ち幅跳びより走り幅跳びの方が飛べるという選手はいないと思います。

助走をつけてあげた方がよりエネルギーが大きくなるのは考えてみれば当たり前の話です。身長が高い、手足が長い選手の方がより球速が高い傾向がありますがそこにも力積は大きく関わっています。

また、良いフォームとされる特徴も力積が大きくなるからと言える内容が多いです。
⬇︎詳しくはこちらの動画で話をしています

では、力積を上げるためにはどうするか。
身長や手足の長さは自力で変えることは難しいですが、可動域を大きくすることによってフォームにおける加速距離を稼ぐことは可能でしょう。

ある程度の柔軟性は全身必要でしょうが、投手の場合は特に胸椎の伸展可動域、股関節の外転可動域(開脚)、内旋可動域は意図的に上げておくべきです。いうまでもなく、柔軟性を向上させるにはストレッチがお勧めです。

また、柔軟性の維持と書いたのは疲労によって柔軟性が下がりやすい部分があるからです。具体的に言えば前腕の筋群、肩関節周囲筋群(特に棘下筋と小円筋)、および膝関節、股関節伸展筋群(大腿四頭筋、臀筋群)は固くなりやすいので積極的にケアをしておきましょう。

❸最大筋力、筋量を増加させる


さて、❶で瞬発的なトレーニングが大事という話をしましたが最大筋力と筋量も大事です。最大筋力はある程度、筋肉の太さと相関がありますし、そもそも除脂肪体重(筋肉量)が多いほど球速は速いというデータも出ています。

(野球を科学する 著者:笠原政志 p.55より)

現にプロ野球選手には体が大きい選手が多いですよね。山本由伸選手は岸孝之選手など細い選手もなかにはいますが、それは特例と考えます。

120kgを素早く挙げられる選手と同じくらいの素早さで180kgを挙げられるなら、それに越したことはありません。筋量も大事ですし、最大筋力はもっと大事にすべきです。トレーニングの原理原則を理解してがっつり筋トレにも取り組みましょう。

❹身体操作、固有需要感覚の向上


これにはパフォーマンスUPだけでなく、パフォーマンスの再現性の高さにも関わると考えています。ここでいう身体操作性とは「自身の体を思い通りに動かす能力」です。そういえばプロ野球界でも「パルクール」を実践している選手が増えています。

例えば、オリックスの山岡泰輔選手

パルクールとはトレーニングの1種で高島誠さんが野球界には普及させた印象を持っています。高島さんは「筋力」「身体操作性」「筋出力」「柔軟性」の4つが投球能力向上に必要と説いていますが、パルクールによってそれらが効率よく高められると考えているようです。

私はパルクールを推奨している訳ではありませんが、固有重要感覚(体のセンサー)を高め、身体操作性を上げる(思い通りに体を動かす能力)ことはパフォーマンスの向上、安定に直結すると考えています。

身体操作性については私自身、どうしたら上がるのか探り中ですがもちろん「パルクール」も有効なのだと思います。また、プロ野球選手のトレーニング指導をしている林泰祐トレーナーのセッションを先日受けてきたのですが、そのとき裸足のトレーニングを推奨されました。掌と足の裏はセンサーが敏感な部分というのがその理由でした。他、私が有効と思う方法としてはウォーターバッグを使ったトレーニングであったり、バランスディスクを使ったドリルであったり…

ただ、この分野に関してはまだ「こうすれば能力が上がります」という理論は確立しておらず、なんならどんな練習でもどんなトレーニングでも意識レベルを高く持てば並行してあげていける場合もあるでしょう。

❺投球フォームの悪癖を直すドリル実践


どんなに良い体を作っても、どんなに素晴らしい身体操作性を身につけても、結局は投球フォームの良し悪しが最も球速に直結します。

さて、これは経験則も含む持論ですが投球フォームは練習でプログラムを脳内に作って、実際に試合で投げるさいは無意識となります。何が言いたいかというと、いきなりいくつものフォームの課題をクリアすることは不可能ということです。

例えば、投球フォームの中にA.B.Cという課題があるとします。この場合、A.B.Cの課題全てに意識によってアプローチをかけるのではなく、そのなかで最も重要な内容に全意識を傾けて大袈裟に矯正するのが良いでしょう。

例えば、私の場合は投球フォームの課題として

1.足を上げた後の並進運動が短い(横の時間が短い)
2.肩関節最大外旋位のキープ時間が短い(肘が伸びるのが早い)
3.腰の回転が不十分になりやすい(股関節内旋動作が鈍い)

これら3つがあげられます。
あるあるなのはもっと「横の時間を長くして」「腕は曲げたままの意識で」「腰は回しきろう」と3つの内容を意識しようとしがちですが、多くの場合この矯正意識は上手くいきません。

なぜなら、❶の項でも述べたとおり投球動作は2秒弱の高速運動であり、複数の動作の課題を一度に出来るほど多くの選手は優れていないからです。

フォームを意識する際の意識は、基本的に解決する悪癖を「1個に絞って」極端に行うことが鉄則です。そして、課題を絞ったらそれを解決するためのドリルを設定しガンガン回数を重ねて、体に覚え込ましょう。

ちなみにフォーム矯正の順序ですがシャドー➡︎ネットスロー(軽め)➡︎ネットスロー(強め)➡︎キャッチボール➡︎ブルペン投球➡︎打撃投手➡︎試合登板というように段階を踏みましょう。

どの課題を意識するかにも優先順位があります。例えば、今回例に上げた私の課題については「1.足を上げた後の並進運動が短い(横の時間が短い)」にだけアプローチをかけています。なぜなら、2と3についても1が解決して、並進運動時の推進力が上がれば解決する可能性があるからです。

投球フォームの課題が複数あるように見える場合も、多くの場合それらの問題は関連があります。ただ、そこには分析力、知識、経験も必要と思いますので「自分じゃ分からない!」という方は私に直接相談いただければと思います。


まとめ
❶瞬発力の向上➡︎RFDの向上、プライオ系のトレーニングがお勧め
❷柔軟性の維持および向上
➡︎力積の理解、ストレッチ、ケアが大事
❸最大筋力、筋量を増加させる
➡︎除脂肪体重と球速の相関、トレーニングの重要性
❹身体操作、固有需要感覚の向上
➡︎近年注目のパルクール、パフォーマンスUP&再現性
❺投球フォームの悪癖を直すドリル実践
➡︎フォームとは無意識のプログラム、絞って練習すべし


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では、また。

p.s. ITリーグの2020年の最多奪三振を祝した盾を頂きました!


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