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資金の調達と承認決済

 「内部統制評価基準 勝ち抜く会社の800のポイント」は特に「業務の有効性と効率性」を基軸にした「内部統制」の有効性を診断する評価基準です。この評価基準を活用した内部統制の仕組みづくりでは、内部統制に関わる組織経営のプロセスを8つの側面(カテゴリ)に分けて、具体的に仕組みに落とし込んでいく方法をとっています。

 内部統制評価基準の8つのカテゴリーの2つ目は
2.経営資源の確保・維持
です。

 主要な4つの経営資源、ヒト・モノ・カネ・情報のうち、カネについて見ていきます。

2.(7)資金調達ルール
 資金(カネ)の調達に当たっては、使途、必要度、金額、調達手段を明確にし、適切なタイミングで、必要な決裁を得て実行していますか。
2.(8)入出金の承認決裁
 資金の入出金は、その金額の多寡に応じ、然るべき社内の承認決裁を経て実施されていますか。

 組織経営を考える以上、どういった組織であっても財務を抜きにしては語れません。自分たちの組織の特徴を読み取っていくために、収益性、生産性、流動性の財務の視点から組織の活動を考えていくことは重要です。ただし、各指標が業界平均と比べて高いからよい、低いから悪いといったことではなく、あくまでも自社の 目的に適った活動が行われているかを振り返ることに着目します。

 収益性は、売上高利益率に代表されるように売上に対する利益の出方、収益の構造、 費用の構造を表すものです。
 生産性は、 在庫回転率、総資産回転率、売上債権回転率、仕入債権回転率などといった指標をもとに、組織の価値の生み出し方がどの程度効率的であるかを判断するためのものです。
 流動性は、支払能力がどの程度あるかを示すもので、資金的な安定性、余裕度を図るためのものです。

 こうした収益性、生産性、流動性などの財務状況を踏まえ、戦略目的に沿って資金調達を計画し、実行します。

 資金調達は、大きく分けて3つの手段があります。それらは「負債を増やす」「資本を増やす」「既存の資産の現金化」です。それぞれにメリット、デメリットがあり、それを理解したうえで、調達方針を決めます。

 「内部統制評価基準 勝ち抜く会社の800のポイント」では、この調達方針、資金計画に沿って、具体的に資金調達、日々の入出金のプロセスが効・的に機能していることを確認します。

資金調達プロセスについては
・資金調達に関わる業務を主管する社内組織(担当者)を明確にする
・調達手段や調達金額に応じた社内決裁基準が明確化されている
・資金繰表の作成により入出金の状況を日時ベースで管理する
・資金予算は保守的(入金は最少、出金は最大)に作成している
・資金予算を月次レベルで策定し、実績との差異分析を行っている
・資金予算と実績の差異分析の結果を資金予算の精度向上に反映させている
など。

 金融機関とコミュニケーションを図り、必要な情報の提供等を行い、良好な関係を築いていることも重要です。

入出金の承認決済プロセスについては
・入出金に関する規程を作成する
・現金残高は、日々実査し、現金出納帳の残高と突合する
・現金(小切手含む)の残高と現金出納帳、預金残高と預金元帳、手形現物と手形帳を定期的に担当者以外の責任者が照合している
・銀行印と通帳は異なる場所で、異なる担当者によって保管する
・入出金伝票は入出金に関する規程に従って適切に処理されているかを定期的に責任者が確認している
など。

 会社になるべく現金を置かないようにするなども重要なポイントです。

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 内部統制評価基準改訂版「内部統制評価基準 勝ち抜く会社の800のポイント」については、NPO法人内部統制評価機構のウェブサイトをご覧ください。

 ボルドリッジ(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク)は、米国発の経営フレームワークです。
 筆者らが翻訳した、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。



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