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『阿羅漢』

1986年の香港のアクション映画。
監督はラウ・カーリョン。主演は若かりし頃のジェット・リー。

舞台は少林寺。
と言っても、少林寺映画あるあるで、最終的には少林寺のある山から町に降りて悪と戦うスーパーベタ展開。

映画の始まりは、とある男が処刑になるシーンから。
しかし、処刑直前に男の処刑取り消しの勅令が出るが、フー・スゥオという総督の判断により無惨にも男は処刑されてしまいます。
そして、フー・スゥオが自身の誕生祝賀会を開催すると皆に伝えます。
このフー・スゥオという男が、もう見るからに悪そうで、一発でこの男と主人公が戦うことが分かります。
なんて分かりやすい導入!

そしてそして、お待ちかね主人公の登場。
主人公はジェット・リー演じる嵩山(ソンシャン)少林寺の青年チイ・ミン。
序盤は少林寺での日々が描かれているのですが、そこでチイ・ミンの自由奔放な性格が描かれています。

自主練中に木から落ちてきた鳥にあげる餌の虫を捕まえていて、棍棒の稽古に遅刻してしまったり。
蛇を自分で調理して、正式な食事の肉まんのようなものに挟んでみんなに振る舞ったり。

僧侶という身でありながら、欲が多いチイ・ミンはどこか憎めないキャラクターで、This is the 主人公って感じです。

そんなチイ・ミンは、足首に鈴が2つ付いたアンクレットをしています。
彼は仕切りにそのアンクレットを気にしていて、なるほど、これはきっと今後の展開で何かしらのキーポイントになるんだなと。ワクワクさせる細かい演出もバッチリです。


場面は変わり、莆田(プーティエン)少林寺。
チイ・ミンの嵩山少林寺が北にあるのに対して、莆田少林寺は南にあります。

莆田少林寺のチャオ・ウェイはファー・レン大師からフー・スゥオの誕生祝賀会に向かった姪のシーマ・ヤンを連れ戻して欲しいと指示されます。

時を同じくして、北の嵩山少林寺のチイ・ミンもフー・スゥオの誕生祝賀会があることを知ります。
そして、チイ・ミンのまさかの発言。「絶対に殺してやる。」と。
なるほどなるほど。復讐劇ですね。
ということは、おそらく、前述のシーマ・ヤンも復習の為に祝賀会に向かったのでは…


次のシーンで予想的中です。
盛大に開かれているフー・スゥオの誕生祝賀会の中に、演舞の人々の中にシーマ・ヤンの姿が。そして彼女を連れ戻す為に来たチャオ・ウェイは獅子舞の中に。チイ・ミンも獅子舞の中に紛れ込んでいます。

フー・スゥオといきなりバトル勃発する訳ではありません。
まずわりとしっかりと、演舞を見せられます。あ、いや、演舞に魅せられます。
映画ということを忘れるくらい、ちゃんとした演舞が行われて、これはこれで見応えがあります。

そしていよいよ、チイ・ミンのいる獅子舞チームがフー・スゥオの前で演舞を披露します。
機会を伺いながら、フー・スゥオを狙うチイ・ミン。
ここだ!というタイミングで、まさかの次のチームの演舞が始まってしまいます。
そのチームの後ろでどうすることもできないチイ・ミンでしたが、まさかの、そのチームがシーマ・ヤン率いる刺客達でした。

ここからバトル勃発です。
アクション映画ですが、ここはもうたっぷりと見せます。いや、魅せます。

ただ、とにかく相手の人数が多すぎて、シーマ・ヤンとチャオ・ウェイは追い込まれてしまいます。
そこへチイ・ミンが、どこで手に入れたのか、大量の爆竹を放って彼らを救出します。


なんとか逃げ切ったシーマ・ヤンとチャオ・ウェイは、その道中チイ・ミンと合流して、共に逃げます。

ここで同じ目的でフー・スゥオの誕生祝賀会に来ていたことが分かります。
チイ・ミンとシーマ・ヤン共に親をフー・スゥオに殺されていたのです。
ベタな展開きました!まあ、大体は予想がつきましたけど。
そして畳み掛けるように新たな展開が。
シーマ・ヤンがチイ・ミンと同じ鈴のアンクレットをつけているではありませんか!
さらに彼女が言うには、これと同じ鈴をつけている男性と出会ったら結婚すると!両親が決めたことだと!

いやーしっかりと恋愛要素も入れ込んでくれます。飽きさせない演出。

すぐにはチイ・ミンも同じ鈴を持っているとは言わないあたりもにくい演出です。どのタイミングで彼女に言うのか、ワクワクです。

この恋愛要素でアクセントになってくるのが、チャオ・ウェイです。
シーマ・ヤンを連れ戻しに来た彼ですが、どう見てもシーマ・ヤンに気があります。
所謂、三角関係ってやつですね。誰かが身を引かなければいけないこの関係。どうなっちゃうんでしょう。


さてさて、フー・スゥオに復讐する為に共に行動する3人ですが、チイ・ミンを連れ戻しに師匠であるシー・レンが彼らの前に現れます。
「復讐は永遠に続くものだからするでない。」的なことを言ってチイ・ミンを少林寺に連れ戻してしまいます。

勝手に下山したチイ・ミンは罰として、洞窟で3年間の面壁(壁に向かって座禅すること)を命じられます。
3年間壁に向かって座禅しろってそんな無茶苦茶な…
普通なら勝手に下山したら破門らしいんですが、まだ若いという理由で3年間の面壁って…


洞窟に行くと、長髪の老人が絵を描いています。
チイ・ミンはその老人が描いた絵が間違っていると言い、勝手に書き換えます。
すると、チイ・ミンの野心に気がついた老人は、僧侶をやめて俗世に戻れとアドバイスします。

けれども、チイ・ミンは自分の家は少林寺だけだと言って断ります。

これほどまでに少林寺に思いのあるチイ・ミンは、きっと3年間真面目に面壁をして、肉体的にも精神的にも強くなって、改めてフー・スゥオを倒しに行くんだろうな。

チイ・ミンは心残りが一つだけあると老人に伝えます。許嫁の証しの鈴のアンクレットを老人に見せると、老人は「僧侶が伴侶などを持てば災いが起こる。己も他者も滅ぼしてはならん。」と言います。

どうすればいいのか分からないチイ・ミンは老人に尋ねます。すると老人は、「ここから出してやる!問題を解決したら戻ってこい!」と言います。

えーー!3年間面壁するんじゃないんかーい!ってなりました。
あまりにも外に出られるのが早すぎて、ちょっとだけ展開についていけませんでしたが、ここまでのテンポ感を考えれば、このスピードで外に出ても確かに違和感あんまりないな〜と。


そんなこんなで、あっという間に外に出たチイ・ミンは、莆田少林寺に行きチャオ・ウェイに会いに行きます。
鈴のアンクレットのことを伝えると、自分でシーマ・ヤンに伝えろとチャオ・ウェイに言われ、2人でシーマ・ヤンの所へ行きます。

するとシーマ・ヤンは、追っ手から逃れる為にファー・レン大師と共に寺を出てしまっていたのです。

慌てて2人を追いかける2人。
すると道中ファー・レン大師が倒れているのを発見し、シーマ・ヤンは川にいると言われ、急いで川に向かうと時すでに遅し。

シーマ・ヤンはフー・スゥオに捕らえられてしまっていたのです。


さあ、お分かりの通りここからクライマックスです。

たった2人で、フー・スゥオがいる船に立ち向かいます。あまりにも無謀。
いくら2人が拳法の使い手とは言え、2対100くらいですからね。絶望的とも言えます。
しかしながらも、意外と好戦して、シーマ・ヤンを解放するところまでいくと、嵩山少林寺と莆田少林寺の僧侶達が駆けつけて、共に戦います。

いい展開です。
これぞアクション映画の醍醐味ですね。

そして、船から逃げたフー・スゥオが、駆けつけたシー・レン僧侶と一騎討ちをします。

いやいや、そこはチイ・ミンとの一騎討ちじゃないんかい!と思いましたが、2人のアクションに完全に魅了されて、そんなことは一瞬で気にならなくなりました。

このフー・スゥオなんですけど、これがまたちゃんと強いんですよ。
しっかりと武術で登り詰めたタイプの悪者でした。

互いに一歩も引かないでいると、そこへチイ・ミンも参戦。2対1に。
さらにはチャオ・ウェイも合流して3対1に。
流石に3対1ともなるとフー・スゥオは押されてしまって、最終的に身動きが取れなくなったところで、シーマ・ヤンがやって来て、豪快に首を切って復讐終了です。


そして、ラストシーン。
チイ・ミンは「これをお前に。彼女を頼む。」と言って、鈴のアンクレットをチャオ・ウェイに託して去っていきます。

チャオ・ウェイが持つ鈴にシーマ・ヤンが気がつき、「その鈴、あなたが持っていたの?」と言い、チャオ・ウェイは詰まりながらも、「そうだ。」と答えて、去っていくチイ・ミンが映っているところでこの映画は終わります。


最後の最後に、チイ・ミンは老人の教えを守ったんですね。男気あふれる、かっこいい姿を見ました。

ただ一つ気になるのは、チャオ・ウェイも僧侶のはずなので、結婚していいものなのか…

いやいや、まあまあ、そんな細かいことは気にせず、ハッピーエンドってことでいいじゃないですか。うん。


というわけで、長々と書いてしまいました。
内容は、正直ベタな展開で驚きも特にないですが、とにかくアクションが見ものなので、まだご覧になっていない方は是非。

とても心地の良いテンポ感で物語が進んでいくので、とても見やすい映画だと思います。

以上、海上の映画noteでした。

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