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タレントプールは採用コストの削減に効果があるのか

自己紹介

はじめまして、事業企画のグラントと申します。
メイン業務は事業部の経営課題の解決・推進ですが、その傍らでHITO-Link CRMチームのセールスコミュニケーションの運用設計などをお手伝いさせていただいています。

サービス説明資料の「ある文章」が引っかかった

元々あるHITO-Link CRM のサービス説明資料に「HITO-Link CRM を導入すると採用コスト削減に効果がある」といった趣旨の文章がありました。

HITO-Link CRM はタレントプール経由の採用を支援するツールで、利用には初期費用を除くと月額費用しかかかりません。いま中途採用で主流になっているエージェント経由の採用は年収の約30-35%の成約手数料が発生するため、タレントプール経由の採用になれば、採用コストが抑えられそうなイメージはありますが、具体的にどれぐらいのコストメリットがあるのかが分からなかったため、実際に試算した結果を共有させていただきます。

一本釣り漁と養殖漁業

試算をする前に、それぞれの採用手法を簡単にご紹介させていただきます。

私の個人的な勝手なイメージとしては、エージェント採用が「一本釣り漁」、タレントプール採用が「養殖漁業」に近いなと思っています。

エージェント採用

一本釣り漁とは、魚の群れに餌を投げ入れそこに針を投げ入れる漁法ですが、転職エージェントが転職希望者に対してさまざまな企業を紹介し応募を促すモデルで、現在多くの企業で中途採用の主流になっています。エージェント採用は転職を考えている方に対してアプローチできるため即効性は高いですが、応募・選考・採用まで短期間で決まる弊害として、応募者・企業ともに見極めが難しくミスマッチが起こりやすい、という特徴があります。

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タレントプール採用

養殖漁業とは、天然の海で採捕した魚などを設置した水槽や生簀(いけす)のなかで育てることで安定的にな供給をめざす漁法ですが、タレントプール採用は自社の候補者をデータベース化し、その中にいる候補者と継続的にコミュニケーションを取っていくことで自社への意向度を上げていき応募・採用に結び付けていく手法です。採用担当者は候補者の中から「自社にマッチした人材」を継続的・重点的にアプローチをすることが出来るので入社後の定着が早いといわれていますが、候補者がアプローチ時点では転職意向が低い場合もあるため安定的な採用にはデータベースの量がカギになる、という特徴があります。

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試算の前提条件

試算をするにあたって前提条件を下記のように設定しました。

▼ 前提条件
・現在の従業員数は500名
・5年間で110%成長の550名を実現させる
・離職者数は新規採用で補填する
・採用はすべて中途採用(つまり新卒採用やバイトの正社員化などは含めない)
・採用者の平均年収は430万円(厚生労働省「2019年賃金構造基本統計調査」の東京都男性30~34歳の平均年収)
・転職エージェントの手数料は150.5万円(業界相場の35.0%より算出)
・退職率は11.4%(厚生労働省「2019年 雇用動向調査」より)

▼ 比較対象
対象Aは「エージェント採用100%の企業」、
対象Bは「エージェント採用90%/タレントプール採用10%の企業」です。
わずか10%の差で5年後にどれほどのコストの差が出るか検証していきます。

従業員数の推移

▼ 従業員数計画と採用手法による獲得人数の内訳

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表を見ると「離職者数は新規採用で補填する」という条件が人事採用担当者の負担を増加させているなと感じます。退職率「11.4%」自体は突飛な数字ではないので、従業員数を増やすということは非常に大変です。
(いつも頑張っている人事採用担当者さん、お疲れ様です & ありがとうございます)

累積採用コストの推移

▼ 採用手法ごとの採用数と累積採用コスト

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▼ 採用手法ごとの累積採用コスト

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試算結果によるとエージェント採用100%とタレントプール採用を10%ほど組み込んだ場合では5年間で2,800万円の差が発生しました。

その差を多いとみるか少ないとみるかは人それぞれですが、転職エージェントへの依存度を下げる、アプローチ方針・方法を自社で設定できるなど、副次的効果の高いタレントプールの導入は、企業にとって「採用から定着」へスムーズに移行させるためのとても良いアクションになるのではないかと考えています。

※Bの費用には「HITO-Link CRM 導入費用」が含まれていますが、企業によって発生しうる、採用イベントの開催やWANTEDLYnoteなどの利用料金は含んでおりません。

さいごに

人材の確保には、「獲得」と「定着」の大きく2つの要素が重要であると考えられます。

例えば、事業戦略のための従業員数110%成長と離職者の穴埋めを同時に進める場合、離職率が数パーセント違うだけで目に見える年間採用数・採用コストで大きな差が発生するため、「獲得」だけに目が行きがちな人事採用担当者も、「定着」の観点をしっかり持ち、自社にフィットした人材を獲得することが非常に重要です。

「定着」の施策・アクションを講じていない企業をよく「穴の開いたバケツ」と表現することがありますが、ただ採用数を追っていても企業の成長にとってはまったくの無意味だという事は明白です。

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「自社にフィットした人材」を獲得するには、転職エージェントに「自社の魅力・特徴」を伝えるという方法や面接官のトレーニングにより実現する手段も考えられますが、前者は多くの企業の案件を保有している転職エージェントに対しての効果は一時的になってしまい、後者は数回の面接で「自社にフィットした人材」かどうかを判断するのは非常に難易度が高くトレーニングでのレベルアップにも限界がありそうです。

そのようなことからも、採用マーケティング観点から自社のタレントプールを持ち、入社候補者と継続的なコミュニケーションを取ることにより、候補者には興味の醸成はもちろんのこと、人事採用担当者が「自社にフィットした人材」かを判断することが出来るため、タレントプール採用は、遠回りに見えるようですが、成功の近道になる重要度の高い採用手法です。

また近年では、退職者などの再雇用「アルムナイ」も非常に活発で、そこにもタレントプールが活用されていますので、今後もタレントプールの重要性は今後さらに高まっていくことでしょう。

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最後に、宣伝になりますが、弊社の「 HITO-Link CRM 」はクラウド型サービスには珍しい採用コンサルティングなどのご支援もサービス内容に含まれておりますので、これからタレントプールを始める方、もしくは、はじめたものの不安がある、会社から丸投げされたけどどう進めればいいか分からない!などのお困りごとにもしっかり一緒に伴走しながらご支援できると思いますので、もしご興味ございましたらぜひお問い合わせくださいませ!


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