星新一っぽいというパワーワード

   『ロボ・サピエンス前史』という漫画を読んだ。二十一世紀初頭に起こった原発事故を起点に、人類の衰退と長い長いロボットたちの歴史を描いた話。とっても壮大。私はちょっと切なくなるところがあったけどロボットたちは多分そうした悲壮感がないのが良い。上下二巻のシンプルな絵で読みやすかったし面白かった。今年の「このマンガがすごい!オトコ編」第二位に選ばれたらしい。

   ところで星新一っぽいという言葉の説得力は一体なに。『ロボ・サピエンス』の感想にも星新一を感じるみたいなことを書いている人がいて、私は読む前にそれを見て、じゃあ私も好きだろうなと思ってしまった。ジブリっぽいというのもよく聞くけどジブリに関してはナウシカ、ラピュタの方か魔女の宅急便の方かで違ってくるから一概にはいえない。それに比べて「星新一っぽい」は汎用性がめちゃくちゃ高い。単に宇宙、未来、ロボットを扱う作品というだけでなくシュール、シンプル、読みやすい、ブラックユーモア、どんでん返しという要素もそこには詰まっていると思う。村上春樹のことをここで書いた時もあるひとつの短編で星新一みを感じるって書いたし、前にTwitterでみた「宇宙人の婚約者」という漫画もとっても好きだったけど、一言でいうと星新一っぽい。全然関係ないけどこれまでTwitter上で読んできた漫画の中で一番好きなのが朝日昇さんの「金曜日、蟹をのせて」で、おすすめ。ここ一、二年でTwitterに面白い漫画を沢山目にするようになって、すごいなあと思っている。

   私は星新一っぽいをあまりに気軽に使いすぎていないか?双方に失礼では?とか急に厳しく考えてしまったので、今日、久しぶりに星新一のショートショートを読んだ。めちゃくちゃ面白かった。結論、星新一は天才。あと多分「星新一っぽい」の三割強は和田誠さんのイラストが占めてる。


   余談。私が星新一の作品で一番印象に残っているのは、題名は忘れたし少し曖昧だけど、死刑囚はひとつのボールだけを手渡されて別の専用の星にとばされるといった話。ボールは押すと水が一杯だけでてくるが、ランダムで爆発するかもしれないという仕組み。子供ながらに、生きるためには押さなければならないがもしかしたらその瞬間死ぬかもしれないという設定とその人の葛藤にドキドキしていた。








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