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測定できないと改善できない

ボルドリッジではその「核となる価値観と概念」のひとつ「事実に基づくマネジメント」に基づいて、組織活動において、測定し、分析し、結果を評価して、改善に結びつけることが重要としています。

ここに登場するのが、評価尺度指標です。

評価尺度と指標(MEASURES AND INDICATORS)
プロセス、製品、プログラム、プロジェクト、サービス、および組織全体の、入力、出力、およびパフォーマンスの程度(成果)を定量化した数値情報。
ボルドリッジ主要用語集より。翻訳筆者)

定義はこれだけであり、ボルドリッジでは、評価尺度指標を明確に区別せずに使っています。
しかし、これらの用語を使用する人によっては、
(1)測定値がパフォーマンスに関連しているがパフォーマンスの直接の尺度ではない場合(たとえば、苦情の数は、不満足の指標ではあるが、不満足の直接の評価尺度ではない)場合や、
(2)測定値が、別のより重要なパフォーマンスの予測値(「先行指標」)となっている場合(たとえば、顧客満足度の向上は、市場シェア拡大の先行指標となり得る)には、「指標」という用語を好んで使うことがあります。

ただこれは、英語(原文)の評価尺度(measures)と指標(indicators)の違いの話なので、日本語の「(評価)尺度」と「指標」の使い分けとは異なるかもしれません。日本語でもボルドリッジ(ボルドリッジ・エくセレンス・ビルダー【日本語版】)では「評価尺度と指標」としてこの2つを明確に区別せずに使っています。

ところで、ここに例に挙げた、苦情の数、不満足(顧客満足度調査結果)、顧客満足度(同)、市場シェア(市場占有率)などは、「定量化した数値情報」として示すことができ、それらは、現在のレベル、時間的推移の判断、他組織との比較などが可能なものです。

しかし、組織活動の様々な出力や成果の中には、定量的に測定しがたいものも、多くあります。

そんなとき登場するのが、「測定できないと改善できない(If you can’t measure it, you can’t improve it)」と言う格言です。これを言われて、無理にでも定量化しようとします。

これは古典熱力学の開拓者の一人、ケルヴィン卿、ウィリアム・トムソン博士の言葉とされています。自然科学の世界では、正しいことと思います。

しかし、ボルドリッジが参考としたデミング賞の祖、エドワード・デミング博士は、彼の著書の中でこの格言(表現は若干異なります)を取り上げて、ほぼ反対のことを言っています。

測定できないと管理できない、と考えるのは間違いです。これは代償の大きい神話です。
It is wrong to suppose that if you can’t measure it, you can’t manage it – a costly myth.
W. Edwards Deming, ”The New Economics”(翻訳筆者)

デミング博士は、組織のマネジメントの改善にデータを使用することの価値を非常に重視していました。データを使用して、何が機能し、何が機能していないかを評価することは、非常に重要であり、ボルドリッジにおいても基本です。
しかし、デミング博士はまた、物事を測定し、データを見るだけでは十分ではないことを知っていました。測定できないけれども、それでも管理しなければならないものは沢山ある、そして、測定できないけれども、マネージャがそれでも決断を下さなければならないものは沢山ある。そう述べています。

測定できないものを管理する方法は、ボルドリッジにおいても課題です。我々は、マルコム・ボルドリッジ賞受賞組織の実践事例から、それを学ぶことができます。



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