台湾のピーナッツクッキー『花生酥心糖』
「これは旧正月のお祝いのときに食べるお菓子。」
そう言って台湾人のT君がこれをくれた。
観光旅行で日本に来ている彼が、私へのおみやげとして買ってきてくれたのだ。
なんという名前の菓子かと聞くと、隣に座っている彼女と顔を見合わせた後、彼はスマホで何やら調べ始めた。
いつもの彼は瞬時に英語で答えてくれるし、ときには併せて中国語、日本語での名前も教えてくれるので、こういったことは珍しい。
しばらくスマホで何かを検索したあと、「酥」と書いてあるウェブサイトを見せてくれた。
こんどは私が中国語辞典で調べる番だ。
Weblio『白水社 中国語辞典』によると「酥」とは、「小麦粉を油でこね、砂糖を加えて焼いたクッキーのような菓子」だそうだ。
形容詞として「柔らかくてもろい、さくさくしている、ぼろぼろしている」という意味もある。
そういわれてみれば、台湾名物の「パイナップルケーキ」も漢字で書くと「鳳梨酥」で、「酥」という字が使われている。
個別包装の印刷をよく見てみると、『花生酥心糖』という商品名が入っていた。
「花生」は「落花生(ピーナッツ)」のことである。
私が日本語名をつけるなら「ピーナッツクッキー」にするだろう。
そう思ってGoogleで検索してみると、やはりその通りに呼ばれているようだった。
長さが4センチくらいの直方体で、表面が雲母のようにキラキラしている。
味と香りはまさにピーナッツで、甘さは強め。
サクサクとホロホロの間くらいの食感である。
もしこの歯応えを模した菓子を作ることになったら、パイ状のものを作ったあとに、ギュッと圧縮してみたりするだろう。
T君はこれをお茶と一緒に食べることを熱心に勧めた。
日本茶でもいいが、中国茶のほうがさらによいという。
たしかにいいお茶請けになりそうだ。
茶芸館で淹れてくれるような中国茶といっしょに飲んだら、台湾にいるような気分を味わえるに違いない。
私は50歳を過ぎたころからまったく酒が飲めなくなったが、最近はお茶やコーヒーも飲めなくなってきた。
午前中に1杯飲んだだけでもカフェインで眠れなくなってしまうのである。
仕方なく、いつも飲んでいる麦茶といっしょに頂いた。
それでも十分においしかった。