雨月物語

『雨月物語』とは同名の読本を脚色した映画のことだ。監督は健二溝口で、戦国時代を生きる貧乏人二人が戦乱と欲望に弄ばれ、もっとも大切なもの(すなわち家族)を見失うというのが簡単なあらすじ。『雨月物語』の他に溝口の『西鶴一代女』を前に見たこともある。この二つの作品の意外な共通点は50年代の映画でありながら女性重視であること。フェミニズム的だとさえ言える。『西鶴一代女』は平民の男を愛した貴族のお春が家を追放され、苦しみながら娼婦として生きていく様を描いている。論じようがないくらいフェミニズム的な映画だ。一方、『雨月物語』は主人公がどっちも男ではあるが、彼らの妻たちが陰で苦しんでるシーンが結構多い。フェミニズム的な面はいいとして、映画としては『西鶴一代女』の方が好みだ。『西鶴一代女』の焦点がお春だけであるのに対し『雨月物語』はフォーカスが主人公二人と彼らの妻に分かれており、どの人物にも共感することはあまりできなかった。前者みたいに時間を40分くらい伸ばした方が良かったかも。それでも決して悪い映画じゃないので見ておいて損はないと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?