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少女トラベルミステリ

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「星子ひとり旅シリーズ&幽霊事件シリーズの研究本を出そう」から始まった『少女トラベルミステリ』──『少女』『トラベル』『ミステリ』の視点で少女向けミステリ、少女探偵、女性向けトラ…
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#創作大賞2024

トラベルミステリにおける星子ひとり旅シリーズの独自性について

『少女トラベルミステリ』は、それまで少女向け作品では存在しなかったロングセラーのトラベルミステリシリーズ、山浦弘靖『星子ひとり旅シリーズ』と風見潤『幽霊事件シリーズ』を扱っています。 星子ひとり旅シリーズが大人気になった後に幽霊事件シリーズが始まっているので、まずは星子ひとり旅シリーズのことを書かねばなりません。古いシリーズなので「実は読んだことがないんだよね」という方も多いかもしれませんので、解らない人はあらすじも引用してあるこちらのリストをチェックしてもらえると嬉しいで

山村美紗作品がトラベルミステリに与えた影響問題

現在、ミステリにおける山村美紗作品の影響を語る人はほとんどいません。十代、二十代でミステリが好きな方は一冊も読んだことがないかもしれないし、名前すら聞いたことがないかもしれません。本屋ではもう既に新刊は並んでおらず、読みたい人は古本か電子書籍しか入手の方法がありません。 そしてワタシを含む中高年には2時間ドラマ隆盛の時期に席巻しまくった印象が強く、読んでないのに知っている人がたくさんいました。2時間ドラマにおける山村美紗先生の影響は計り知れず、京都の各所に山村美紗作品の殺人

少女に気軽な一人旅が届くまで問題7

今回は1952(昭和27)年、日本が独立国に戻る前の話から進めます。日本の経済が復興してきて、既に占領中にもある程度旅行を楽しむ余裕も出てきています。 一人旅を楽しめる余裕が出る前に、まず語らねばならない要素があります。子供達の修学旅行です。実は戦時中もかなりぎりぎりまでは神社への聖地参拝旅行が行われています。修学旅行には神社への参拝に行く訳です。(ちなみにワタシも小学校の修学旅行でも行き先が伊勢志摩だったので伊勢神宮に参拝しています。市内の他の学校では奈良京都だったのです

少女に気軽な一人旅が届くまで問題6

前回、降伏文書に調印されて日本がGHQ占領下になったところで終わりましたが、その話に入る前に旅客機関係の話を挟みたいと思います。 日本で初めて民間定期航空路が開通したのは1922(大正11)年、日本航空輸送研究所が開設した堺──高松線です。堺市の大浜水上飛行場として小松島、高松──松山、大分、白浜などへ向かう路線があったそうです。 日本で一番早く提供された「民間人の乗れる旅客機サービス」です。 1923(大正12)年、朝日新聞社が設立した東西定期航空会が発足。当初は郵便業

少女に気軽な一人旅が届くまで問題5

鉄道連絡船に寄り道しましたが、1926年、とうとう昭和を迎えました。 まずはこの時点での交通についてざっくりと説明します。 青函航路があるので青森──函館間の乗り換えOKです。北海道に鉄道連絡船で行けます。 関門航路があるので下関──門司間の乗り換えOKです。九州に鉄道連絡船で行けます。 宇高航路があるので宇野──高松間の乗り換えOKです。四国に鉄道連絡船で行けます。 関釜航路があるので下関──釜山間の乗り換えOKです。朝鮮に鉄道連絡船で行けます。長春まで行けちゃいます。

『ガールガール』がいつ刊行されたのか問題

今まで『ガールガールミステリー』と表記していました山田節子先生、さいとうゆずる先生の少女劇画シリーズですが、どうやら正式名称は『ガールガール』だったようです。マリアナ海溝にダイビングするレベルに勇気を出して『全国貸本新聞』を買って確かめました。 結構高かったんですよ。(値段は訊かないでください……)しかし、せっかく高い本を買ったので多少は元を取りたい訳です。そういう訳で今回は『ガールガール』がいつくらいに刊行されたのか推測する記事です。 全国貸本新聞には毎号いくつか広告が