見出し画像

原料・資材等の統制管理

 「内部統制評価基準 勝ち抜く会社の800のポイント」は特に「業務の有効性と効率性」を基軸にした「内部統制」の有効性を診断する評価基準です。この評価基準を活用した内部統制の仕組みづくりでは、内部統制に関わる組織経営のプロセスを8つの側面(カテゴリ)に分けて、具体的に仕組みに落とし込んでいく方法をとっています。

 内部統制評価基準の8つのカテゴリーの2つ目は
2.経営資源の確保・維持
です。

 主要な4つの経営資源、ヒト・モノ・カネ・情報のうち、モノについて見ていきます。

2.(6)原料・資材等の統制管理
 原料・資材等の生産活動のための消費、在庫残高は、不正行為の排除、品質確保、コスト削減の見地から、厳格に統制管理されていますか。

 不良在庫・滞留在庫の発生が会社経営(資金繰り)に重要な影響を及ぼすことから、販売計画、生産計画を踏まえて、原料・資材等の種類毎に適正在庫水準を決め、管理する仕組みを構築することが求められます

 在庫管理のポイントについて見ていきます。

在庫の機能=ストックポイント
 需要は変動するが工場生産は能力固定、このギャップを在庫が調整します。
 在庫は必ずしも「社内」にとどまりません。例えば、トヨタのストックポイントはパートナーの倉庫です。サプライネットワークの中で全体の調整が必要となっています。

過剰在庫と過少在庫
 在庫が過剰、過少どちらにもメリット・デメリットがあります。それを理解して適正な在庫管理を行います。

過剰在庫のデメリット
① 廃棄ロス
② CF(資金繰り)の悪化
③ 金利の増大、期待投資利益の損失
④ デッドストック→値下げ(粗利率の低下)
⑤ ムダな作業増加(生産性の低下)
⑥ 在庫維持コスト(保管料、倉庫料、人件費増)
⑦ 有効面積の減少
⑧ マーケットへの感度低下 ←これが危険!

 SDGs・地球環境保護の観点から、特に、廃棄が問題となることが多く出てきています。

過少在庫のデメリット
① 欠品による売上の機会損失
② 顧客からの信用力低下 ほしい商品がない
③ 競争力の低下 リードタイムの短期化に逆行
④ (原料・部品在庫)ラインストップ
⑤ 欠品による生産性の低下

在庫の評価
 
ここが在庫管理の肝!となります。

在庫が多い・少ない 個数(絶対数)では評価しない
→何日分の在庫か(在庫回転期間)、で評価
※在庫回転率より在庫回転期間の方がイメージしやすい。
①在庫回転率(回) 売上高÷期中平均在庫高  
②在庫回転期間   在庫高÷単位期間の売上高
           ↑      ↑
         原価で計算  売上高で計算
※実態を把握するには、原価(または仕入れ価格)を使用して計算することが望ましい。

 また、製造リードタイム(LT)、調達LTをセットで考えます。
 製造LTが1カ月なら、1か月分の在庫があればよい。すなわち、在庫を圧縮するには、製造リードタイムを短くすればよいことがわかります。

棚卸
 一斉棚卸と循環棚卸があります。
 製造業は必ず月次棚卸するようにするとよい。

仕入と発注方式
 1)定期発注方式
 2)定量発注方式(発注点方式)
  発注点=調達LT分の平均使用量+安全在庫

              発注時期
           定期     不定期
    一定量
   ルーティン    発注点方式
発注量              ダブルビン方式
    必要量   定期発注    都度発注方式
                 (都度購入)             

ABC分析と在庫管理方法
 ABC分析で3つの階層に区分して管理します。
 例えば、売れ筋から上位2割の商品を重点管理します。このとき、
売上貢献度「大」の商品は、在庫の動きが頻繁であり、管理は厳重、
売上貢献度「中」の商品は、在庫の動きは中くらいであり、管理はややゆるめとする、
などです。

製品ライフサイクルと在庫管理
 製品ライフサイクルによっても管理の厳重度が変えていきます。
 例えば、
  導入期       ゆるやかに
  成長期~成熟期   厳しく、欠品にならない様に
  衰退期       ゆるやかに 

在庫圧縮の進め方
<単独企業の場合>
① ABC分析の実施(製品の格付け)(アイテムカットも検討する)
② 品目別仕入先情報の整理
③ 品目別在庫回転期間の算出
④ 発注点方式を利用した適正在庫の算出

<複数社で行う在庫削減>
 情報システム・インフラの整備
 特に、廃番商品は削除するなど、商品リストはしっかりメンテしておくことがポイントです。

 在庫管理:製品在庫を圧縮するには、製造リードタイムを短くすればよい。ただそれだけです。単純だがそれをいかに実現するかが生産管理のポイントです。

★★

 内部統制評価基準改訂版「内部統制評価基準 勝ち抜く会社の800のポイント」については、NPO法人内部統制評価機構のウェブサイトをご覧ください。

 ボルドリッジ(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク)は、米国発の経営フレームワークです。
 筆者らが翻訳した、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?