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猫白血病(FelV)を発症した2歳の猫における非再生性貧血の全経過報告

猫白血病(FelV)の持続感染により、白血病ウィルスが優勢化し、貧血症状を起こした猫の経過を備忘録として下記にまとめます。
素人の記録なので、間違っている部分もあると思いますが、他の白血病に苦しむ猫の参考になれば幸いです。

1.発症猫の経過

・生後4ヶ月程度でメスの野良猫を保護
・白血病検査の結果、薄く陽性反応がでて「偽陽性」とされた
・保護後7日程度で、保護前の尿道の外傷により尿道が閉塞、重度の尿毒症を起こし、動物高度二次診療センターで恥骨前尿道造ろう術を行い尿道を移設
・尿道の経過は非常によく、自己排尿管理ができるが、感染症を起こしやすいため数ヶ月に一度の頻度で膀胱炎やストラバイト結晶を発症
・白血病については、尿道移設後にインターフェロン投与を1ヶ月行ったが、偽陽性が変わらず持続感染の可能性が高いと判定された。
・生後4ヶ月、6ヶ月、1歳頃(ワクチン接種時)にも偽陽性

2.急な食欲不振(2022年5月で2歳)

・2022年5月5日の夜、魚を固めたおやつを口にしなかったため、ペースト状おやつに変更して食べる。
・食欲旺盛な猫で、おやつ、食事の類を食べないということがまずない猫であるため引っかかる。
・2022年5月6日の朝、いつもより食事へのがっつきがなかった(完食)
・2022年5月6日の夜、食事を摂らない。流動食なら口にするため液状おやつやフリーズドライのふやかした物を与える。口の中が白いのを認める。
・あまり動かず丸まって眠っている
・2022年5月6日の深夜に、トイレに立ち嘔吐。嘔吐物には朝食べたであろうフードが消化してペースト状になってほぼ全量出てきた。
・嘔吐後、呼吸が激しくなり、鳴くが、あまり動かなくなる。食欲不振からここまでの経過が6時間程度と変化が早い。
・2022年5月7日の診療結果、赤血球数(PCV)正常値25%に対して8%という重度の貧血が起きていた。その他血液データ、尿道、腎臓等は異常なし。

3.かかりつけ動物病院の見解

・採血とレントゲン診断を行う。
・体重3.6kg→3.4kg
・白血病の発症によくあるリンパの腫れや白血球数の変化がないため、断定はしづらいが白血病に起因する貧血と見るとのこと。
・貧血が重度であること、確定診断にいたる検査はできないが「血液を製造する部分にエラーが起きた貧血」である可能性が高いため、この状態ではできる治療がない。→このまま放置で1~2日程度で呼吸困難で死亡

供血猫を用意できれば、輸血によって一時的な回復は見込める。その後、ステロイドを投与する治療も考えられるが、血液製造が停止(非再生性貧血)であれば反応は乏しいと考えられる。

4.飼い主の判断と治療について

・姉妹の猫がいるため、その猫による輸血を決意
・しかし、姉妹猫が人馴れをしておらず捕獲困難、別ルートでの供血猫を見つけ、同日21時に供血を受け取り、22時から輸血開始した。
供血猫は、3歳のオス猫でPCV値が59%の非常に良質な輸血を60ml行った。
・2022年5月7日午前中の診療から22時まで、かかりつけで特に治療を行わず預かり入院。
・2022年5月8日の夕方16時に、退院の知らせが届き、PCV8%→21%まで回復。
・患者猫はA型、姉妹猫もA型
輸血は治療ではなく、貧血の進行を遅延させただけで、ほんの少しの延命に過ぎないことを釘を刺される。
・1回目の輸血はたいていうまくいくが、2回目はアレルギー反応が出る可能性が高い。
・当面のステロイド、抗生物質をもらい帰宅。

5.退院後の猫の様子(輸血日より+1日)

・自分で歩いてキャットタワーに登る元気がある
・食事は固いものを食べないかと思い、缶詰を給餌、半分程度食べる
・液状のおやつを与える
・水を飲んだりトイレも自力でできる
・輸血前の様子に比べると、いつもどおりの元気を取り戻した様子に見える

6.転院の決意(輸血日より+2日)

・体重3.4kg→3.2kg
・かかりつけより、技術的にも病院の方針的にも設備的にも面倒を見れないと言われたため、経過報告書を持って輸血から2日後に転院。
・貧血の原因を確定するためには骨髄検査が必要なため、対応可能な病院を探し依頼。
・白血病に頻発するリンパの腫れや脾臓の腫れがないか、一通りエコー検査も行う。内臓は良好。
全身麻酔下で骨髄検査を実施
・骨髄の観察の結果、血液を作っている様子が見られないと判断。(FelVウイルスの間接作用と見られる)
・詳細は病理検査の結果待ちに
・体重の減少がないようしっかり食事を摂らせるよう指導アリ
・5月6日より急激な変化が起きたが、貧血事態は非常に緩やかに進行していたと考えられる。
・輸血後の貧血の進行は不明のため、注意深く観察すること
・また、再度輸血が必要な場合のリスクと、供血猫の見立てについて指摘が入る。緩やかに進行し、急激に貧血が推移する可能性が高いため、供血は5kg以上の猫が望ましい。

7.転院後の経過と食事

・骨髄検査後なので、同居猫との接触で感染症→発熱を防ぐ目的で患者猫を隔離
・好んで食べたドライタイプのおやつを与えると非常に食いつきがよく、普段のカリカリは食べない。→おやつのメーカーが販売するドライキャットフードを購入
・高栄養価の食事にするため、フリーズドライの総合栄養食をトッピングに使用
・食欲や動く元気はあるが、一度にいつもの量を食べきれず、置きエサにし、1日かけて食べる。
・水はよく飲む、糞便良好
・第一輸血から+4日目で、1日の摂取カロリー約200カロリー分を完食できるようになる。
・第一輸血から+5日目、念のため貧血の進行をチェックに通院。PCV約20%で維持

8.猫白血病(FelV)持続感染による発症と分類

猫白血病の基本知識

・感染猫の唾液、糞便、尿、を介して猫同士で伝染する世界中にある感染症
・猫以外の生物への感染は起こらない
・感染した年齢によってウィルスを排除できず、持続感染となる。
例)6週齢以下の子猫70~100%、8~12週齢30~50%、1歳以上10~20%
・持続感染の猫は、3年以内に80%が白血病ウィルス起因の何らかの症状を発症し、死亡する。

・一過性感染

感染初期に自己免疫でウィルスを排除した場合は、FeLV関連の発症は認められずFelVの抵抗性を獲得する。1~16週間継続し、その後ウィルス検査は陰性を示す(陰転※)

・持続感染

1~16週の感染後も、ウィルス検査で反応がある場合、持続感染としFelvに関連する様々な症状(悪性リンパ腫、貧血、免疫疾患)を発症する。

・潜伏感染

ウィルスの骨髄までの感染が成立した後、免疫応答によって検査上は陰転するがウイルスは骨髄やリンパ節の染色体に残っており、潜伏状態にある。
免疫応答が優位になった場合、ウィルスを完全排除するケースもあるが、Felvが優勢になり持続感染へ転じる場合もある。
※陰転状態の猫は潜伏感染と言える。


感染初期には、発熱や白血球減少等の症状が現れるが、上記の通り3つの感染パターンに分岐する。


持続性ウィルス血症へ移行した場合は、造血器系腫瘍、免疫抑制、貧血などが多くの猫に現れ、約3年以内に80%の猫が予後不良で死亡する。

白血病(Felv)の治療と管理

・感染猫は非感染猫と生活を分ける
・16週後に陰転した場合も、潜伏感染(骨髄やリンパ節の染色体にプロウイルスとして潜伏)と判断し、完全にウィルスを排除したとは考えない。
・感染猫は定期的に健康診断を行う
・感染16週頃までに継続したインターフェロンの投与によって陰転(潜伏感染)になる報告もあるが、効果は定かではない。病院によって考え方が違うため、セカンドオピニオンを推奨する。
・FeLVを発症した場合は、症状に合わせた対処療法で治療する。※急性白血病の発症率は20%と低く、ウイルスによる免疫抑制で関連疾患に羅漢するケースが多い。
・FeLVそのものを完治させる治療はない。

下記に日本臨床獣医学フォーラムのFAQがあるので参考リンクとして掲載する
https://www.jbvp.org/family/cat/virus_faq/01.html

持続感染後の発症とFeLVによる貧血

参考)猫白血病ウイルス感染猫にみられる貧血の臨床的特徴
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/10/2/10_2_81/_article/-char/ja/

猫白血病(Felv)持続感染の猫は、主に造血器系腫瘍(リンパ腫)、免疫抑制(口内炎や慢性鼻炎、他の病原体感染)、貧血を頻繁に認めるが、貧血以外の症状の中にも高頻度で貧血を認める。

また、Felvが関連する貧血は非再生性貧血(再生不良貧血)が90%を占め、血液を作る機能が停止し重度の貧血を起こす。初期症状は食欲不振、低体温、口の中が白いなど。
治療への反応が非常に乏しく予後不良で食欲不振、呼吸困難を起こし死亡する。
稀に治療に反応を示す再生性の貧血が認められることもある。

FeLVのウイルス学的分類

猫白血病FeLVウィルスは、A、B、C、Tの4つのサブグループに分類される。通常のウィルス検査ではこのサブグループを判定することはできないが、Aタイプは感染した猫にほぼ必ず見られる。
その他のグループが発生するかは、猫の個体差で変化する。

また、日本には他国と異なる独自に変化したウィルス系統があるという研究もある(山口大学2008年調査)が、今回はその系統については深く触れない。

参考)猫感染症研究会より
https://jabfid.jp/disease/Pages/infection_felv

サブグループの詳細は下記の通り。
(カッコ)内は患者猫に置ける手持ちのデータから予測されることを記載する。

FelVーA(基本構造なので肯定)

外来性FelVの基本構造を有する。
病原性は比較的弱いが、免疫不全、免疫介在性血球減少症、リンパ系腫瘍、急性白血病などを起こすことがある。

FeLV-B(エコー検査、血液検査で認められないため否定)

FeLV-Aが感染し、enFeLVのenvなどと遺伝子組み換えを起こしたウイルス。細胞への感染においてPit1やPit2(phosphate transporter)を受容体とする。リンパ系腫瘍や急性白血病などのリンパ造血系腫瘍を起こすことがある。

FeLV-C(血液検査での貧血項目が赤血球とヘモグロビンのみのため肯定の可能性)

FeLV-Aが感染し、enFeLVのenvなどと遺伝子組み換えを起こしたウイルス。赤血球系前駆細胞などの造血細胞に高発現しているFLVCR1(heme exporter)を受容体とする。赤芽球癆(pure red cell aplasia: PRCA)や再生不良性貧血(aplastic anemia)などの重篤な血球減少症を起こすことがある。

FeLV-T(エコー検査でリンパの腫れは認められなかったが、免疫不全について指標がないため不明)

FeLV-Aが感染し、enFeLVのenvなどと遺伝子組み換えを起こしたウイルス。Tリンパ球に指向性を示し、細胞への感染にPit1とenFeLV由来のエンベロープ蛋白の一部であるFeLIXを必要とする。免疫不全を起こすことがある。

9.患者猫のデータから予測されることと治療の可能性

基本的に白血病を発症した猫は、予後不良で死に至る。
患者猫に現在起きている不調は「貧血」のみであり、リンパ腫やその他内臓疾患は認められない。

骨髄検査の結果、最初の病院の予測通り「造血活動が行われていない可能性」を指摘された。現在、異常値とされるのは赤血球(PCV)とヘモグロビン値のみで(ヘモグロビンは赤血球に付随するため赤血球の減少と同時に減少する)、白血球、血小板は正常値である。
このことから、患者猫がFelv-Cを発症している可能性を考察する。

2006年に発表された論文で「猫白血病ウイルス陽性の赤芽球癆の 2 例」というJ-Stageのデータがある。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/15/1/15_1_1/_pdf/-char/ja

この論文の内容によると、食欲不信を主訴に来院した猫2例において、検査では非再生性貧血を呈し、骨髄検査では赤芽球系細胞にのみ著しい低形成が認められた。

赤芽球癆 (せきがきゅうろう )PRCAと診断し、メチルプレドニゾロンのパルス療法とシクロスポリンによる免疫療法を行い、良好な反応を示した。
今回報告した2例では、赤芽球前駆細胞の免疫介在性障害の機序があると推測された。という予後不良とされる非再生性貧血における治療の良好な反応が報告されている。

特に2例目の猫と状態が酷似しており、現在結果待ちの病理検査の結果、赤芽球癆 (せきがきゅうろう )PRCAであると診断がされた場合は、論文に記述のプレドニゾロンのパルス療法及びシクロスポリンの免疫療法を適応することで、赤血球(PCV値)の回復が見込まれる可能性が浮上する。
その場合の経過は良好で、1例目の猫においては85日目までにPCV36%に回復し、その後の経過も良好であると記されている。

ただし、論文発行日が2006年と古く、現在の動物医療現場で適応されるか、また素人の予測どおりのFelVーCに分類されるかは完全に不明であるため、現時点では飼い主が愛猫を救うために血眼になって調べた結果と希望にすぎない。

ここまでを、2022年5月13日(第8病日)までの経過として記録する。

↓下記追記

10.病理データの到着と2回目の輸血

第10病日(1回目の輸血より8日目)、食欲の低下を認め通院。
PCV18%→14%に貧血が進行し、白血球高値、41度の高熱であった。数日内に2回目の輸血が必要だが、まずは解熱させないと輸血のアレルギーリスクも高まるため、点滴と抗生剤を投与。

第11病日、抗生剤での解熱ができなかったため、胃薬と併用して解熱剤を投与。(胃腸が荒れて出血した場合、貧血が進行するため一旦保留していた)
抗生剤で白血球は正常値に入る。
膀胱炎症状なし、原因不明の発熱であったが、解熱剤を投与後に食欲を回復。深夜に嘔吐跡アリ。

第12病日、解熱剤が切れると一気に発熱するため午前中に通院、そのまま泊まりで2回目の輸血となった。
5kgのオス猫より60mlの全血輸血と解熱剤点滴を行う。

第13病日、輸血を終えて退院。PCV20%まで回復。病理データが出た。

病理検査の結果

  • 明らかなウィルス(FelV以外の)感染所見なし

  • 非再生性貧血

  • 急性白血病は発症していない

  • 炎症、腫瘍なし

  • 非再生免疫介在性貧血の可能性もあるが確定できる要素なし

骨髄採取から約10日が経過しており、採取地点では赤血球減少のみであったものが血小板の減少や発熱にまで変化しており、貧血の原因の特定は更に難解となった。
前述に予測した「赤芽球癆」であれば免疫療法(多剤)で成果が得られるという予測は、現在の動物病院でも浸透している治療のようで獣医師から話はあった。
しかし、この免疫療法は非常に曲者で、赤芽球癆以外の事象に用いた場合、免疫疾患の白血病ウィルスがさらに暴れ、重症化するリスクを持つ。
論文にも「貧血の原因及びFelVのサブタイプが容易に診断がつけば、治療選択に有効になると考える」と示されているが、治療法は浸透したものの診断事態は一般化していない模様。

病院からの提案

  1. インターキャット(1クール:自宅で5日連続注射3000円x5本、14日休憩)を行い白血病ウィルスの活動を抑える。

  2. 造血ホルモン注射(1週間1回2000円)を行い赤血球の回復があるか試す。インターキャットと併用可

  3. 赤芽球癆かどうかは分からないが、可能性にかけて免疫療法を行う。(失敗した場合、予後不良で死亡リスクは高まる)

病院からは上記3つの提案があった。3つ目のリスクを背負う決断ができず、ひとまず1と2を行い様子を見ることとなった。
造血ホルモンは週1回となるため、効果が出るには時間を要する。その間にまた貧血が起きた場合は3回目の輸血を視野に入れた。

2回目輸血後の様子

輸血直後は食欲も戻り比較的元気な様子を見せるが、今回は発熱があるため振り返って見れば低速飛行であったように思う。

  • 食欲はあるが、たくさんは食べられない

  • 平行移動はするが上下移動はしない

  • 下痢に近い軟便状態になる

  • 解熱剤が切れると40度を超え、解熱剤が効いていても39度程度

  • 鳴き声には元気がある

そして2回目の輸血から7日目(第19病日)、膀胱炎を起こし通院。
鳴き声にハリがなく抵抗する力も弱まっていた。

膀胱炎発症とともに、白血球、血小板が下がり、非常に危険な状態であったため、翌日3回目の輸血を手配。
また、このまま輸血のみでしか継続できない命であれば予後も悪く、いつ輸血によるアレルギー反応が出るかわからないため、リスクを承知で免疫療法に進むことを決めた。

免疫療法の開始

ステロイドに免疫抑制剤をもう一つ追加した多剤式で、粉薬をシリンダーで朝晩2回投与する。
(論文通りのシクロスポリンではなく、病院が提案、調合した免疫抑制剤のため薬剤名称不明)
発熱に対しては免疫療法と相性の良い解熱剤と胃薬に変更して、1日1回投与。この日は通院時に皮下注射で解熱剤と抗生剤を入れたため、解熱剤は明日以降の夜に投薬する。

輸血前日の夜から免疫療法を開始し、翌朝も輸血前に投薬。
そのまま日中預かりで60mlの全血輸血を行った。3回目の輸血ではPCV22%まで回復。

多剤免疫療法は前日の夜開始、朝、晩投与

帰宅時には元気が回復し、熱も安定状態であった。
猫自身も帰宅してすぐに食事をしっかり食べ、免疫抑制剤を投与し就寝。

11.造血ホルモン注射と免疫療法の効果測定

3回目の輸血から4日目、免疫療法の投薬は朝晩2回で計8回投与後、造血ホルモン注射のために通院。

CBC(血液検査)の結果、PCVが22%から28%回復し、若干ではあるが血小板や赤血球の再生像も見られた。白血球においてはほぼ正常値。

このことから免疫療法に反応を示したことが示唆され、骨髄検査では分からなかったが貧血の原疾患は赤芽球癆(せきがきゅうろう)であったのではないかという結論が出された。
今後継続してPCVの回復が見込めるか不明なため、安心はできないが赤芽球癆の治療を中心に行っていくこととなった。

第30病日で再び貧血の進行へ

PCVが28%に回復したが、1週間後(第30病日)には歯茎の蒼白を確認、検査の結果PCVは22%へ下がっていた。ただし、血液の再生像は先週よりも濃く反応し、特に血小板の再生像が明確に見て取れるまでになった。
治療を変更せず(造血ホルモン、免疫療法)、食欲不振などで貧血の進行がないか観察しながらさらに7日の経過を見守ることで決定。

また、第32病日よりインターキャット2クール目を開始、第32病日~第36病日まで自宅で皮下注射を行った。
発熱は非常に安定しており、37度~38度程度で推移していたため、解熱剤は解除された。

貧血進行中の猫の様子

血液の再生力が微弱ながらも回復していることで貧血の進行がゆるやかになり、貧血の進行はあるものの猫は非常に元気な様子で過ごしている。
2回目の輸血時には発熱も続いたため、基本的には平行移動しか見せなかったが、3回目の輸血と発熱が安定した頃から上下移動も軽々行うようになった。
自宅内での行動範囲も広がり、キャットタワーやカーテンレールの上などに登る元気がある。

食欲においては、少しずつ回数を分けてしっかりと食べる。
特に好んで食べるおやつ、固形と液状を体重増加と水分補給の目的で頻繁に与えるため、平常時に比べ一度に食べたいほどの空腹感がないとも考えられる。
病気の影響とは考えにくいが今まで食べていた食事やおやつを口からこぼしたり食べにくそうな素振りを見せるので手でひと粒ずつ与えて食事を促す。食べることに疲れてしまう傾向もあった。

PCV22%→14%減衰、治療内容の変更

7日後の第37病日、食欲や上下運動に変わりはなく1週間を乗り切ったがPCVは14%まで減った。しかし、先週に続き血液の再生像だけは順調に回復している。
また、赤芽球癆の治療における免疫療法の効果が出る周期(約2週間)に達しており、現状の状態ではPCVの回復は見込みにくいことから、治療方法変更の提案があった。

・免疫療法の薬剤量を増やす
・免疫療法の薬の組み合わせを変更する

現在行っている免疫療法は、薬剤量の目安が20~40ml程度と定義されており、今は20mlで経過を見ていたが、再生像はあるもののPCVの回復に寄与しないため薬量をあげて反応があるか見るという提案だった。
この場合に懸念する副作用は胃腸トラブルのみ。

もう一つの組み合わせの変更は、先に述べた赤芽球癆の論文の通りステロイド+シクロスポリンでの免疫療法になるが、副作用として腎臓や肝臓への負担があること、効果が出る見込みが3週間後となるため、PCV14%まで低下した今切り替えるのは少し危険であると判断した。

よって、一旦薬量を増やし、PCV10%以下に進行した場合は再度輸血、輸血後の安定期にシクロスポリンでの免疫療法に変更することになった。

12.インターキャットの効果測定

現時点での状況をまとめると、7日ごとの造血ホルモン注射と継続した免疫療法(経口投与)で成果が得られているのは、血液の再生機能の回復のみである。

免疫療法開始から数日でPCVや再生像の回復がみられたため、赤芽球癆と判定したが、その後はゆるやかに貧血が進行した。
再生機能が回復してもそのスピードが微量過ぎる結果、緩やかに貧血が進行しているのであれば回復スピードをあげることで解決することも容易に想像ができるが、参考にした下記の論文のパターンにはまらない部分がある。

■猫白血病ウイルス陽性の赤芽球癆の 2 例https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/15/1/15_1_1/_pdf/-char/ja

2例の猫は免疫療法を開始してから継続的にPCVも回復しており、赤芽球癆の治療方針に記載がある効果の目安日よりも早く成果をあげはじめている。
患者猫は一時的にPCVをあげた後、再び下がり始めた。
治療の強度が弱く、再生能力の回復が微弱で追いついていないのであれば、一時的なPCVの増加もなかったのではないかと考える。

また薬に耐性ができた場合は、再生能力の回復も一緒に消失すると考えられるため、薬の耐性については考慮しない。

論文と全く同じ薬量で治療を行っていないため、治療強度の違い(薬の種類と量)により微量回復にとどまった結果、PCVは減衰した可能性も十分に考えられるが、一時的にPCVが28%まで回復した原因が別のことにあるのではないかを考察することにした。

インターキャット投与で期待できる効果

一般的にインターフェロン(インターキャット)は、免疫疾患に正常な免疫作用を促すための免疫療法である。
猫白血病(FelV)及び猫免疫不全(FIV)の感染初期の陰性化に効果があるとしばしば登場する薬ではあるが、ウィルス減少などの効果は見らない。
希望的な対処療法として投薬される。

また、FelVやFIV向けの投薬方法については獣医師によって様々で、筆者の猫には5日連続投与+14日の休憩が1クールだが、7日連続投与+30日休憩、3日連続投与+4日休憩、週1回の投与など一定ではない。

これは白血病に対するインターフェロンの効果が定かではない、ガイドライン外の利用であるために正確なデータが揃わず様々な投与パターンがあるものと考える。




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