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結果はレベル、傾向、比較、統合がそろってこそ分析・評価できる

事実に基づく経営は、ボルドリッジで大切にされている概念の一つですです。もちろんその実践が重要です。

事実に基づく経営(management by facts)
事実に基づく経営には、組織内および競合環境の両方で、組織のパフォーマンスを測定して分析する必要があります。パフォーマンスの分析は、組織の評価、調整、および意思決定をサポートする必要があります。
(「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」より)

パフォーマンスの測定・分析に用いる評価尺度は、ビジネスの必要性や戦略から導き出されるものです。それらによって、主要なプロセス、アウトプット、結果、成果(outcome)、競合他社および業界のパフォーマンスに関する主要なデータや情報がもたらされます。
パフォーマンスを効果的に管理するためには、多くの種類のデータと情報を必要とします。データと情報は、数値、グラフィック、定性などのさまざまな形式で、内部プロセス、調査、インターネット(ソーシャルメディアを含む)など、多くの情報源から提供されます。

パフォーマンスの評価・分析の中心となるのは、数値情報です。

パフォーマンスを数値で把握することについて、改めてその重要性を感じさせられた一枚のレポートがあったので、紹介します。

経済産業省が2021年6月に発表した「半導体・デジタル産業戦略」の関連資料「半導体戦略」の中にあった一枚のグラフです。

「日本の半導体産業の現状」と題して、日本の凋落、国際的なシェアの低下の状況を一枚にまとめたものです。非常にわかりやすい資料になっています。

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1988年には日本は世界の50%のシェアを占めていましたが、約30年後の2019年にはシェアは10%までに低下しました。
シェアという数値で見ると、明らかに「日本の凋落」がイメージできます。

半導体産業における「日本の凋落」はよく語られることで、撤退や合併などもニュースになるので、私はこのイメージから、日本の半導体産業は、プレーヤーが減って産業規模も縮小し、「将来的には日本のシェアは0%に」などと書かれていると、日本から半導体産業が消える、ということかと勝手に理解していました。

しかしこの1枚のシートが示しているものは違っていました。

日本の半導体産業だけを見ると(グラフからの概算ではありますが)、確かに2000年代の「最盛期」から見れば、2019年は縮小しているものの、1988年から見ればその間に規模は2倍になっています。長期的に見れば、縮小でなく成長してきたと見ることもできます。

ただその間に世界の産業規模は約10倍になっていたのです。
実際、例えば1992年2019年ともに1位のインテル社1社を見ても(1988年の数値は見つけられませんでしたが)、1996年には売上高約200億ドルが2019年には約800億ドルと、この間(20数年で)4倍になっています。

産業規模が10倍になっているところで、2倍の成長では、単純な計算で、シェアが1/5になることはわかります。

ボルドリッジでは、パフォーマンスの結果を示すときに、レベル、傾向、比較、統合の4つの視点(LeTCI)で見ることを重視しています。

私の思い違いから発したことではありますが、レベル、傾向、比較を一緒に見ることが重要であることを、よく示した事例であると思い、紹介いたしました。

レベル:現在のパフォーマンスはどうですか。
傾向:結果は改善されていますか、同じままですか、それとも悪化していますか。
比較:他の組織や競合組織のパフォーマンスと比較したり、ベンチマークや業界リーダーと比較したりしていますか。
統合:組織にとって重要な結果を追跡していますか。結果を意思決定に使用していますか。
(「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」より)

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 ボリドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。




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