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小正月

   今年のお正月はとてもゆっくりとしていた。5日はお休みをとったので8日までの長い帰省。年末は友人にあったりお墓参りをしたり何かと動いていたけれど、年が明けてからは毎日朝10時過ぎまで寝て、起きても炬燵でごろごろ、お菓子を食べてテレビを見たりトランプや懐かしのデュエマをしたり、15時頃にあらもうこんな時間、と母と兄と散歩にでかけて夜も温かい家でご飯を食べる、そんな日々だった。

実家に帰ると私は途端に末っ子になるし、母と兄といる時だけの"私"になるのを感じる。

元日から沢山の出来事があり、呑気にぬくぬくとしている事に何も思わない訳ではなかったが、だからといって気持ちだけを発散するのも違う気がして、ただ今の幸せに感謝をしようと休みをたっぷりと満喫した。明日は我が身である。


小正月の日曜日、ふと食べたくなってお善哉を作った。熱々でこっくりと甘いそれは、「安心」を可視化したような食べ物だった。ずるずるとお正月休みを引きずっていたけれど、ここらで切り替えていかなければならない。

   ここ数ヶ月、もしかしたら半年近く小説を読んでいない。読む気が全く起きないのである。読もうと傍に置いていても手が伸びない。別に焦るとかそんな気持ちは微塵もなく、ただ、物事の多くはするしないではなく出来る出来ないになってくるよなあとぼんやり思う。興味だって、持つというよりは持てるかだと思うし、強く強く興味を持てるというのはそれだけでひとつの才能だと考えている。

という事なので小説ではなく漫画を最近は結構読んでいたのですが、とある漫画のとある1話に、「第七官界彷徨」というタイトルがつけられていたんですね。『第七官界彷徨』とは尾崎翠の書いた小説で、大学4回生の時、私の入っていたゼミで1人がこの作品についての発表をしていた。だから、この文字を目にした途端私は一気に意識が大学生に飛んでいってしまった。

まだ卒業して1年も経っていないのに、懐かしくて仕方がない。なんだったんだあの贅沢な時間は、と思い出してはうっとりとしてしまうし、今でもずっと文学部に入って良かったなあと深く思う。目に見えて役立つことは殆どなくても、触れた文章や受け取った様々な考え方、世界の見方は、社会人になる前に出会えたからこそのものも多くあった気がする。

これから出会うのであろう学生達がまだ少しだけ羨ましい。数日前は成人の日で、袴姿の人をちらほら見かけた。見知らぬ彼女が素晴らしい大学生活を送られますように、と片手間に祈る。







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