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百万石メモリーズ 第十一景「化け鼠と戦った猫墓法船寺・夢枕に立った白蛇養智院」

百万石メモリーズについて

江戸から加賀藩に嫁いできたお姫様「珠姫(主人公:たまひめちゃん)」が前世の記憶を半分抱えて輪廻転生し、現代の加賀百万石を訪れる。 加賀百万石の各地にあるパワースポットや歴史的な場所を巡る物語。

この物語は、第一景から第十二景まであります。今回の話は第十一景となります。
「百万石メモリーズ」全12章
■第一景 珠姫のお寺天徳院・白蛇龍神の金澤神社
■第二景 珠姫が通った子宝観音院・金沢城鬼門封じの五本松宝泉寺
■第三景 殿様の眼病治した香林坊地蔵尊・縁切りと縁結び貴船明神
■第四景 百万石まつりの尾山神社・十二支巡り願掛け香林寺
■第五景 希望が見える富樫城址・三天狗が守る前田家の裏鬼門
■第六景 利常の小松城址と浮宮天満宮・大聖寺の金龍山実性院
■第七景 奇岩胎内めぐり那谷寺・女人救済の遊郭串茶屋
■第八景 白山信仰の白山比咩神社・金運の金劔宮
■第九景 入らずの森気多大社・隠し砦の妙成寺五重塔
■第十景 海流が交わる聖域珠洲岬・日本海を守る須須神社
第十一景 化け鼠と戦った猫墓法船寺・夢枕に立った白蛇養智院
■第十二景 船出の大野湊神社・浄化の霊山医王山寺

第一景は無料でご覧いただけます。

第二景から第十二景までは、各話後半部分が有料(1話100円)になっております。
今後グランゼーラ公式noteでは、毎月1日と15日に順次配信してまいります。
一挙に最終の第十二景までご覧いただきたい方は、下記の電子書籍ストアにて販売中です。
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百万石メモリーズ公式サイトはこちら→https://www.granzella.co.jp/contents/book/


登場人物紹介

・珠姫(たまひめちゃん)
江戸から加賀藩に嫁いできたお姫様で、この物語の主人公。
前世の記憶を半分抱えて輪廻転生し、現在の加賀百万石の様々な場所を巡る。
・タケチョ
徳川家康公の前世の記憶を半分抱え、輪廻転生した。
孫である珠姫が心配で、豆狸の姿に変身して旅に同行している。

人物相関図

著者:麻井 紅仁子
編集・イラスト:ほんだしょうこ

第十一景
化け鼠と戦った猫墓法船寺~夢枕に立った白蛇よう智院ちいん

「姫がご覧になりたいびょうづかがある法船寺に着きましたよ」

「利常様もたまも猫が大好きだったの!」
 
「この法船寺は尾張の国にありましたが利家様、利長様の両公に従って金沢に来た寺です」

「仏様を担いで旅をするお役があったそうね」

「昔の武将はみなそうして持仏を移動して領地に寺を建立したようですから。
そんなご縁からか、利長様の乳母もこの寺の所縁の者です」

「そうなのね。この寺の二代目住職と利長様は乳兄弟だったというわけね」

「これが義猫塚ですよ姫。しかし立派な塚を建てたものですなぁ…猫に」

「とっても偉い猫ちゃんだったのよ。
昔むかし…とっても悪い大ねずみが毎晩暴れて和尚さんが困っていたのですって」

「大きいといってもたかが鼠でしょう」

「でも、すごい悪い鼠だったのよ。
そしてある晩、可愛がっていた猫が和尚様の枕辺に立ち、自分だけでは退治できないので能登まで助太刀を頼みに行ってきますって言ったのですって」

「へぇ…猫が鼠退治できないと?」

「それくらい大きかったのよ!
それから数日して大捕物がはじまったのだけど天井から見たこともないほど大きい鼠がドサリと落ちてきたのね。急いで梯子を掛けて天井裏を覗いたら…戦い疲れた二匹の猫が階下の鼠を睨みつけるようにすでに息絶えていたそうよ」

「ハハハハ、姫様お話がお上手ですねぇ」

大姥局おおうばのつぼねの侍女、おそのがこのお話、とっても上手でね…。
とくに大鼠と二匹の猫の戦いの場面が最高!最後におそのはいつも言うの、忠義が一番ってね」

「一生奉公の時代ですからね」

 義猫塚を、感慨深げにながめる珠姫一行のもとに一人の紳士が駆け寄ってまいりましたよ。

「ねね姫様、お懐かしゅうございます…!」 

法船寺 義猫塚

「あら?たまを幼名のねねと呼ぶそなたは?ちょっと待ってね、どれどれ…
あっ!あなたは、おそのなのね~‼
ちょうど今!リョウスケさんにお前の話をしていたところだったのよ」

「ねね様は本当に義猫のお話がお好きでしたから」

「おそのも現世では男なのね!容姿がまったく違って驚きだわ!…で、今は何をしているの?」

「もう歳ですから、印刷会社を引退し会長になってからは金沢の神社仏閣の歴史を学んだりお世話したりしながら余生を楽しんでおりますよ」

「おそのは昔から信心深かったものねぇ」

「わしは自分がメモリーズと気づいたのはこの義猫塚を見てからなので、つい最近ですぞ」

「気づくのは本当に個人差があるのですね。あっ言い遅れました僕は姫の警護を…」

「おお、君がリョウスケ君?内記様から聞いておりますとも」

「おそれいります。おその様は過去世では江戸から大姥局おおうばのつぼね様についてこられたのでしたね」

「今世では最初から金沢の少し外れた在に産まれましたし、若いころはまったく自分の特性にきづきませんでしたわい。
内記様から、姫をよう智院ちいんへご案内するようにとのことだが」

「はい、ニシトモ様は養智院の世話方をされておられると聞きましたので是非にとお願いした次第です。お手数すみません」

「いやいや、おかげで珠姫様にこうしてお目にかかれ、ありがたいことですわ」

「あの…おそのは私が死んだ後も加賀にいたのでしょう?」

「はい…我々にはおとがめもなかったので」

「と言うと大姥局はやはりお仕置きを?」

「もうよいではないかその話は。おその久しぶりじゃなぁ」

「えっ?そのお声は大御所様では?どこです?どこにおられますか」

「ここじゃほれ!よいしょ」

「お~!これはまた面妖なお姿で」

「なぁ、たま、もうその話はやめにせんか」

「ごめんねタケチョ。たまが死ぬ前に利常様に甘えたことが恐ろしい事件の原因だとしたら…大姥局に申し訳ないと、ずっと心の重しになっているの」

「それはもう、何度も言ってきかせたであろうあの時代には普通で、利常が特別残忍というのではないのだ」

「でも…あのお優しい利常様が…たまのために…」

「それほどたまを愛おしくおもっていたということでもあろう。利常が生きた時代はまだ戦国。あれの面魂つらだましいは最後の戦国武将というても良いわ。官僚制度のようになった江戸期の大名とは違うてな。もっともっと残忍な刑罰や拷問を平気で行う胆力がのうては生き残れなかったのだぞ」

「そうですか…姫様はあのことをそれほどお気になされて…。ならばそのせきは姫様ではなくわしにございます」

「おその、それはどういうことなの?」

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