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IU 韓国の国民的スターの軌跡 キャリア全体と代表曲について


韓国の国民的スター、IU(アイユー)のキャリアについて深く掘り下げていきます。彼女は15歳でデビューし、その後のキャリアは韓国の音楽シーンにおいて極めて重要な存在となっています。ここでは、彼女のキャリアのハイライトとその影響について詳細に紹介します。

デビューから初期の成功 (2008-2010)

デビューの経緯と初期の楽曲
IUは2008年、15歳という若さでLOEN Entertainment(現カカオM)と契約し、シングル「Lost Child(미아)」でデビューしました。これはエレクトロ・ポップの要素を取り入れた楽曲で、失恋の悲しみを歌っています。デビュー当初は大きな成功を収めることができず、約2年間は試行錯誤の時期が続きました。彼女は様々な音楽スタイルやコンセプトを試みながら、自分のスタイルを確立しようとしていました。

「Lost Child」は、彼女の強力なボーカル能力を示すものでしたが、商業的な成功には至らず、その後の数曲も同様の結果に終わりました。次のシングル「Boo」は、より明るいポップサウンドを採用し、若者の恋愛をテーマにしました。これは、彼女のイメージを再構築する試みの一環でしたが、大きなブレイクスルーにはなりませんでした。

初のフルアルバム「Growing Up」

「Growing Up」


2009年、IUは初のフルアルバム「Growing Up」をリリースしました。このアルバムには「Boo」「Marshmallow」などが収録されており、特に「Marshmallow」はチャートインし、IUの存在感を少しずつ高めることに成功しました。「Marshmallow」は、彼女のかわいらしいイメージを強調し、ファンベースの拡大に寄与しました。


この時期、IUは音楽活動だけでなく、バラエティ番組やラジオ番組にも出演し、徐々にその多才さを発揮し始めました。これにより、音楽ファンだけでなく、一般の視聴者にも彼女の名前が知られるようになりました。


「Good Day」での大ブレイク (2010-2011)

「Nagging(잔소리)」
2010年6月にリリースされた2AMのスロンとのデュエット曲「Nagging(잔소リ)」は、IUにとって初のチャート1位を獲得する歴史的曲となりました。この曲は、カップルの小さな喧嘩や日常のやり取りをテーマにしており、そのリアリティが多くのリスナーの共感を呼び人気になりました。作曲家イ・ミンス、作詞家キム・イナのコンビが手掛けたこの曲は、IUのキャリアにおいて重要な一歩となりました。



「Good Day(좋은 날)」


同年12月にリリースされた「Good Day(좋은 날)」は、IUのキャリア最大のヒット曲となりました。この曲は、彼女のミニアルバム『Real』に収録されており、韓国の音楽シーンに大きな衝撃を与えました。「Good Day」の歌詞は、初めての恋愛の甘酸っぱい感情を描いていますが、実は告白がうまくいかない切ない気持ちも歌っています。サビ部分の「私はオッパが好きなの、どうしよう」というフレーズは、とてもかわいらしいです。

音楽的には、オーケストラを大胆に取り入れたアレンジが特徴であり、特に終盤の3段高音(トリプル・ブースター)は、IUのボーカル能力を最大限に引き出す要素となっています。このパフォーマンスはライブでも大きな見所となり、観客を魅了しました。

ミュージックビデオでは、IUの可愛らしさと青春の純粋さが強調されており、彼女の演技力も高く評価されています。このビデオはYouTubeでも数百万回再生され、IUの国際的な人気をさらに高めました。

「Good Day」は、ビルボードが選ぶ2010年代のK-POPベスト100曲で1位に選ばれ、韓国大衆音楽賞でも「今年の曲」に選ばれました。この曲の成功により、IUは一躍トップスターの仲間入りを果たし、以降のキャリアにおいても数々のヒット曲を生み出す基盤を築きました。


アーティストとしての成長 (2012-2015)


2011年11月にリリースされたセカンドフルアルバム『Last Fantasy』のタイトル曲「You & I(너랑 나)」は、IUのキャリアの中で重要な楽曲です。この曲は、作曲家イ・ミンスと作詞家キム・イナのコンビによって制作されました。この曲は、未来で再会するために早く時計を進めたいというファンタジー的なテーマを持ち、リリースと同時に大ヒットを記録しました。

セカンドアルバム『Last Fantasy』

「You & I」は、IUが20歳を迎える直前にリリースされ、彼女の成長と変化を象徴する楽曲です。IU自身も「この曲は、未来の恋人に待っていてほしいというメッセージを込めたもの」と語っており、そのメッセージ性が多くのファンに共感を呼びました​ 。

音楽的には、壮大なオーケストラのアレンジとキャッチーなメロディが特徴です。特に、IUのクリアなボーカルが曲全体を引き立てており、彼女の歌唱力を最大限に活かした作品となっています。ミュージックビデオも非常に幻想的で、時計職人としてのIUの姿が描かれており、未来への希望と夢を象徴しています。このミュージックビデオは、韓国国内外で高く評価され、YouTubeでも数百万回再生されています。


日本進出と失敗

IUはこの時期、K-POPの隆盛を背景に日本市場への進出を試みました。2012年3月には「Good Day」や「You & I」の日本語バージョンをリリースし、日本でのプロモーション活動を積極的に行いました。日本でのデビューシングル「Good Day」はオリコンチャートで6位、続くシングル「You & I」も5位を記録しました。

しかし、IUの日本進出は期待されたほどの成功を収めることができませんでした。これは、日本市場での成功がKARA少女時代などのガールズグループに集中していたことが一因と考えられます。これらのグループは、現地化戦略を取り、日本語の楽曲やプロモーション活動を通じて、日本のファンベースを構築しました。対照的に、IUはソロアーティストとしての魅力をアピールしようとしましたが、ガールズグループの人気には及ばなかったのです。


「Every End of the Day(하루 끝)」

2012年5月にリリースされたシングル「The Spring of Twenty 20歳の春」からのタイトル曲「Every End of the Day(하루 끝)」は、IUの音楽キャリアにおいて非常に重要な楽曲です。この曲は、キム・イナが作詞を担当し、パク・グンテとキム・ドフンが共同で作曲しました。楽曲はディスコスタイルのテンポの速い曲で、古いポップミュージックを彷彿とさせます。

この楽曲は、恋に落ちた少女の思いを歌っており、彼女の感情が豊かに表現されています。歌詞は、恋人に自分の気持ちを伝えたいという切ない思いを綴っており、IUの透き通るようなボーカルがその感情をより一層引き立てています。リリース直後から多くのチャートで1位を獲得し、年間チャートでも上位にランクインしました。

特に注目すべきはこの楽曲のミュージックビデオです。通常のMVとは異なり、IUは約27分のショートフィルム形式のMVを公開しました。このMVは、IUが20歳になる前の心境や、恋愛やキャリアに対する考えを語る内容で構成されており、IU自身の人間性を深く掘り下げたものとなっています。MVの中で、IUは自分自身について語り、視聴者により親密な視点を提供しています。

MVは、彼女が自然体で語りかけるシーンから始まり、その後、彼女の日常生活や音楽制作の様子が描かれます。MVの中で彼女は、「一日の終わりに、あなたに会いたい」と歌い、その純粋な思いが多くのファンの心に響きました。


『Modern Times』

「Modern Times」

2013年10月にリリースされた3枚目のフルアルバム『Modern Times』は、IUの音楽性が大きく進化した作品です。このアルバムは、ジャズやラテンミュージックの要素を取り入れ、多様な音楽スタイルを展開しています。特にタイトル曲「The Red Shoes(분홍신)」は、ビッグバンドジャズやスイングジャズを取り入れた壮大なオーケストレーションが特徴で、IUの音楽的な成熟を象徴しています。

アルバム全体としても、ジャズやボサノバ、スウィングなどの要素を巧みに融合させ、IUの多才な音楽性を示しています。彼女自身もこのアルバムでいくつかの曲の作詞作曲に関わっており、アーティストとしての成長が感じられる作品となっています。

2013年12月にリリースされた『Modern Times Epilogue』からのタイトル曲「Friday(금요일에 만나요)」は、IUが単独で作詞作曲を手掛けた曲で、彼女の作曲家としての才能を再認識させる作品となりました。この楽曲は、恋愛の始まりのドキドキ感を歌ったテーマを持ち、柔らかいボーカルとシンプルなアレンジが特徴です。リリースと同時に多くのチャートで1位を獲得し、大ヒットとなりました。

「Friday」は、恋人との待ち合わせを心待ちにする主人公の気持ちを描いた楽曲です。歌詞では、特に何をするわけでもないけれど、ただ一緒に過ごす時間を楽しみにしている姿が描かれています。IUの繊細な歌声が、恋愛初期の期待と不安を見事に表現しています。


「꽃갈피:A Flower Bookmark」

「꽃갈피:A Flower Bookmark」

2014年5月にリリースされたリメイクアルバム『꽃갈피:A Flower Bookmark』は80年代、90年代の韓国の名曲をカバーした作品です。
IUはこのアルバムで過去の名曲に新たな命を吹き込み現代のリスナーに再解釈されたクラシックを提供することを目指しました。これにより若い世代が古い音楽に触れる機会を増やし、音楽の歴史とその変遷を感じ取ることができるようになっています。特に「The Meaning of You」は、サヌリムのリードシンガーであるキム・チャンワンとのコラボレーションであり、彼の声とIUの声が美しく調和し、深い感動をくれます。

IUがリメイクアルバム『꽃갈피(A Flower Bookmark)』でカバーした元曲のプレイリストを作成しました。ぜひ活用してIUがどのように元曲をリメイクしたか聞いてみてください。


IUの音楽性の確立と進化 (2015-2020)

『CHAT-SHIRE』

『CHAT-SHIRE』

2015年10月にリリースされたミニアルバム『CHAT-SHIRE』は、IUの自己プロデュース能力を大いに発揮した作品です。アルバム全体で、彼女は7曲中4曲の作曲に関与し、そのうち3曲は単独で作曲しています。このアルバムは、彼女がアーティストとしての自己を確立するための重要なステップとなりました。アルバムのコンセプトは「不思議の国のアリス」に登場するチェシャ猫をモチーフにしており、IUはこのアルバムでより自由な姿を表現しています。

タイトル曲「Twenty-Three(스물셋)」は、当時の彼女の年齢(韓国の数え年で23歳)を題材にしたアップテンポでファンキーな楽曲です。歌詞では、相反する欲求を持つ自分自身について歌い、世間が求めるIUのキャラクターと自分の本当の姿の間での葛藤を表現しています。この曲は、IUの成長と自己認識の過程を描いており、彼女の音楽的成熟を象徴する一曲です。


『CHAT-SHIRE』に収録されている他の注目曲として「Zeze」が挙げられます。


この曲は、ブラジルの作家ジョゼ・マウロ・デ・ヴァスコンセロスの小説『ぼくのオレンジの木』に登場するキャラクター、ゼゼからインスピレーションを得ています。ゼゼは、幼少期の困難な環境の中で成長する少年であり、その純粋さと悪戯心を同時に持つキャラクターです。

『ぼくのオレンジの木』

「Zeze」の歌詞は、ゼゼの無邪気さと悪戯心を描きながらも、彼の内に秘めた深い感情を探求しています。IUはこのキャラクターを通じて自身の内面の葛藤や成長を表現しています。ゼゼというフィルターを通して、IUは自身の複雑な感情や多面的な性格を投影しているように感じます。

曲のビートはヒップホップ調で、挑発的な歌詞が特徴です。この歌詞の内容については一部で議論を呼びました。特にゼゼのキャラクターが性的に描かれているのではないかという批判がありましたが、IUはこれを否定し、単にゼゼの多面的な性格を表現したと説明しています​


他の注目曲は「Red Queen」です。この曲では、IUがZion.Tとコラボレーションしています。Zion.Tは、韓国のヒップホップとR&Bシーンで高く評価されているアーティストです。彼は独特のスムーズなボーカルと個性的な音楽スタイルで知られています。「Red Queen」は、ジャズとスウィングの要素を取り入れた楽曲で、Zion.TのボーカルとIUの声が絶妙に調和しています。この曲は、二人の異なる音楽スタイルが絶妙なバランスで融合しています。

アルバムの最後に収録された「Glasses(안경)」は、IUの成熟した視点を表現した曲で、メタファーとしての眼鏡を通じて、成長に伴う現実の厳しさを描いています。楽曲は、多層的なメロディと共に、IUの感情豊かな歌声が際立つ作品となっています。

俳優としての成功

一方、2015年にはKBS2のドラマ「プロデューサー」、2016年にはSBSのドラマ「麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜(달의 연인 - 보보경심 려)」に出演し、女性主人公のポジションを務めました。「プロデューサー」では、IUは人気アイドルのシンディを演じ、その冷酷で自己中心的なキャラクターが視聴者に強いインパクトを与えたそうです。

「麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜(달의 연인 - 보보경심 려)」


俳優業での成功を収めた後、IUは音楽活動に戻り、2017年3月にアルバム『Palette』からの先行シングル第一弾として「Through the Night(밤편지)」をリリースしました。

「Through the Night(밤편지)」

この曲は、これまで『꽃갈피: A Flower Bookmark(栞)』収録の「My Old Story(나의 옛날 이야기)」の編曲、「Heart(마음)」の作曲・編曲に関わったキム・ジェヒが作曲しています。

「Through the Night」は、夜遅くに恋人に向けて送った手紙のような歌詞が特徴的です。当時IUは不眠症に悩まされており、その状況で書いた歌詞は彼女の心の深い部分を反映しています。メロディは優しいフォーク・バラードで、IUの当時の健康状態とは異なる安心感と癒しを与える曲調となっています。


『Palette』

『Palette』


2017年4月にリリースされた4枚目のフルアルバム『Palette』は、IUの音楽キャリアの中でも特に重要な作品です。タイトル曲「Palette(팔레트)」では、BIGBANGのG-DRAGONとのコラボレーションが話題となりました。この曲は、25歳の彼女自身の成長と自己認識をテーマにしており、彼女の成熟したアーティスト像を強く感じさるものとなっています。


アルバム全体としても、多様な音楽スタイルが取り入れられており、彼女の音楽的な幅の広さを示しています。「Through the Night(밤편지)」や「Can't Love You Anymore(사랑이 잘)With Oh Hyuk」も大きな話題となり、アルバムの成功に寄与しました。


『Love Poem』

『Love Poem』


2019年11月にリリースされたミニアルバム『Love Poem』は、IUの音楽的な進化を示す重要な作品です。アルバムには「Blueming(블루밍)」を含む6曲が収録されており、リリース直後から多くのチャートで1位を獲得しました。このアルバムは、IUがファンに向けた感謝の気持ちを表現しており、彼女の温かい人柄が垣間見えます。

「Blueming(블루밍)」

「Blueming」は、『Love Poem』のタイトル曲の一つで、明るくアップテンポなエレクトロポップの楽曲です。この曲は、現代のコミュニケーションとその成長をテーマにしており、恋愛や感情の発展を描いています「Blueming」は、IUの特徴的なボーカルとエレクトロポップのビートが融合した楽曲です。曲全体を通して流れるギターリフが曲にロックの要素を加えており、IUの声の甘い質感が曲に遊び心を与えています。

歌詞の紹介

뭐해? 라는 두 글자에
「何してるの?」ていう二文字に
네가 보고 싶어
「君に会いたい」
나의 속마음을 담아 우
そんな私の本音を込めるよ
이모티콘 하나하나 속에
絵文字一つ一つの中に
달라지는 내 미묘한 심리를 알까 우
変化する私の微妙な心理を分かるかな

https://ameblo.jp/em-16/entry-12843906867.html

ここにSNS時代のコミュニケーションのやり取りによる恋する女の人の気持ちを代弁する歌詞が書かれています。

아니 바쁘지 않아 
いや、忙しくないよ
Nothing no no  
何でもないよ
잠들어 있지 않아  
眠くないよ
Insomnia nia nia  
不眠症だからね
지금 다른 사람과 함께이지 않아 
今他の人と一緒じゃないよ
응 나도 너를 생각 중  
うん、私も君のことを考えていたよ

https://ameblo.jp/em-16/entry-12843906867.html

ここではさっきも触れた通りIUが不眠症に悩まされた時期のことが歌詞にそのまま書かれています。

우리의 네모 칸은 Bloom
私たちの四角いマスに咲くの
엄지손가락으로 장미꽃을 피워
親指でバラの花を咲かせた
향기에 취할 것 같아 우
香りに酔ってしまいそう
오직 둘만의 비밀의 정원
ただ二人だけの秘密の庭園

https://ameblo.jp/em-16/entry-12843906867.html

この部分の歌詞は好きな人とのメッセージのやり取りを詩的に、美しく表現しています。詳しくは今回参考にさせていただいたブログ記事の方を見てください。そちらには全訳が乗っております。


多岐にわたる活躍と現在 (2020-2024現在)

「I Give You My Heart」

2020年2月15日にリリースされたシングル「I Give You My Heart(마음을 드려요)」は、IUが日本でも大ヒットしたドラマ『愛の不時着』のOST(オリジナル・サウンドトラック)の一部として発表した楽曲です。この曲は、ドラマの感動的なシーンを盛り上げ、多くの視聴者の心を掴みました。

「I Give You My Heart」は、しっとりとしたバラードで、IUの特徴的な息遣いを感じさせるボーカルが際立っています。楽曲はナム・ヘスンとパク・ジンホによって書かれ、プロデュースされました。

この曲は、リリース直後に韓国の主要な音楽チャートで1位を獲得し、さらに国際的にも高い評価を受けました。ドラマの最終話の前日にリリースされたこともあり、視聴者の感動が最高潮に達したタイミングでのリリースは大成功でした。


「Eight(에잇)」

2020年5月にリリースされたシングル「Eight(에잇)」は、BTSのSUGAがプロデュースとフィーチャリングを担当し、大ヒットを記録しました。この曲は、IUとSUGAが共に28歳の時に制作され、そのテーマは彼らの成長と喪失感を中心にしています。「Eight」はポップロックの要素を取り入れた楽曲で、軽快なメロディーと深い歌詞が特徴的です。

歌詞では、過去の思い出や永遠の概念について探求しています。IUとSUGAは、自分たちの経験を元に、失われた友人たちへのオマージュも込めており、特にSulliとJonghyunに対する思いが反映されています。

「Eight」はまた、彼らが作り上げた想像上の楽園での永遠の若さを求める一方で、SUGAのパートでは、その永遠が砂の城のように崩れやすいものであることを示唆しています。この対比が曲全体のテーマに深みを与えています。


「Celebrity」

IUの「Celebrity」は、2021年1月にリリースされたシングルで、彼女の5枚目のアルバム『LILAC』の先行シングルとして発表されました。この曲は、自己愛と自己受容のメッセージを中心に展開されています。より注目すべきはIUが親しい友人のために書いた曲であり、その友人が感じている孤独感や疎外感をテーマをもとに書かれたという所です。歌詞のメッセージ性としては
レディ・ガガの「Born This Way」と似たテーマを持ちながらも、IUの「Celebrity」には優しさが感じられます。この曲の歌詞を少しだけ歌詞を紹介します。

잊지마 넌 흐린 어둠 사이
忘れないで 君は暗闇の中
왼손으로 그린 별 하나」

左手で描いた星ひとつ
보이니 그 유일함이 얼마나
見える? その唯一さがどれほど
아름다운지 말야

美しいか

https://ameblo.jp/sullun114/entry-12652937245.html


ここで言及されている「左手で」は、少数派の人々や、一般的な基準に合わない人々を比喩として用いています。IUはこの比喩を通じて、他人とは違う自分の特性や不完全さを受け入れ、それが美しさであることを伝えています。IUはこの部分でリスナーが自分自身の変わっている所を認識し、それを美しいものとして受け入れるように励ましているわけです。

MVでは、IUが有名人としての彼女自身と、一般人としての彼女自身を対比しています。動画の中で、華やかな衣装をまといパパラッチに追われるIUと、シンプルな服装で自分自身を探し求めるIUが描かれています。最終シーンでは、IUが鏡を見つめ、自分自身が本当に必要なものは自分自身であることに気づくシーンが描かれています。



俳優としての活躍

IUは音楽活動だけでなく、俳優としても成功を収めています。代表作にはドラマ「ホテルデルーナ」や「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」などがあり、これらの作品は高い評価を受けています。特に「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」では、彼女の演技力が絶賛され、多くの賞を受賞しました。

「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」


『LILAC』

2021年3月25日にリリースされたIUの5枚目のフルアルバム『LILAC』は、彼女のキャリアと人生の一つの区切りを示しています。このアルバムでは音楽的な成熟と多様性を示してくれています。過去のアルバムと比較して、『LILAC』はより多様なプロデューサーとのコラボレーションを重視し、それぞれの楽曲に新しいアプローチを取り入れています。これによりアルバム全体が一貫性を保ちながらも、多様な音楽スタイルを楽しむことができる作品となっています。IUはこのアルバムを自分のファンや支援してくれた全ての人々への感謝の気持ちを込めて制作したそうです。


タイトル曲「LILAC」

アルバムのタイトル曲「LILAC」は、春の訪れと新しい始まりを祝う内容で、IUの成熟した音楽スタイルを示しています。この曲はディスコとシティポップの影響を受けた楽曲で、リズム、ギター、ストリングス、明るいシンセサイザーのアクセントが絶妙にブレンドされています。曲全体が軽やかで爽やかさを感じさせます。まさに最強のアルバムの一曲目といった感じです。歌詞は、20代の楽しい思い出とその終わりに対する感謝を込めたもので、「私たちの最後の瞬間を大事にして」というフレーズや「この春までだけ愛して」というフレーズが印象的です。これにより、彼女が20代の思い出に別れを告げながらも、新しい章に向かって進んでいることが伝わります。

IUのボーカルが楽曲にエネルギーとポジティブさを注入しており、シティポップ感が単調に感じられることなく、より深みのあるものとして何回聴いても素晴らしい体験ができる良さがあります。他にもにこのアルバムにはIUが新たな挑戦としてラップを取り入れた「Coin」や、壮大なオーケストラサウンドを特徴とする「My Sea」など、バラエティに富んだ楽曲が収録されています。

『LILAC』をリリースした後IUは2022年9月17日と18日オリンピックスタジアムでコンサート「The Golden Hour: Under the Orange Sun」を開催し、2023年にはIUはデビュー15周年を記念してファンコンサート「I+UN1VER5E」を開催しました。


話題を呼んだ「Love Wins All」について

『LILAC』のリリース後、IUはコンサートや俳優業に力を入れており、音楽のリリースは一時的に控えめでした。しかし、2024年1月24日にリリースされたシングル「Love Wins All」は、BTSのV(キム・テヒョン)とのコラボレーションによる楽曲で、リリース直後から多くのチャートで1位を獲得しました。初の2024年のCertified All-Killを達成し、1月28日にはPerfect All-Killも達成して、その人気の高さを再び証明しました​。しかしそれと同時にこの曲のMVは物議をかもしてしまいました。

IUのシングル「Love Wins All」のMVは、2024年1月24日にリリースされ、BTSのV(キム・テヒョン)が出演し、オム・テファ監督によって制作されました。このMVは、文明が崩壊した後の荒廃した未来を舞台にしています。この設定の中で、耳が不自由なIUと目が不自由なVのキャラクターが描かれています。MVでは、彼らが「キューブ」と呼ばれる社会的な圧力や偏見と戦い、自由を見つけようとする姿が描かれています。カメラを通じて、彼らが健常者のカップルの愛を理想的に眺めるシーンが重要なポイントとなっています。


MVのリリース後、障害者の描写について批判が集まりました。特にIUとVが演じるキャラクターが、健常者のカップルを理想的に見つめるシーンが問題視されました。この描写が障害者を単なる対象として描き、克服すべきものとしているとの指摘の声が挙がったそうです。。またMVが障害者の存在を一時的なものとして扱い、健常者の視点から理想化していると感じる人もいたそうです。

この論争が巻き起こっている中、全国障害者差別撤廃連帯(SADD)は、MVに対する公式声明を発表しました。声明では、「Love Wins All」のMVに関連した論争と批判を理解し、障害者の人権や多様な社会的少数者の存在がどのように扱われるべきかについて、市民とIUと共に考えていきたいと述べました。SADDはまた、障害者が非障害者として「克服」されるのではなく、共に暮らし、働き、地域で生活する排除されない世界を目指すべきだと訴えました。


この論争が起こった後の2024年3月にIUは日本で大規模なコンサートツアーを行い、東京ドームと大阪京セラドームで公演を実施しました。このコンサートツアーは多くの日本ファンが長年待ち望んでいたものです。それがようやく叶いました。


まとめ

IUは2008年のデビュー以来、多様なジャンルでの音楽活動と俳優としての活躍を通じて、「国民の妹」と呼ばれるほど韓国を代表するアーティストの一人となりました。IUの音楽はポップからバラード、シティポップまで幅広く、IUのボーカルとソングライティングの才能を最大限に引き出しています。また歌詞には肯定的なメッセージが多く、それにはIUの人間性を反映レテイルと思っています。

他に注目すべきは、IUの楽曲における年齢に対するテーマの多さです。「Twenty-Three」や「Palette」など、年齢による変化や成長を歌詞に取り入れることで、その曲を聞いた同年代のリスナーに共感を呼び起こしています。この手法はアデルにも見られます。アデルはアルバム『19』『21』『25』などで、自身の年齢に基づくタイトルを付け、人生の節目や個人的な成長をテーマにした曲を提供しています。IUも同様に自身の成長や変化を反映した楽曲を通じて、記録していっています。そして次のフルアルバムがどんな味付けになるのか、今から非常に楽しみです。

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