【ネタバレの極】OMORI2周目感想・考察

去る6月17日、OMORIがSteam外のプラットフォームでも遊べるようになりました。せっかく幅広いプレイ環境に対応して人に勧めやすくなったのに、内容的には幅広く勧められないところが難点であり最高のポイントでもありますね……。
私はSwitch版を購入しました。聞いた話だと追加要素は今のところSwitch版だけらしいのでラッキー 1周目はSteamでプレイしており、初見時の感想は以下の記事にまとめてあります。

当記事は2周目のプレイ記録なので、全編が核心に触れるネタバレになります。
また、全てのエンディングを踏まえた感想・一部やり込み要素・隠し要素の情報の他、スクリーンショットも多分に掲載しております。閲覧は自己責任でお願いします。
あと当たり前ですけど個人的な感想解釈なんで、反感を買うであろうところも多々あるでしょうし 間違った情報もあると思います

以下ネタバレ









夢の世界はどこまでがサニーの心情なのか

OMORIは現実のパートと精神世界のパート、この二重構造で描かれたゲームですが、どこまでが夢でどこからが現実…?みたいなあやふやさはほとんどなく、現実は現実・夢は夢ではっきり描写が分けられてる印象が強いです。切り替わりの場面もしっかりありますしね。現実パートに出てくる"なにか"はサニーやバジルの見ている幻覚なので、夢が現実に侵食しているといえばまぁそうなのですが……
ただ、夢におけるマリ・バジルはどうにもサニー個人の空想や妄想の域を逸脱したような言動や態度が見られることが多く、この2人に関しては100%サニーの精神内の存在とするにはどうにも底の深すぎる描写がされているように感じます。しかしOMORIの現実パートの描写を考えると、世界観的にファンタジー要素は皆無に思えますし(リサイカルト本部は集団幻覚なのか?あそこだけ謎ではある)、誰かの夢や想像上の領域に、他人の意識も流れ込み影響を受ける…という非現実さのある説を持ち込むには、OMORIの世界観にそぐわないのでは?と思えてくるんですよね。

夢の世界はサニーの友達や知人たち、おもちゃや様々な記憶が元になって出来ているのは言うまでもありませんが 現実パートで出会う人々が、あ!これは夢で見た謎生物の…となったり、家の片付けをしていると夢の世界で戦った彼らの元ネタがわかったりする、あの演出は本当に素晴らしい……。

現実に基づく人や場所やアニメキャラ等が様々な作品、次元の壁を超えて複雑なオリジナルストーリーを作ってることは元より、世界の構造や成り立ちについてもきっちり設定されている(プレイヤーの我々に対する情報提供とかメタ的なことを言ったらおしまいなのでそこはあえて無視します)ので、あの夢世界は子供1人で作り上げるには相当ハイレベルなクオリティかつ底無しの深淵を携えた"作品"に思えますが……それでもサニーが頭の中で想像を膨らませることが好きで、学校に通っていた頃は頻繁にしていたという言及はありましたし、世の中には年齢を問わず信じられないほどの想像力や創作力を持った人がいるので、あの凄まじい世界をサニーが1人で作り上げることは決して不可能ではないし、ファンタジー的な力の介入は一切無いものだと思います。結局メタ的なことを言ってしまいますが、あのストーリーも世界観もキャラクターたちも、OMOCATさんたち人間の想像力の先にいる存在ですしね……。
そもそもオモリ自体、サニーが無意識下で作り上げた(作り上げてしまった)想像上の存在でもあるので ただでさえ想像が得意で好きな子供が精神に深い傷を負ったことにより、想像力が悪い方に暴発しまくった結果、あのカオスな世界が生まれたのではないかと。全てが無意識下に作り上げられたわけではないと思うんですよ、スイートハートとスペース船長の越境カップリング(この2人は元々別作品のキャラクターのはず)だとか、ハンフリーの腹の中を冒険するだとか、あの辺はサニーが自発的に作った二次創作のようなものなのかな…と個人的には思います。一方、現実の楽しかった思い出に基づく友達・姉との幸せなひとときだとか、ブラックスペース(後述します)だとか……あの辺りは無意識下に押し殺した様々な感情が作り上げた夢なのかな〜、と サニーの心を守るためにオモリがあの世界で行動し、押し出てきてしまう絶望を退け、幸せな夢で覆い隠し、それを何度も繰り返し……という流れのはずなので今あの夢世界を担っている大半はオモリな気もしますが、オモリはサニーの別人格のようなものだし、黄色いネコはサニーの記憶だし、最も賢いものはサニーのイマジナリーフレンドだし……で、結局のところ全てはサニーに行き着くはず、なんですよね

それを踏まえると、「あの夢世界は100%サニーが1人で考えているものだけでできている」と考えられる……のですが……
そうなると、あのバジルやあのマリの描写は……あれも全部サニーが自分で考えたものだと解釈すると、かなりきついものがあるというか……

このマリに対してサニーがこの感覚になるのさぁ……

…………こうした諸々の落差がOMORIの醍醐味(??)ではあるのですが、これが「夢と現実の差」ではなく「全部夢」なのがね……本当に……OMORIという作品の深淵ですよね……

自分の罪を許し、優しく自分を守り続け、最後には背中を押してくれるマリ 心に焼き付いて離れないあの日の物言わぬマリ 言葉こそ話さないものの自分に纏わり付き目を離してくれない"なにか" 困難に共に立ち向かって、新しい思い出を作っていこうねと笑いかけてくれるバジル どうして自分だけ逃げるのか、真実と向き合わないのかと責めてくるバジル もう自分を解放してくれと懇願してくるバジル
サニーのことが大好きだと、いつまでもこの優しい世界にいようねと寄り添ってくれる存在 お前は嘘つきだと、過去や罪と向き合って償えと呪ってくる存在 辛くても現実を生きようと促してくる存在

これら、全てがサニーの心の中に在るものなんですよ……あの日の出来事から逃げて都合の良い夢の中に引きこもっていたい気持ちも、際限なく自分を責め立てる気持ちも、いつまでも今の繰り返しではいけない、現実の未来に踏み出さなければいけないとわかっている気持ちも
現実を突きつけられて夢から醒める のではなく、希望と絶望、良い記憶と悪い記憶、光と闇が夢の世界"だけ"である種完結してるのがこの物語のすごいところですよね(だからこそ自分の心に"引きこもる"話なのかもしれん) 自分を守るのも自分を傷つけるのも全て自分でやっている……という構造が、誰にも言えない過去を抱えるサニーの孤独さというか心を閉ざしてしまっている感というか、出口の見えない問いを永遠に繰り返すしかない閉塞感というか……だからこそ現実世界で外に出た時、今のケル、オーブリー、ヒロとの関わり方が眩しいし どうしようもなくこの3人は壁の外にいる……というのを強く感じさせてきて……

そして一番辛いのは、都合の良いイメージの彼らはもちろん、そうじゃない存在の彼らすら 現実にはいないことで……特にマリは、死人に口なしとはよく言ったもので、自分を責めることすらできないわけです マリが自分のことをどう思っているかを知る術なんてないし、マリの言葉を聞くことは二度と叶わない 許してほしいと思うのもそばで見守っててほしいと思うのも願うことしかできないし、許してくれないに違いないと呪われるに決まっているといくら自分を苛んだって、結局それは自分の幻覚であり自責の念でしかない ツリーハウスの夏と変わらない元気なマリの姿も、現実に現れる"なにか"も、恐ろしい顔も、自分の頭の中にだけあるもので……そこに"現実"はひとつもないので……
一方現実のバジルはパニック状態に陥って自分との心中を図ってくるし(諸説)(詳しくは後述します) 現実のマリは自分を許すことも呪うこともなくもう何も言ってくれないし出会えない 夢に見た優しく穏やかな2人も、悪夢に見た恐ろしく悲しい2人も、どちらも現実には存在しないんです サニーの甘い理想の虚像だけでなく、心の奥底から消えない絶望の虚像でさえも、現実とは違っていることが……夢は夢であり、現実にはなり得ないということを鮮烈に証明していて……ブラックスペース等で見るマリやバジル辛い描写は夢であり現実ではない、というのは本来喜ばしいことであるはずなのに、2人が向けてくる強い感情でさえも結局はサニーの空想でしかないと考えると、あまりにも……あまりにもじゃないですか……?

※ただ、100%サニーの想像上にあるとすると、"真実“を示すあの写真群がバジル視点の画角になってるのは気になるところ でも内部テキストを解析した時に読めるコメントはサニーの心情だし……(以下参考リンク)

それに加えてこのコメントも気になるところなんですよね やはりバジルの意識がサニーの意識に流れ込んでる説も自分の中で否定しきれない……

バジルも当然きつい状況ってのはわかってるんだけど
これ("""悪い夢""")をよりにもよってバジルに言われるサニーの心情たるや
あの場面をリアルに撮影するわけは無いし、これはおそらく楽しかった思い出のことなんだろうけどね
でも例のバジル視点真相写真とリンクしてて恐ろしい台詞

オモリが聞き上手であるといくつも言及されてるし、場の空気や人の心情を察するのに長けていて割と正解に近い読心をできる説はまぁありますが…そこに加えてあの想像力と創造性なので、精神世界に出てくるバジルがやたらとリアリティに富んでいて解像度が高いというのは納得がいく話ではあります。あの一件の後2人きりで過ごした時間もそれなりにあるはずだし(マジック…)、その際にバジルの心情を断片的に聞く機会が無かったとも言い切れない……
「許して」は間違いなく現実の方が先であると思っているのですが ただ、そう考えるとゲームで描かれてる現在の時間軸のバジルの"許して"よりも夢世界バジルの"許して"が明らかに先なんですよね…どうします?一件の割と直後(写真塗り潰してる時など)にバジルが「サニーくん…許して…」って言ってきたとしたら……どうしようもないが……もうどうしようもないんだよ……

あと、現実には存在しないキャラクター(スペースボーイ船長とか)周りの何てことないセリフがやけに核心とリンクしてたりするのはどこまで意図的なんだろうか?そこまで考えてないよ案件なんだろうけど、OMORIはどこまでが伏線なのかわからないからな……
スイートハートが自分と結婚しようとしてそれをオーブリーが否定したり、結局のところ自分のコピーを認められなくてそれも立ち行かなくなったくだりはこう…サニーとオモリに重ねるとかなりしんどいものがありますが でもハンフリーあたりはもう完全に理不尽おとぎ話の領域だし ブラックスペースが浮上してきて夢の世界が崩れかけてる段階だから、ストーリーの整合性が失われつつあって みたいな感じなんだろうか それともあれは原作のハングリーハンフリーがそういうお話なのかね…

オモリの立ち位置

オモリとは何なのか?という話
サニーの別人格…にあたるんだろうか サニーの心が死にかけてしまったのを守るための防衛機能・無意識・超自我というか 最終的には現実の肉体への顕現を巡ってサニーと戦うことになったけど、あれは多重人格の症状なのか?というとそれも違うように思えるし

エネミーの全て!やら戦闘スキルやらからは、現実のサニーとはあまり結びつかない物騒な発想や雑な表現、攻撃性の高さなどが見受けられます でも別に現実に表れたオモリは他者に対してそう振る舞うわけでもないし、ナイフの使い道は自傷≒サニーの解放だけなんですよね そもそもブラックスペースとホワイトスペースを除く夢世界の全体がオモリの延長線上にあるとも言えるし、あのかわいくポップでありながらも割とデンジャラスで暴力的な部分もある理不尽な世界観、あれもサニーの感性の一つだとしたら、オモリはマリのことに限らずサニーが自分で抑圧してきた側面なのかもしれない…

単なる"サニーの精神構造の一部"として考えるのであれば、オモリにサニーが取り込まれるエンドは現実から逃避し夢を見続けることを選ぶ・サニーがオモリを取り込むエンドはそんな自分を止めて現実を見据えることを選ぶ ということにはなりますが、オモリのことをどこまで"人"として捉えるかで各エンディングの重みはまた違ったことになるとも思います オモリもまたサニーと同じ"人"なのだとしたら、しかもサニーのことを守るために生まれ、それだけに全てを捧げて生きるしかない"人"なのだとしたら?守りたい存在のサニーに抗わられて、せっかく作り上げた優しい世界も何度も壊れて、見たくない見せたくないブラックスペースは何度だって現れて、その度に傷つくサニーを目の当たりにして……
病院から身投げするエンディングだと、オモリと戦った後のサニーをオモリが楽にしてあげることになりますが あれもオモリ視点から考えると相当ですよね……もう何もできなくなるほど傷つき果てたサニーを前に、オモリは何を思ったのか 今まで何度も繰り返してきた、現実のサニーがこれまで生きてきた、ということはサニーの心がどれだけ削られようと、ブラックスペースの存在すら認識できなくなったり現実に意識を浮上させられなくなったりするほどの消耗はおそらくあのエンディングが初めてで…あって……そのサニーを前にして、オモリが辛くないわけもないじゃないですか……

彼自身の力、ってのは想像力のことなのだろうか
オモリというキャラクターやこの世界もサニーの想像力を元に生まれたものだから…サニーが現実と向き合うにあたって"敵"となるのは切なさがある

逆に考えれば、病院で目覚めて真実を話すエンディングは、サニーが自らの手で"オモリを解放してあげる"終わり方であるとも思えます。これまでずっと頑張ってきてくれたオモリを、何度繰り返すことになっても戦うことをやめず何度だって世界を作り直してあれこれと手を尽くして、自分を守ろうとするためなら決して"屈しない"オモリのことを もういいよ、僕はもう大丈夫だよ、辛くても悲しくてもサニーとして生きていけるよ と告げることで ようやくオモリは諦めることができたんじゃないかなぁ、と……

ここの精神バジルとの問答は"サニー"として行ってるらしい
ブラックスペースにオモリは入れない?(後述します)
逆にサニーはホワイトスペースに眠り、ブラックスペースに行くことしかできないのか……オモリとして行動してるのを何となく楽しい夢として見ている感覚なんだろうか

余談ですが、同じ構図で今の精神状況を表すタイトル画面の演出 あれあまりにも好きだ……ほぼ同じビジュアルだけどこの物語の根幹を知ると、あの変化に込められたメッセージ性の強さが止まらない

ブラックスペースにいるのはあくまでもサニーということか?
現実世界でサニーが肉体的な死を迎えた後
青空は現実の象徴のはずだから、現実世界にサニーはもういない…ということのみならず、サニーがいなくなったので必然的にオモリも消滅した とも読み取れる気がしてきっつい
サニーくん……


ブラックスペースのあれこれ

オモリですら入り込めないブラックスペース ある意味では不可侵領域とも言えるのだろうか…?サニーに現実から目を背けさせて心を擦り減らすものから守る立ち位置であるオモリが干渉できない空間でもあるので 実際ブラックスペースもオモリも超自我的存在とはいえサニーの意識下の話だから、サニーが心の底からあの記憶や罪の意識を消してしまいたいと思ったり何の罪悪感も抱えてなくて自然と記憶から消えたりってことになれば、ブラックスペースも無くなるのでしょう
そう考えると、どれだけ自己防衛機能のオモリが手を尽くそうがブラックスペースを消すことも覆い隠すこともできない、それどころか徐々にブラックスペース側の力が強くなってきている というのは、それだけサニーが強い自責の念に駆られていることでもあるし、みんなに対する罪悪感の大きさでもあるし、マリへの愛情と激情の深さ…でもあるなと ブラックスペースは残酷で鬱々しい場所ですがサニーが意識のどこかで、これを消しては、忘れてはいけないと考えているんだろうなと 思うと……何と言って良いのかわかりませんが……

ブラックスペースの、見てるだけでこっちも不安定になりそうな雰囲気はどこまで解釈できているのか自分でもわかりませんが 概ねのわかりやすいモチーフと、それのデッサンや色彩がぐちゃぐちゃに乱れたのは高熱がある時に見る悪夢のようですよね サニーの心の中にある直視したくない要素が、持ち前の創造性と情緒の乱れによって、あの芸術的に恐ろしい空間を作ってしまったというところなのでしょうか ブラックスペースの描写もあれはあれでいろんな真実を婉曲しているといえばしているので、深淵の最奥というわけではないのでしょうが……
ホワイトスペースにあるスケッチブック、あれはもしかしたら現実のサニーが現実で絵にしたものなのかもしれないとも思います スイカの絵も…描いたんだろうか……

このマリ?はマジで何だ

で、ブラックスペースと言えばあのバジル連続虐殺ゾーンなんですけど

は? のシーン

これも…どう捉えれば良いのかわからない部分なんですよね

ブラックスペースがサニーにとって消したいけど消せない要素を押し込んだ場所なので、そもそも夢の世界からいなくなったバジルがそこにいるってことは、バジルという要素自体があの日を象徴する存在のようなものだから頭から消してしまいたいってことなのか(3人が徐々にバジルのことを忘れて最後には綺麗さっぱり記憶から抜け落ちたのは本当に恐怖だった) 実際バジルが誰かに真実をバラさないって保証は無いし、バジルがいること自体にサニーが怯えや焦りを感じていてもおかしくはない
また、ブラックスペースでは"知らない人"と化したバジルがあれこれと話しかけてきますが あれはサニーが直視したくない真実や直視すれば夢世界の構造が崩れてしまう情報の他に、「そうであってほしくはないけれど」「だけど実際のところバジルはこう思っているに違いない」と、"サニーが考えている"バジルの気持が含まれてますよね それをブラックスペースに隠してあるということは、バジルのそう(であろう)いう思い自体の他に、バジルの想いや言葉を聞くこともできない、現実での対話を試みてはできないままでいることへの自責もあるんじゃないかと思うんですよ

……で、これが1番暗い可能性ですが あのバジルの死を以てバジルの口を塞ぐ、苦しむバジルを見殺しにして自分だけが生き延びる、自分にとって都合の悪いことを言おうとするバジルを無かったことにして暗闇に葬り去る という展開を望む心があって、だけどそんなとんでもないことを望んでいること自体がサニーにとって最もレベルで許せないし認められないことで、だからこそ執拗にあの場所、ブラックスペースで顕在化していたのでは……?と、思ってしまう部分もあり……
バジルについては後述しますが、あの偽装工作を提案してきたのはバジルの方なので そこにどんな思惑があろうと、サニーが「バジルがあんなことさえ言い出さなければ」と後から思うようになるのは当然だと思うんですよ(それを逆恨みと言い切るか言い切らないかは私の中でも意見が割れます) 加えてバジルは真実を知っている上に自分と違って外に出てるし学校にも行っているので あの恐ろしい計画の発案者で、秘密を知る危険分子で、だけど紛れもなく、自分のせいで苦しませ続けている大切な親友で 殺してしまいたい、口を塞ぎたい、解放してあげたい そんな感情がサニーの心にほんのひとかけらでもあったら、精神世界のどこかに出てきたっておかしくはないですし そんなことを考えてしまう自分をサニーが強く否定すればするほど、ブラックスペースにその要素が現れることになると思うので……

あとちょっと脱線しますがブラックスペース、現実にも時々出てくる恐ろしい顔のマリ 通称HELLMARI あれさ……"なにか"や首吊り女あたりはまだ実際目にした光景が元になってるからわかるんだけど、HELLMARIに至ってはもう…マリ要素ゼロじゃん……なんかもう完全に"恐怖の対象"としての存在だし、サニーがどこかで見たホラー画像とかがマリに重なってんのかな……あれだけ優しくて綺麗だった大好きな姉が、似ても似つかないし共通項ゼロの精神的ブラクラと化しちゃってんの……限界だよな……

なんかこれも、2人の関係はマリのことで破綻したような構図ではあるけれど
実際これはマリじゃなくてサニーの思いの一部なわけで、2人の関係を破綻させたのも突き詰めれば自分の感情が原因なんだよね


バジルとは

バジルとは……

この物語において私が一番何もわからないポイント、それがバジルの提案なんですけど いや、どこからそんな発想が出てきた?マジであの一瞬で何をどう考えた?いや動機はわかるんだよ、あそこでサニーをあのままほっといたらどうなってたか知れないしマリの後を追う可能性は十分あったし、大切な友達を殺人犯にしたくないってのもある、倫理に反するとかいうのはあの気が動転せざるを得ない状況の12歳にそんなことを求めるなという話なので…まぁ そこまでは納得がいきます でもそれなら、何かこうもう少し別の発想があるというか普通にマリが階段から1人で落ちて頭を打ちました事故でしたって嘘つくだけで良くない!?良くはないけど!!でもあそこで首吊り自殺に見せかけようって発想出てくるのは本当に……何…………?
正直あそこで首吊りの提案した理由と思考回路についてはいくら考えても一向にわからないのでもう考えません 考えるのは動機の方なんですが、不慮の事故に直面してしまったサニーを助けてあげたいってのは気持ち的におかしいことじゃないんですよ わざとやったわけじゃないんだからって庇うのもわかるし、サニーが自分で考えたように「わざとじゃなかったってみんなが信じるのか?」→じゃあサニー関係ない死だったことにしよう、となるのもまぁ…わかる んだけど、たぶんバジルがあの場でした思考ってそういうのとはちょっと違うのでは?と思うところがあって

どういうわけかわからないけどバジル、どうやらサニーに対して現実以上の神聖視をしているようで しかもそれはマリの件があって感情が拗れて…とかではなく、あれが起きた時点ですでにそうだったっぽいのが まぁ白いチューリップには「無垢」とか「純粋」みたいな花言葉があるようですが…4年前の時点で多かれ少なかれバジルの中のサニー像は何をきっかけにか"いい人"と美化され始めて、それであの件もあってその考えはねじれまくりながら凝り固まって膨張していった、というところではないでしょうか

マリの死の真相も写真のことも、サニーが大切だから守りたいという気持ちはもちろん嘘ではないんだけど、「自分の信じるサニーのイメージを壊したくない」という動機も弱くはないんだろうな…という印象がある サニーくんはいい人だからそんなことしないよね、というある種理想の押し付けを現実に持っていこうとするから現実の方が歪むわけで……マリは自殺をしたことになり、バジルはオーブリーの憎悪を買うことになった
このイメージを抱かれているサニーもサニーでかわいそう(腹割って話そうとしても「でもあれはサニーくんじゃないもんね?」とか言われるので…)ではあるし、何よりこの理想に縋って依存するのをやめない限りバジル自身が救われない だってイメージはどこまでいってもイメージにすぎないし、夢はあくまで夢なので それはオモリが作ったあの世界がどうやったって現実になれないのと同じ 自分の信じるサニーがそんなことするわけないって心の底から思っているはずなのに、マリの体を引きずって木に吊るした時に手にした感覚は鮮明に覚えているし自分のアルバムが黒く塗り潰されていく様子だって目に焼き付いている 現実と夢の狭間に閉じ込められて、そのギャップに苦しみ続けるのは他でもない自分なんですよ

バジルも自分でその矛盾をわかってそうではある

じゃあ逆に、なんで隠しエンドのバジルは救われたの?ってのは……
おそらく、あのエンディングを迎える過程で初めてバジルは本物の、現実の、等身大の…自分の理想フィルターを通したものではなく、そのままのサニーと向き合ったんだと思います。そもそもにしてバジルにあれもこれも背負わせといて(たしかに首吊りはバジル提案なのでそこはバジルに自業自得の節があるにしても、マジック塗り潰しの件は完全にサニーの罪をバジルが着てくれたので…)4年間顔も見せない、やっと会いにきたと思いきや自分を置いて知らない町に引っ越すとか言ってる この時点でバジルも心の隅では気づいていたはずなんですよね、サニーは自分が信じようとしたい聖人なんかじゃないって 臆病でずるくて嘘つきの、自分と同い年の普通の人間だって それでも、祖母のこととかオーブリーのこととかで精神がいっぱいいっぱいになってるところで冷静にそんなことを咀嚼するのは難しくて、「絶対そんな素晴らしい人じゃないのはわかってるけど、それを認めてしまったら…ずっと自分が唯一心の拠り所にしてきた"サニーくん"を否定してしまったら、もう自分には何も残らないんじゃないか?」と財バジルはバジルで引っ込みがつかなくて、結果あの夜の自室の惨劇に繋がったんじゃないかと

サニーが部屋に行かなかったルートのバジルは、祖母の死のショックや"なにか"への恐怖心・後悔・罪悪感にいい加減押し潰されてきて…というのに加えて、ほら見ろ!こんなにも自分が辛い時にあの子は来てくれないじゃないか!自分が信じてきたあの子はやっぱり幻想だったんだ!という思いが膨れ上がり、違う、そんなわけない、本当のサニーくんは…と自己分裂を起こして、自分が抱えてきたサニー像が完全に否定されてしまう前に自分を刺して思考を強制終了させた 側面もあったのかなと

対してサニーが部屋に入った瞬間 やっぱり来てくれた!サニーくんは優しい!自分の信じていた通りじゃん!!という思いの方が爆発し(本当に優しければ一万歩譲って"あと3日…"の時点で対話をしてる)、ってことはやっぱりあの日のサニーくんは何か変なモノに取り憑かれてたんだよね!"ぼくのサニーくん"はそんなことしないもんね!!の、長い間じっくり育ててきた信仰心と依存心と共犯性がここにきて一気に襲い掛かったというか ギリギリの所に現れたあのサニーはまさしく救世主の如くバジルの目に映っただろうし、他の全てを失いつつあるバジルは、これだけは何としてでも手放したりしないと誓ったと思います。その末の「どんなことがあっても、ぼくがサニーくんを守るよ!任せてよ!」で…理想のサニーはバジルにとって最後の砦で、それが否定されたら今までの自分の行いが間違ったものだと認めざるを得ないので……
でも、そのバジルに対してあの晩のサニーは"理想のサニー"、つまり"バジルが知っている4年前のサニー"とは違う行動をとった。昔のようにバジルに頼り、守ってもらい、あれは何かの間違いで悪い夢だったと現実に起きたことを否定するのではなく…自分のしたことを認め、あれは自分のせいだと自覚し、バジルに謝罪と解放を告げて もういいんだよと赦しを与えた(ブラックスペースでのイベント的にサニーは「バジルは許してもらいたがっている」と強く思ってそうだし…) 自分が信じたサニーくんが消えてしまうならその前に2人一緒に終わってしまおう、のつもりでいた自分の前で よりによって
そんなサニーの告白は、たしかに心の一部ではずっと望んでいたものなんだろうけど……は!?何!?今更!!って気持ちもあったと思うんですよ絶対、結局みんなに言うって何!?墓場まで持ってく覚悟だったのに!?じゃあサニーの分まで罪も苦しさも背負ってでもバレないように笑顔で過ごして何言われても耐えてきたこの4年って本当に何!?とはなるじゃないですか…まぁ……引っ越す直前になってそんなことを言い出すサニーは本当身勝手だし、そんなこと言うサニーくんは本物のサニーくんじゃない!!とさらに発狂もしたんじゃないかと……
でも、そこでサニーは屈したかったので サニーはそこで諦めず、バジルの前で本当の弱く醜い自分を曝け出したので それはバジルから見てみっともなかっただろうし滑稽だっただろうし呆れ返っても当然のものだっただろうし、まぁ端的に言って『幻滅』したと思うんです 暗い沼の底のような自分の人生でもよすがになるほどの救いを失った…でも、それはバジルに長らく続いていた夢からの解放でもあったんじゃないかとも考えられるわけで

このサニーは16とは思えないほど幼い笑顔だし、
このバジルは「しょうがないなぁ」という笑顔にも見える

サニーは自分が信仰していた"何か悪いものに乗っ取られてしまったかわいそうで純粋な少年"なんかじゃなくて、"自分の過ちを隠すために周りに嘘をつき続けていた上に黙って逃げようとした少年"だった それはバジルが現状唯一縋れるものを失ったように思えますが、新しい関係のスタートラインに立った、とも言えるのではないでしょうか 自分のしたことと向き合い、真実を話すことを決めたサニーを前にしたバジルは「誰にも言えない秘密」から解放されただけじゃなくて、「友達に勝手に押し付けた理想像への信仰」からも解放されたのですから 前述の通り、バジル自身も自分の抱えるサニー像は自分にとって好都合な偶像であると本心ではわかっていたでしょうし、そのことに自己嫌悪や虚無感を覚えることもあったと思います 理想のサニーという夢から覚めた後は、自分の未来を歩いていかなくてはならないのですが……
それについては、希望的な想像をして良いのではないでしょうか?だって、バジルが知った"本当のサニー"は、ただの嘘つきや弱虫では終わらず…結局最後は、自分のところに来てくれて、本音をぶつけ合ってくれた大切な友人であったことに間違いはないのですから それに、サニーと同じようにバジルにも、あの思い出の日々という宝物があります。本当にあったこれらの過去は、勝手に作り上げた想像上の理想像に代わって、これからのバジルの支えになっていくのではないでしょうか あの夜を乗り越えた2人なら、一緒に新しい思い出を作っていけると 思います…思わせてくれ……

※ちなみにこの解放だの何だのを踏まえて、サニー身投げエンドのバジルのことを考えると本当の本当に終わりなので考えないことにしました

結局救いはあるのか

考えれば考えるほど暗澹としてくる物語がOMORIなんですけど、じゃあこのゲームから救いは見出せるのか?という話です
マルチエンディングで分岐ごとに展開も大きく変わるため、それぞれに見出せるものが違ってはくるのですが……

結論から言うと、この物語を"サニーが過去に向き合い自分の未来を決める物語"ないし"サニーとバジルの関係性を変えていく物語"として読み解くのであれば、救いは「ある」と思います。それは大衆的な希望の意味でもそうですし、いわゆる"死は救済"的な価値観でもどちらでも救いはあるでしょう。
しかし逆を言えば、サニーとバジルだけでなく他の人たち、まぁつまるところケルとヒロとオーブリー、そしてマリのことなんですけど……この存在を考慮に入れると、救いは…無いのでは……と思えてなりません(繰り返しますがあくまで個人的な感想です)

サニーが過去を踏まえた上でこれからどうするのか、という点で話すのならば、たとえばグッドエンドは美しい話と言えるかもしれない。自分の罪に向き合い、過去に縋るのも逃げるのもやめて、自分のこれからを生きていく。3人に真実を話すのはもちろん辛さを伴う選択ですが、1人で背負い込むのをやめることである種の解放を得られることにもなるでしょう。バジルに対してずっと抱えていた罪悪感や憎悪などからも、やっと消える方向に進めると思います。
また、病院の屋上から身投げするエンディングや真夜中の自宅で包丁を手に取るエンディングは、サニーを覆い尽くし現実に顕現したオモリがサニーを守るためにとった行動でしょうから、あれは"死は救済"というか…サニーの心は優しい夢の世界に留まらせ、オモリが終わりを作ると あの選択を取ればこれ以上、サニーは苦しまなくて済むわけですからね……。バジルの自死を知った上での包丁エンドは、ある種死を以てしてバジルに向き合った(バジルの死に対して自分の死で責任を取る)とも受け取れました。引越しエンドは何一つとして解決してませんが、事態が今以上に酷くはなってないことや新天地で良いことがある可能性を考えて、まぁ悪くはないかな、と……。

バジルとの関係を視野に入れると、隠しグッドエンドが最善なことは言うまでもないのですが 誰にも言えない罪の意識に苛まれる日々からの解放されただけじゃなくて、ただ一つの希望だった『サニーくん』が自分を裏切ることなく、助けに来てくれたわけなので もっともそうならなかった「サニーの引越しをバジルが知った上で」迎える他のエンディングはいずれも最悪なんですけどね……サニーが1人で家に帰って自死を選ばないエンディング、おそらくはバジルの家に向かってるのであろう救急車のサイレンで終わるの本当狂ってる
バジルからしての最悪、サニーが病院で死ぬエンディングだろうな……あのルートだとサニーはバジルのことを"救って"いるわけだし、救われたバジルがどれだけ嬉しかったのかは隠しエンドでサニーに見せた笑顔からもよくわかるのですが、その喜びを抱えた上で目を覚ましたら、先に目覚めたサニーは自分が眠っている間に飛び降り自殺しましたとなるのは……かなり……
黙って引っ越そうとしていたサニーにも十分責任があることは前提として、あの夜にバジルが自分の都合(祖母)も込みで衝動的にサニーに縋り付いて、あえてこの言葉選びをしますが、我儘を言ったのは間違いないことで それでもサニーは自分に向き合い自分を止めてくれて助けてくれたのに、そのタイミングでサニーが結局死を選んでしまった(実際はオモリという別人格のはたらきがあったので純粋な自死なのか?という感じもあるがバジルの知る由ではないので)というのは、バジルは責任を感じるなんてものじゃ……ないでしょ……バジル、元々引越し+祖母のことで死のうとしていたわけなので、サニーの死を知ったら間違いなく後を追うと思います そのくらい追い詰められていたし追い詰められるので

それで……まぁ……さらにあの3人に触れますが……OMORIが何でこんなにも堂々巡りの考えに陥らせるかって、サニーとバジルの関係性をどう語るにしてもあの3人を抜きには語れないこと そして、あの3人をこれ以上苦しませるようなことは絶対に避けたいこと そして、それは避けようがないこと……
ケルもヒロもオーブリーも 本当にどうしようもなく優しくて、この人たちに悲しみや苦しみを与えることなんて許せない…と話が進んでいくごとに強く思わせるのが本当に上手いし、でもサニーやバジルには救われてほしいともそりゃ思うし、でもその両立ってできないんですよね サニーとしてはこれ以上真実を隠すのは自分も耐えられないし3人に対して不誠実だし、だけど自分が真実を告げるということが3人にとってどういう意味を持つか……それはサニーも痛いほどわかってるんですけど

この後に続く「会えなくなるのは、寂しくなるだろう。」は単なる引越しのことなんだろうけど
これから現実を去るサニーや 真実を告げ決別させることを覚悟しているサニーを内在しているので…いろんな気持ちになる

サニーとバジルとの対比もあるのかもしれないけど、この3人は真っ直ぐな思いやり・優しさ・正しさの描写が鮮明ですよね。何があってもこの人たちは自分よりも友達を優先するし、何か起きたら自分が悪いんじゃないかと考える 別に自分を蔑ろにしているというのとはまた違うんですけど
グッドエンディングで真実を知ることになった彼らのことを考えると…サニーやバジルを許す許さないだとか決別だとか絶交だとか、そんな単純な話じゃなくて サニーやバジルを責めて当然の場面になったとして、それでも自分のことを責めてしまうんじゃないかと……いやサニーやバジルを責めること自体も青天井の痛みを伴うだろうが……

このオーブリーの言葉凄まじいし
そこに近づけないサニーの構図も凄まじいよ

そんな3人が、自分の心に痛みを抱えていても他の人の痛みを優先してしまう3人が この4年間で傷が癒えたのか?っていうと全然そんなことはないし、でもサニーはもっと辛いもんね…一番年下だから守ってあげないとね…と振る舞う彼らだって、未だ紙一重のところで精神を保ってるんですよ 通常ルートではサニーが外に出てきて短い時間だけどまた一緒に過ごせたことで3人も救われた部分もあると思うし…まだ全然この人たち救われてないじゃないですか
そんなところに真実を撃ち落とされて、今までずっと空虚に問うてきたマリの死の真相を知って でもそれを言い出せずにいたサニーやバジルの思いにまで考えを巡らせて…あとオーブリーはマジックの件でバジルを責めたこと滅茶苦茶に後悔するだろうし……

この サニーを励ましてくれるヒロが
全然……本当は……

かと言ってサニーやバジルが死ぬエンディングは論外で、それこそ今度こそ3人が立ち直られなくなるルートだと思うんですよね…あれは……しかもあのルートだとどれも彼らは真実を知ることができないままで、マリだけでなくサニーやバジルも理由のわからないまま自殺してしまうことになるわけで 何が悪かったんだ、何かできることがあったんじゃないか、と彼らが自分のことを責めまくるのは自明の理なので……

たぶんケルがずっと押し殺してきた一番の本音なんだと思う
交友関係の広いケルだからこそ、他の友達はこんな目に遭ってないのにどうして俺は、俺たちは…って思いは強いよな

3人だけでなく、サニーの死は…サニーの母親のことを考えても……
当たり前のことではありますが、サニーの母親だってマリの死から立ち直れてなんていないんですよ サニーが弾くはずも近寄るはずもないグランドピアノがなんで綺麗なままかって、なんでちゃんと音が鳴るように調律されてるかって、それを誰がどんな気持ちでやっているのかって そんであの「たった一人の…」発言でしょ?あの人から子供をまた奪うような世界はとてもじゃないけど見たくないわけよ
それに町の人もね…ケルとヒロの両親もまたきっと"立ち直った"んだと思うんですよね ヒロが外での生活ができるようになり大学に進み、ケルも(それは気遣いの面も大きいだろうけど)毎日元気に笑顔で新しい友達との生活を満喫している そして妹も生まれ…あの優しい家族からもまた奪うことになるじゃん…大事な息子の平穏をさぁ……キム始め自転車族の子たちもオーブリーが絶望の底に叩き落とされたら絶対自分のことのように辛く思うでしょ ケルとサニーに近づきたくないに決まってるのに、オーブリーへの心配がそれを優って頼ってくる友達じゃん 作中にはほとんど出てこないけどケルの高校の友達だってさぁ……あの3人を傷つけるということは、あの3人を大切に思ってる無数の人たちのことも傷つけてしまうんじゃないかと思う部分もあり あと、外での行動が多かった場合に病室に花を届けてくれるような いや4年も外出てない少年が少し親切に親密にしただけで全面的に思いを返してくれるような あの人たちのことも……

この"優しい"画面を見るとここから離れられなくなる
オモリがサニーに作った世界ってつまりそういうこと……


諸々踏まえるとエンディングの中で一番『マシ』な展開(あくまでも『マシ』)(何もハッピーじゃないしグッドじゃない)は、一度も外に出ないままの引きこもりルート→引越しエンド かなと……サニーとバジルはトラウマを抱えたまま"なにか"と共に生きていくことになりますが少なくともすぐに自死に走ることもない(私は通常ルートのバジルが自死や心中に走ったのは、祖母の死+サニーの裏切りが重なったことの衝動的行動だと思っているので)し、3人は真実を知ることなく今まで通りマリの死を常に心のどこかに抱えながらも、自分の人生をそれぞれ生きていくことになると思います。それぞれの苦しみは一生消えないでしょうし、決して気分の良い展開でもありません。特に"なにか"が離れないままのサニーが引越し先で前向きな生活を送れるのかと問われるとほぼ確実にそんなことはあり得ませんし、バジルはいずれケルなどを介しサニーが自分に黙って町を去ったことを知るでしょう。それでも、決定的に何かが壊れてしまうことはない、彼らの中であの美しい思い出は美しいまま、行き場のない苦しみは"行き場のない"ままであることが叶うのならば、それはさらに最悪に近い展開よりは"マシ"なのかな、と思います。

スペース元カレの言葉が重く響きますね

もっとも言うまでもないことですが 隠しグッドエンディングでサニーが過去に向き合い、バジルとも向き合い、3人に真実を話した上で 長い時間がかかったとしても彼らがあの楽しかった日々を『宝物』だと振り返り、過去の自分たちを抱きしめることができる日が来るのであれば、それ以上のハッピーエンドは無いな、とももちろん思います。
プレイヤーにできるのはその遠い未来のハッピーエンドを祈るだけなんですね どのエンディングでも重苦しい気持ちにさせてくるの、すごいゲームだな本当に……


この物語から何を見出すか

じゃあ救いが無いなら何なの!?って話なんですけど いやもちろん救いが無い物語もそれは全然ありありのありなんですが、それはそれとしてOMORIに救いが皆無かと問われるとそういうわけでもなくて、

何かを見出すとしたら、この言葉に尽きるんじゃないのかと

覆水盆に返らず、の類語を調べるとまぁネガティブな言葉ばかり出てくるんですが 一度起きたことは取り返しがつかない、一度変わったものを元には戻せない、過去は変えられない それはそう 本当にそう マリが死んでしまったことも、その死の形をより悪い方向に持っていったことも、バジルを巻き込んだことも全部全部、サニーにはもうどうしようもない"変えられない過去"なんですよ
ただ、過去は"変えられない"だけのものではないんです 過去は"変わらない"ものでもあるんですよ

どれだけ後悔してもどれだけ辛い思いをしても、どれだけ自分のことが信じられなくなっても みんなで過ごしたあの思い出は変わらないし、消えないし、無くならない あの時間の後に起きたことは確かに取り返しのつかない悲劇だったけど、だからといってあの時感じた幸せや温かさや、みんなの優しさや笑顔、一緒にいるからこそわかった美味しさや勇気や楽しさってのが、無かったことになるわけじゃない 写真に映るあの日々は、嘘じゃない、間違いなく本当にあった思い出なんですよ
たとえば今死ねば あるいは自分のしでかした罪から逃げるために何もかも見ないフリをしたら 確かにマリのことから目を背けることはできるかもしれないけど、全部無かったことにするならば、あの楽しかった頃も無かったことになってしまわないか?オモリの作ってくれる夢の世界は楽しいこと幸せなことで溢れてるけど、それはどこまでいっても自分の幻想でしかなくて、本当はそんなものに頼らなくても自分には本当の、現実にあった思い出があるのではないか?自分が守りたいのは、……想像で作った自己防衛の夢の世界と、今は辛いが幸せな過去も確かにあった現実の世界と、どっちなのか?
これはサニーが最終的にくださなきゃいけない判断の自問自答で(さっきの2枚の画像は心の中のバジルなので実質サニーの思い)、この答えが通常ルート病院でのエンディング分岐になるというか…グッドエンドに行き着いたサニーは、現実の過去と今、未来を守ろうと決めたはずなんですね 変えることができない代わりに、変わらないでずっと自分を支えてくれる過去のある現実を

現在の3人の姿を知っても尚夢の中の3人は4年前のままだったのが、この場面で初めて現在の彼らに変わる
ここでようやく、サニーが自分達の変化を少し受け入れられたのかな……と思います
どうしてこの花たちを選んだのか?バジルが語ったその理由も全部ちゃんとサニーが覚えていて、あの世界の幸せな部分に持っていったこと たしかにサニーにとって大切な記憶なんですよ

ただ、散々言うんですけどこれはやっぱりサニーとバジルの物語としてOMORIを捉えた時に出てくる感想であって、オーブリーとケルとヒロ、そしてマリのことを考えるとやっぱりそうも言えなくなってくるんですよね……特に前3人はこれからも生きていかなきゃいかないわけで あの"思い出"と"新しく知った真実"の過去を背負って
グッドエンドのサニーにとっては、楽しかったあの思い出の日々は何があってもなくならない大切な記憶という宝物です。それはたとえ大好きな姉をあの形で亡くしても……しかし、真実を知った後の3人は同じようにそう思えるものなのか?悩み続けた時間の長さも含めて今度こそ"昔と同じではいられなく"なるであろう自分たちは、昔のきらきらした時間を、真実を隠していたサニーとバジルのことと別個のものとして捉えられるのか?あの大切な思い出が、苦しさを増幅するものにはなり得ないだろうか?それはちょうど、アルバムの笑顔の写真をマジックで塗り潰したサニーと同じように……
真実を最初から知っていたサニーやバジルにとっては、あの思い出の日々は最初のうちはマリの一件を想起させる辛いものでしたが、時間が経つにつれ「それでもあの楽しかった時間は嘘ではなかった」「あの頃は本当に楽しかった」とプラスに捉えられる、心の拠り所のような存在だったはずです。真実を知った後のオーブリー・ケル・ヒロも、きっと時間が経てば同じように思えるようになると私は信じてますし…信じたいですね。しかし、すでにずっと苦しんできたあの3人に、また新たな苦しみを科すことになるので……それも含めて、OMORIのグッドエンドはグッドなんだろうか……?という気持ちになってしまうんですね……

最後に行き着く感想全部これ

過去は変わらないものとはいえ…同じ過去を見つめたとしても、変わらないことに救いを見出すか絶望を見出すかは人それぞれ時それぞれですし、実際サニーもあの楽しい思い出が辛さに直結していた時期もあるので
あの、ただの写真ではない、"本当にあったことの思い出"を大事にする彼らが、これから新しい思い出を作っていければ良いと……我々プレイヤーはやはり祈ることしかできない……

こう言ってくれるバジルは"夢の中のバジル"なので、もちろんこれは現実バジルではなくみんなに対するサニーの思いなんですけど
サニーがこう思えるようになったことに救いを感じつつも、めちゃくちゃ虫の良い話だぞそれは…とも思ってしまう


その他細々とした疑問

・現実のニャーゴはどうなったのか

ブラックスペースの中でも1、2を争うトラウマポイントのニャーゴですが ニャーゴに干渉せず自分を刺せるなら先にそう言ってくれよ!!しかし切り刻むような夢を見たり「ニャーゴは本当に悪い子ですね」なんて言葉が出てきたり、その他ブラックスペースやスケッチブックにもおどろおどろしいニャーゴモチーフがあったり サニーは一体ニャーゴに何をされたのか?という感じですが
ニャーゴはマリが面倒を見ていたので、別に何をされなくともマリを想起させる危険要素には変わりありません。サニーと一緒に遊んだり寝たりしている描写もあったので、マリの死後、放心状態のサニーに付き纏って傷を抉っていた(もちろんニャーゴは1ミリも悪くないですが)可能性も高いです。そうなるとオモリは、サニーの心を傷つけるこの存在を排除・監視しようと思うのではないでしょうか?その結果があのブラックスペースでの残虐だったり、ホワイトスペースに現れるニャーゴだったりするのかなと
流石に現実の世界では、直接手にかけるようなことをしていないと信じたいですが……もしかしたら未遂でもサニーとニャーゴの間に何か起きてしまったのかもしれないし、そうでなくてもペットどころではないとは思うので、おそらく他所に譲られたのではないでしょうか。父親が連れて行ったのかもしれないな、とも思います

・バジル→サニーの想いは恋愛感情だったのか

これは個人的に全然答えの出ないところで、そもそも恋愛感情を恋愛感情として認識できる前の段階であれが起きてしまったんじゃないのか?というところなんですが
前述の通りマリとか関係なく以前から謎の神聖視をしていた可能性は拭えないので、サニー以外のメンツに向ける友愛とは違う特別な感情を抱いてること自体は間違いないんですけど、恋愛感情なのか?と問われるとう〜んとなるし、かと言って強めの友情とも言いきれんし あのことがなければそのどちらかにやがて成熟していったのだろうとは思うのですが、そうはならなかったので……元々特別感のある強い感情、やや夢見がちなサニー像を抱いていたところに加えて、精神状態に異常をきたすあの出来事が起きたことで、その強さが捩れに捩れて本来向かうべきではないベクトルへと深さを増していったのだろうな という感じ 勿論今のバジルが抱いてる感情は友情とか恋愛とかでは到底片付かないし言葉じゃ制御できないぐちゃぐちゃの執着・依存・愛憎を含んだ複雑なものだろうし

こういうこと言うからな

マリとサニーの仲睦まじさを見て羨ましがってる時も、姉がいることよりも弟がいることへの羨望っぽかった(これは翻訳の問題もありそうだが)し、植物の面倒見るの好きだったりと同義で何かを可愛がることは好きだろうし、そういう好意でもあるのかな 写真の塗り潰しを隠したのもマリの死の偽装も、あの夜の言動もだけど「サニーくんは僕が守ってあげるから」の節があるし、庇護対象として見ていた側面はある気がする

・サニーとオーブリー間の恋愛感情は?

これも何とも言えない オーブリーがサニーにハート出しまくりなのは精神世界のことなので、あれはサニーの願望にすぎない可能性があるわけで……現実の思い出を辿るとあそこまでのアピールは全然見られないし、ガキっぽいケルよりはそりゃあ聞き上手で自分のおしゃれにかわいいよって言ってくれるサニーの方がそりゃあ…あと趣味が合うバジルとも同じくらいの距離感ではある
むしろデュエットの回想でオーブリーと2人でいるシーンがピックアップされたり、レインコートの思い出シーンや海のシーンを見るに、サニーがオーブリーのことを好きっぽいんだよな そういえばここのバジル普通に応援してくれる感じの態度だな よくわかりませんこの人たちのことは

いやまぁ、ブラックスペース2のオーブリー軍団イベントがサニーの精神内部で生成されたと思うとどんな感情を持てば良いのかわかりませんが……実際、現実でもオーブリーの好意があってアピールもすごくて、サニーの中で「オーブリー=自分のことが好き」みたいな図式があったならあの夢のイメージになるのもわかるんですけど、別にそんなこともなくあの夢なんだとしたら、サニー…相当……

現在のオーブリーもな〜これからも会いに来てよってのを2人きりの時は言えなくて、ケルとヒロのいる前でなら言えるってのは…どっちに捉えたら良いんだろうね 好きだった子が引っ越してしまうにしても久々に再開したにしてもそういう態度ではないように見えるけど、まぁそれは…バジルのところでも書きましたが仮に恋愛感情だったとしてもそれどころじゃなくなってしまったというか、他のいろんな要素が混ざり込んでそれだけを抱えてはいれらなくなったというか もちろんオーブリーは真実を知らないので「自分が辛い時そばにいてくれなかったのに」と「本当はサニーが一番辛いのに私は何を思ってるんだ」の気持ちであるとは思いますが
ただ一つだけ言えるのは、仮に今のオーブリーがサニーに対して淡い恋心を残していたとしたら、サニーにナイフで切り付けられた時のショックめちゃくちゃでしょ……ということですね

・サニーの両親は真実を知っているのか

これはまぁ『もちろん知っている』に尽きますね。木を切ってる父親の「お前なんて息子じゃない」発言や、母親の「息子まで失いたくない」発言やあの何とも言えない距離感からよくわかりますが……いや、ストレートに姉を自殺で亡くしショックを受ける弟、に対してのあの母親なら、おそらく何日も夜通し家を空けたりしないだろうし…メモ書きや録音に見られるあの胸焼け気味の愛情を、メモ書きや録音だけで済ませるはずがないだろうし……
そもそも、遺書も兆候も無く周囲の人間が誰も心当たりが無い自殺って時点で他殺の可能性も視野に入れてるに決まってるじゃないですか(もちろんそういう自殺があり得ない話ではない) サニーやバジルに考えは及ばなくても、普通に家に侵入した殺人犯がいたかもしれないぐらい考えるだろうし、楽譜に血痕があるということは自殺には無いはずの外傷もあることになるし、そうなってくると警察に調査や検死を依頼した可能性も高いわけで サニーの態度はあの調子だしその辺りで両親が気づくのも時間の問題でしょう……バジルのことまで行き着いたかは不明ですが。両親との関係がおそらく希薄か良くない気配のあるバジルとサニーの家族ぐるみの付き合いがあったとは思えないし、他の家の子のことどころではないとも思うので、これは行き着いてないと考えるのが妥当なのかな……

・子供同士のプレゼントで「ちゃんとしたバイオリン」を贈ることの衝撃

他のあらゆることが衝撃的すぎてスルーしてしまいがちでしたが、これ すごいことですよ
中高生である程度弾ける・これから続けていくつもりの子供に渡すとしたら、日本の相場だと新しく買うとして10〜30万くらい……?まぁ実際には子供たちだけでなく、音楽教育に熱心なサニーの両親(グランドピアノもあるし幼少期からサニーはバイオリンとピアノを習っていたしマリは大学進学目前までピアノを続けている)がある程度は出資したんだろうな〜という感じはありますし、大半は高校生のマリとヒロのバイト代から出てるんだろうが……それでも、あの年の子供たちが自分のバイト代で"友達に楽器をプレゼントしたい"と思うのが、すごい すごいな……

みんなが心からサニーのバイオリンを望んでいる…

そして、それがサニーにとって喜ばしい感情だけでなく「ガッカリさせたくなかった。だって、友達だから」の感情を生んでしまったのが……切ないなぁ……
サニーは"マリと一緒に"演奏することは好きだったのだろうけど、音楽そのものを好きだったのかどうかというとちょっと微妙というか ピアノの映像もどう見たって楽しくなさそうだし、バイオリンも一回はやめてるわけで ただピアノのメーカーだかブランドだかであろう"OMORI"をもう1人の自分の名前にしていたり、マリとのデュエットが夢から覚める鍵になったりというところを見るに、決して嫌いというわけでもないんだろうけど……音楽そのものがどうというより、音楽を習う時間のせいでみんなと遊ぶ時間が削られたり、できない壁にぶち当たって自分の足らなさを痛感させられたり、マリと一緒にいる時間も2人揃ってキリキリしてしまうとか、そういうことが嫌だったのかな
バイオリンさえやってなければ…とサニーは考えたかもしれないし、他でもないそれが姉や友達の願ったものだったってのも、どれだけ事態を複雑にしてくるんだって感じですよね……



・友達の家庭環境

……のことまでサニーに背負わせるのは流石に筋違いだと思うし、オーブリーの「自分が一番辛かった時期にそばにいてくれなかったじゃん」は心情的に理解はできてもどうしたって言いがかりではあるんですよね。これに対してはケルの「あの時はマリのことでみんな自分で精一杯だったし…」が本当にそうであって
サニーとマリの一家が飛び抜けて恵まれていて幸せな家族だったということは(一件後の落差による演出も含めて)おそらく意図的に描かれていて、その他ケルヒロ・オーブリー・バジルの家が当時から悪いとまではいかなくても元々少しずつの問題を抱えていたであろうことは対照的に読み取れていくと思うんです マリのことがなくたってケルとヒロそれぞれに対する両親の意識のバランスには差があったままだろうし、オーブリーの両親はきっと離婚していたし母親の生活態度はああだっただろうし、バジルの両親はバジルを祖母や外部の人に任せっきりにしてたんだろうと…だから彼らが彼らの家庭で負った傷のことを、サニーが背負い込む必要は当然のことながら無いはずなんですね

バジル…本質を突くコメントをするな

ただ……ただですよ、マリのことが無ければ、マリのことが無くても、彼らは彼らの家庭であそこまで深い傷を負うことになったのか?と考えると、それはすぐに答えが出なくなってくるようにも思えて
ヒロ、恋人が急に自殺したらそりゃあ茫然自失にもなるし家族は心配なんてものじゃないし、元々弟よりも多めに注がれていた愛情のバランスがいよいよ決壊してもおかしくはないし ケル、無神経にも思えて結構気付いてる所の多い奴なのでヒロとの扱いの差も絶対元からわかってた(ただ実際ヒロが多才すぎるしケルはヒロを大好きだし他ならぬヒロが一番愛情を注いでいたのは今も昔もケルなのでそこでケルが歪むとかは無いが)んだろうけど、それをはっきりと目にわかる形で見せつけられたのはあの件が発端だし オーブリー、離婚後に父親についていく選択肢があったのかもしれないしあの件がなければ友達との別れを惜しみながらも父親と町を出たかもしれない、そういう別れの仕方はそりゃ今まで通りとはいかないけどまた会いに来ることはできるし、ただマリがいなくなって他のみんなもあの状況で自分も何もわからないままマリのいない町を離れることもできず(実際マリの墓参りに最も足繁く通っていたのはたぶんオーブリー)…と、父親と別れあの母親と町に留まることを決めたかもしれないし バジル、バジルもまた同じく……という マリの件がそれぞれの家における事態の歯車を狂わせた一端であるのは確かだよなとも思えるんですよ……

あと、バジルとオーブリーのことも いかな理由があろうと罵声を浴びせたり暴力をちらつかせたり集団対1人の構図に持っていったことはオーブリーに非があるし、バジルもバジルでこう…情緒不安定等が理由なんだろうけど自転車軍団の癪に触るような態度を取ってるよなという感じだし、ここに関してはこの2人に原因はあるんだけど、そうは言ってもバジルはサニーの秘密を隠すための行動だったし、マジックで塗り潰された写真を見たオーブリーが激昂するのも「キモい」と言ってしまうのも当たり前の流れではあるので、やっぱりあの一件が発端だよな……という気持ちは拭えない

家族のこともいじめのことも完全にサニー関係なくそれぞれの事情だしそれぞれが取った行動の結果なので、その面でサニーに何かを求めるのはお門違いなんですが、それでもやはり"きっかけ"を作ってしまったのは確かなので そしてそれをサニーも自分でわかってるのが辛いんですよね 本来整理をつけるべきマリとバジルのことだけでなく、あの一件に影響されて起こった様々な歪みをサニーは外に出ることで知ってしまったわけで あの時の自分がしたことの代償は、自分が思っていたよりもずっと大きくて沢山あったという……

・マリの死のタイミング

これはちょっと……考えるといくらでも最悪の可能性が出てきてしまうことなんですけど……
ただ、階段から落ちて即死する可能性(もちろんゼロではないし十分あり得る、仮に死んでないとしても脳死や長年目覚めない可能性もあるし重い後遺症の可能性もあった、が)の高さを考えると、そしてあの場のサニーとバジルがまともな判断能力を持ち合わせていない精神状態であること、そんな2人がマリの死をはっきり確認しているわけも無いこと、はっきりしているのは「目を覚まさない」ことだけだったこと……
マリ、直接的な死因は首吊りの方だったかもしれない……という疑念が頭から抜けない むしろ…前述してますが、両親が警察に検死とか依頼してたら頭部への衝撃ではなく絞死だって判定されたかもしれないし、打撲や出血は検死で問題視されないレベルのものだったのかもしれない その話をサニーは聞いていたかもしれない などといくらでも辛い可能性を残してくれてるわけですがこの作品は……

あとシンプルに、階段から落ちた直後のマリのことを「目を開けてくれない」って言ってるのに、"なにか"の発端となったマリの姿は目を開けてるのが恐ろしいんですよね 詳しくないのですが、死後硬直などで後から(死んで数分〜数時間してから)目が開くことってあるんですかね?サニーとバジルはマリのことを動かしまくってるし吊るす過程で頭を天地逆にもしてそうなので、まぁ開いてしまうことはあり得そうですが……
そもそもあの片目開きマリ自体2人の精神状態の異常が見せた幻覚という可能性も高いので、この点はなんとも言えない……し、答え合わせはしたくないですね

いくら考えても感情が地にめり込む一方なので 最後にこの言葉を胸に刻んでおこうと思います

おわり

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