深遠なる知識のシステム

システムとは何かを確認しています。

 デミングは彼が提唱した「マネジメントのための14の原則」(Out of the Crisis, W.E. Deming, 1982)に到達するために必要な知識体系として「深遠なる知識のシステム」を挙げています。

 「深遠なる」という名前に惹かれ、少しかじってみます。

 深遠なる知識のシステムは個人の変革の実現も支援するもので、「いったん深遠なる知識のシステムを理解した人は、どのような対人関係でも、その原理を適用できるようになる」とも述べており、興味もあります。

 「深遠なる知識のシステム」は相互に関連する次の4つの部分からなるものです。

深遠なる知識のシステム(the system of profound knowledge)
 システムに関する認識(Appreciation for a system)
 変動に関する知識(Knowledge about variation)
 知識の理論(Theory of knowledge)
 心理学(Psychology)
(The New Economics, W.E. Deming, 1994 より。訳は日本語版「デミング博士の新経営システム論」より)

 変動に関する知識では、プロセスが安定な状態と不安定な状態に分けて、
・統計的管理状態では、将来発生するであろう変動については予測できる。コスト、成果、品質、量が予測できる(これを安定な状態と呼ぶ。)
・不安定な状態では、成果を予測できない
として、プロセスを改善することによって安定な状態に持っていくことを重視しています。
(プロセスでなく結果を改善しようとすると、原因を取り違え、それに対処することで、経済的なロスを発生させ易くなるためです。)

 結果でなくプロセスを改善することの重要性を、ここで改めて示しています。

 マネジメントとは予測することであり、それをもって計画して進めていくことができます。この予測のために知識を活用します。
 知識の理論がそれを助けてくれます。

 心理学は、人についての理解です。人と環境の関係、顧客と供給者の関係、管理者と部下の関係、などについて理解します。

 深遠な知識のシステムを理解することで、マネジメントの変革を進めることができる、その変革の方向を、デミングは「マネジメントのための14の原則」に示しました。

 「マネジメントのための14の原則」については、デミングの有名な提言であり、ウェブ上にも多くの解説記事があります。
 今回は、「デミング博士の新経営システム論」から「深遠なる知識のシステム」について学びましたが、次の機会には、Out of the Crisis から「マネジメントのための14の原則」について理解を深めたいと思います。

※「デミング博士の新経営システム論」は、The New Economics for Industry, Government, Education (Second Edition), W. E. Deming, 1994 の日本語版(NTTデータ通信品質管理研究会訳、NTT出版刊)。絶版のため、ボルドリッジの理解に役立つ点をここに残しておきます。



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