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チームプレビュー:アルピーヌ

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目標はDAZN F1公式さんに「あのブログでこんなこと言ってました」って引用されること。

今回は明日新車発表を控えるアルピーヌについてプレビューしていきたいと思います!

■昨年までの流れ
2002年から2010年までワークスチームとして参戦したルノー。2005年と2006年にはフェルナンド・アロンソとともにワールドチャンピオンを獲得しました。その後チームをロータスに売却しましたが、2016年に同チームを買収し、再度ワークスチームとして参戦。復帰後は苦戦続きでしたが、昨年2020年は復帰後初を含む3度の表彰台を獲得。チームでの獲得ポイントも181と2016年以降で最高となる数値を記録しました。

そんな今年はルノーから傘下のブランドのアルピーヌに名前を変えての参戦。新型コロナウイルスの影響でルノー本体は大赤字のなかでも、アルピーヌは好調を維持しているために予算を捻出できたと言われています。

また、エースドライバーのダニエル・リカルドがマクラーレンに移籍してしまった一方で、かつて黄金時代を共に築いたフェルナンド・アロンソを呼び寄せました。

アルピーヌブランド1年目となる今年、昨年の勢いを持続することが出来るのかが注目です。

■アルピーヌでの新体制
やはり気になるのはアルピーヌになってチームの体制がどのように変わるのかです。基本的には昨年のスタッフ体制を踏襲しつつも、昨年までマネージングディレクターを務めていたシリル・アビテブールが離脱。同時に戦略および事業開発担当ディレクターを務めたローラン・ロッシがアルピーヌブランドの最高経営責任者CEOに就任することが今年の1月に発表されました。

また、MotoGPのチーム・スズキ・エクスターでチームマネージャーを務めたダビデ・ブリビオがアビテブールの代わりにレーシングディレクターになることも1月に発表されています。

チームの首脳陣が代わって上昇気流に乗っているといえば、マクラーレンが記憶に新しいですが、このアルピーヌ新チーム首脳陣が2022年の大幅なレギュレーション変更に向けてどのような取り組みを行なっていくのか見ものです。

さらに今後はエンジンの開発・製造・組み立てを一部メカクロームに委託することも発表されるなど、コスト削減に向けた取り組みも随所にみられています。

とはいえ、今年に関して言うと、変革期を前にして、基本的には昨年のマシンを踏襲したマシン開発が予想されます。中団グループのライバルのマクラーレンやアストンマーチンが攻めのマシン開発を行なっているなかで相対的に保守的なマシンになりそうな予感がしていて、これが吉と出るか凶と出るかは、正直やってみないとわからないところです。

ライバル2チームと比べると、より最初から2022年に目が向いている印象が強いので、今年は復帰のアロンソも含めて新チーム体制でのチームビルディングがメインとなってくる気がします。

■育成ドライバーたちの行方とセカンドチーム確保の可能性
現在アルピーヌで力を入れているのが育成ドライバーシステム。F1のひとつ下のカテゴリーのF2をみても、オスカー・ピアストリ、チョウ・グアンユー、クリスチャン・ルンガーの3名の所属ドライバーが参戦しています。

レッドブルがアルファタウリをセカンドチームとしてF1に新しく参戦する若手ドライバーにチャンスを与えているように、フェラーリもエンジン供給するアルファロメオやハースと同様の関係性を高めており、シートの1枠の決定権を持っていると言われています。

また、メルセデスもウィリアムズとの関係を強めており、エンジン供給に留まらず、メルセデスの育成ドライバーのラッセルがウィリアムズシートを確保していますが、2022年からはエンジンだけでなく、ギアボックスもメルセデス製のものを使用すると発表しています。

一方で2021年からはルノーエンジンを使用するチームはアルピーヌのみ(昨年まではマクラーレンもルノーエンジンでしたが、今年からメルセデスエンジンにスイッチ)。フェラーリが行なっているような下位チームに対して安価なエンジン供給の代わりに育成ドライバーにシートを付与する、ということが出来ない状況になっています。

もちろんアルピーヌ自体の成績があがらなければ、ワークスチーム自体が中団チームになるので若手ドライバーをデビューさせやすくなるのですが、それはチーム全体が望んでいないことです。やはり理想としてはアルピーヌが勝利を争えるワークスチームになるなかで、育成ドライバーをプレッシャーなくセカンドチームからデビューさせることです。

一部報道ではアルファロメオやウィリアムズなどの下位チームのセカンドチーム化を狙っていると言われていますが、個人的には前者のほうが現実的な気がします。というのも、メルセデスはこれから育成ドライバーへの投資に注力していくと代表のトト・ウォルフが明言しているなかで、育成ドライバーをF1デビューさせるセカンドチームが必要になります。そうなったときに、現在既に関係値を築き上げているウィリアムズはうってつけのチームになるはずです。

一方でアルファロメオはハースと比べてフェラーリからの扱いに不満を持っていると言われているため、こちらのほうがチャンスは高いのではと思います。いずれにせよ、せっかく力を入れて育成しているアカデミーのドライバーをF1デビューさせる場所を作ることは、アルピーヌにとって大きな課題と言えます。

■フェルナンド・アロンソ
1981年7月生まれ、スペイン出身の39歳。F1デビューは20年前の2001年ミナルディからで、2005年と2006年にはルノーで2年連続ワールドチャンピオンを獲得。その後、マクラーレン、ルノー、フェラーリ、マクラーレンと4チームを渡り歩き、2018年に一度F1を引退しますが、今回3年ぶりに復帰。

先月ロードバイクでのトレーニング中に車と接触する交通事故に遭い顎の骨を骨折。今回の新車発表会は欠席となります。開幕直前に行なわれる合同テストや開幕戦には間に合うと言われていますが、年齢的な問題からくる回復力の遅さも気になるところではあります。

アロンソは圧倒的な速さを持ちながらも、結局ワールドチャンピオンを獲得できたのはF1参戦初期の2回だけでした。もちろんマシンの純粋な速さが成績に大きな影響を及ぼすF1の世界なので、所属するチームの良し悪しで決まってくる部分も大きいのですが、アロンソはチームビルディングのためのコミュニケーション能力に大きな問題を抱えていると言われていました。

特にその傾向は一度目の引退前の最後4年間を過ごしたマクラーレン時代に顕著に現れていたと言われ、チームスタッフのモチベーション低下や開発の方向性に大きな問題を起こしたと言われています。

ただ、F1引退後に参戦したFIA世界耐久選手権でチームワークの重要性を改めて学んだと言われており、人間的な成長がどの程度今回の復帰に反映されるのかは見どころの一つです。

また、過去にF1でチャンピオンを獲って一度引退をしてから数年後に復帰したドライバーと言えば、ミハエル・シューマッハ、キミ・ライコネンの2人があがると思いますが、2人とも復帰後は苦戦していた印象です。ライコネンは復帰直後の2年間のロータスチームでは素晴らしい活躍を見せましたが、フェラーリ移籍以降はチームメイトのベッテルの影に隠れてしまいましたし、シューマッハにおいては復帰後の3年間、チームメイトのロズベルグに全く歯が立たない状況でした。

年齢や経歴的にはシューマッハの復帰後の近い形ですが、昨年12月に行なわれた若手ドライバーテストの成績を見ても個人的には対オコンでそこそこの健在っぷりを見せつけてくれるような気がします。

ただアロンソの場合は対チームメイトの速さよりも、チーム全体を強くしていくスキルで真価が問われていくと思います。複数年契約を結んでの復帰なので、今年はもちろん2022年のチーム全体の良いパッケージを作るための貢献が出来るかが注目です。

■エステバン・オコン
1996年9月生まれ、フランス出身の24歳。2015年にGP3で年間チャンピオンを獲得すると、マノーチームより2016年第13戦でF1デビュー。2017年から2年間は中堅チームのフォース・インディア(2018年途中からレーシングポイント)で堅実な走りを披露するも2019年はシート喪失して、育成プログラム時代に所属していたメルセデスのリザーブドライバーに。

昨年はメルセデスの育成を外れながらもマネジメントは引き続きメルセデスが行なうという特殊な契約下のなか、母国の大自動車メーカー率いるルノーF1チームより2年ぶりにF1に復帰しました。

第16戦のサヒールGPでは自身初となる2位表彰台を獲得しましたが、チームメイトのリカルドには予選、決勝成績ともに完敗してしまいました(決勝:リカルド119ポイント対オコン62ポイント、予選リカルド15勝対オコン2勝)

2年契約の最終年となる今年、オコンにとっては崖っぷち状況からの勝負の年です。新しいチームメイトとなるアロンソに対してどの程度の力を見せつけることが出来るのかで、彼の今後のF1人生は決まってくると思います。

やはり最低目標としてはアルピーヌ残留を勝ち取ることですが、育成ドライバーたちが多く待ち構えていたり、ガスリーのように現在中堅チーム所属で今年が契約最終年、2022年により上位のチームへステップアップを狙っているドライバーもいたりするなかで、来年に向けての競争はかなり激しくなってきます。

メルセデスF1代表のトト・ウォルフは2022年のメルセデスチームのドライバーシートはハミルトン、ボッタス、ラッセル、オコンの4人の争いと話していますが、現時点では序列が1番下なのは否めない印象です。

2018年ブラジルGPでのフェルスタッペンとの接触事故後の対応やカート時代から続くガスリーとのライバル関係からあまりメディアの印象が良くないオコンですが、ドライビングスタイルはかなりスムーズで車に負担をかけない走りが強みと言われています。一方でそれは限界まで攻めきれない弱さにもなっていて、実はアグレッシブな走りをするリカルドと対照的で、この辺りが昨年常にコンマ1-2差をつけられていた原因だと思います。

自らの限界を超える走りをしてF1残留を勝ち取ることが出来るのかが大きな見どころになってきます。


アルピーヌ体制でどう変わっていくのか、そして復帰するアロンソはどんな走りを見せるのかを中心に注目していきたいと思います!

日本でF1ファンがもっと増えるように、もっとF1を楽しく視聴できるように頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!