見出し画像

学校教育の今とこれから -教育政策とプログラミング教育について-(イベントレポート)

幹事の中里聡一郎(2020大阪校)です。

2021/4/9に開催したグロービス・ワーキングペアレンツ・クラブのイベントレポートをお届けします。

今回のテーマはこちらです。

「学校教育の今とこれから
-教育政策とプログラミング教育について-」

最前線で教育業界に働き、貢献されているグロービス生のお二人にご登壇いただき、お話しをお伺いしました。
司会は幹事のミッキーです!
まずはご登壇するお二人の紹介から始まります。

〇碓井(うすい) 梨恵
(2017期オンライン校、外資系IT企業、大阪教育大学客員講師、R.LAB代表)
元高校教諭。人生を生き生きと生きる大人が多い世界を作るべく、現在教育業界で奮闘中。

〇丹羽(にわ) 亜希子
(2019期オンライン校、アシアル情報教育研究所)
学校で使うICT教育機器メーカでマーケティングを10年、昨年よりアシアル情報教育研究所で、高校向けプログラミング教育の事業開発を担当。全国の教育委員会や高校の情報の先生に対して、再来年度からから始まる情報科の準備を促進している。来年小学生になる娘に、「プログラミングを教えるぞ~!」と張り切っているプログラマーの夫に負けじと、密かにプログラミングを勉強中。高校向けプログラミング教材の事業開発を担当し2児の母でもある。

・今後、学校教育はどう変わろうとしているの?
・最近よく聞くGIGAスクール構想って具体的に何?
・プログラミングって子どもに必要なの?
・親は何をすればいいの?

こんな親の期待と不安にこたえるべく、まずは碓井さんのセミナースタートです。​

学習指導要領とは?

日本は外国と比べると教育格差が少ないのは実は学習指導要領にあることをご存じでしょうか?

全国のどの地域で教育を受けても、一定の教育を受けられるようにするため、文部科学省で、学校教育法等に基づき、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めています。
これを「学習指導要領」といいます。

この学習指導要領があるからこそ、日本は教育格差が少ないと言われています。海外では州ごとの教育格差やローカルと都市部で教育格差があり、どこに住んでいても一定水準の教育が受けられる点は日本の教育システムのすごい点であるとのこと。
日本ではこの学習指導要領をベースとして、各地域の実態を反映して、各学校のカリキュラムに落とし込まれています。
しかしながら、この学習指導要領も時代とともに変わろうとしています。

国が今の子ども達に求めていること

今はVUCA時代と言われています。

VUCAとは次の4つの文字の頭文字をとった造語のことです。

V(Volatility:変動性)
U(Uncertainty:不確実性)
C(Complexity:複雑性)
A(Ambiguity:曖昧性)

つまり、VUCA時代とは答えの分からない時代のこと。
そのようなVUCA時代では、これまでの情報処理能力、経験や記憶だけを頼りにする教育を受けたではVUCA時代の社会において活躍していくことが難しくなっていきます。

今後、子ども達に求められるのはいろんな情報から自分の頭で考えて、課題を見つけ、解決していく力、物事をクリエイトしていく能力です。

現在はICT無しに経済発展が難しい時代です。
ICT(Information and Communication Technology)とは情報通信技術のこと。
ICT人材の少なさは情報通信社会において大きな課題とも言えます。
産業構造が変化している中、ICT人材の不足は国の競争力低下につながるというショックなお話しもありました。
2018年PISA調査にて、日本の子ども達の読解力の低下が顕著にみられました。これはPISAテストがCBT化されたこと、ICT機器操作に不慣れな日本の子どもたちの実態が表面化しました。ICTを活用して情報を収集・精査し、活用することに不慣れであることが原因と考えられています。

GIGAスクール構想

そのような課題を打破すべく打ち出されたのが「GIGAスクール構想」です。

GIGAスクール構想の要点として

学校に高速大容量の通信ネットワーク
児童生徒一人1台の端末
主体的で対話的で深い学びの実現

が挙げられます。

ICTを活用することによって、目の前の教員が唯一の知識の伝達者ではなくなり、子ども達はICTを活用しながら情報をインプットすることが可能になります。
インプットの時間はテクノロジーによって効率化され、これまで習得にかかっていたインプット時間は、テクノロジーを活用することで短縮されていくことが可能です。
インプットにかけていた時間を短縮し、子どもたちがアウトプットする時間を作り出すことが可能になるのです。
そして、「教育は学校で完結するものではない」というメッセージがありました。学校に全てのことをお任せするのではなく、「社会、家庭でも教育する」ことを忘れてはならなりません。

学校の学びだけでなく、日常生活の中でも習得した様々な科目の知識をかけ合わせて、子ども達がクリエイトしていくための環境や機会をつくる後押しをしていくことが親の役目になるのではないでしょうか。

プログラミング教育は子ども達にどのように関わってくるの?

日本の学校教育が大きく変わろうとしていることを理解した上で、次は丹羽さんから子ども達のプログラミング教育についてお話しがありました。

丹羽さんのお子さんは保育園で友だちが困ったことがあったときに

「それ、アレクサに聞けばいいよ」

と問題解決の手段を大人ではなく、ICTに頼ろうとしたそうです。
私達が子どもの頃は困ったことがあると、大人に聞いていましたよね。
今の子どもたちの生きている世界はすでに親の子どもの頃とは違っており、さらに急速に変化していきます。

VUCA時代で社会構造が大きく変わる中、どういった教育ができるのか。
学習指導要領の目指すべき学びの一つにプログラミングがあります。
これからの子ども達は次のようにプログラミング教育が導入されようとしています。

小学校:2020年度 プログラミング教育導入
中学校:2021年度 「技術家庭科」内容を倍増
高校:2022年度 「情報Ⅰ」必履修化
大学入試:2024年度 「情報」導入

実際のところ、小学校でばりばりとプログラミングを行うわけではありません。
「プログラミング的思考」といって、どのような職業でも普遍的に求められる力として、論理的に考えていく力を各教科を通じて学んでいきます。
一方で高校になると全ての高校生が情報デザイン、テキストプログラミング、ネットワーク構築、データ分析を学ぶようになります。

つまり現在は

読み書きそろばん、プログラミングの時代への過渡期

とも言えます。

丹羽さんが学校の先生にお話しを聞いたところ、

「今の子ども達は課題解決のための発想や着想、プレゼンは得意。
でも、課題発見は苦手。与えられないと何から手を付けていいかわからない。間違えたらどうしようと思ってしまう。」

と言われたそうです。

さらに丹羽さんは言います。

「子どもたちは、つくること、表現することが大好きです。
今はそのメインツールが「デジタル」になっています。
学校教育は過渡期ゆえまだ追いついていかせん。
ぜひ、企業も家庭もフォローして、格差を埋めてください」

私達の子ども達が関わっていく学校教育がどのように変わり、
プログラミング教育がどのように組み込まれていくのか。

大きな気付きを得ることができました。

ちなみに丹羽さんが関わっているぷよぷよプログラミングはこちら
私も小学校からぷよぷよをやっていたのでトライしようと思います。

質疑応答

その後、グループにてセミナーの感想を共有した後、質疑応答タイムへ。

抜粋してお答えします。

Q.学校の先生のICTリテラシーは?
A.現時点ではまだまだテクノロジーのポテンシャルを100%発揮できる状態とは言えない。一部の先生が取り組み始めているような段階。ただ、今後の教員養成においてはICTのツールやプログラミングを使えることを学んだ人たちが教員になってくる。ソフトの変化は時間がかかる。

Q.保護者がフォローできることは?
A.今は過渡期であり、親は寛大で先生と保護者を見守ってほしい。
サポートのない状態での苦情は先生が疲弊してしまうかもしれません。
サポートと提案をセットで。

Q.おすすめのプログラミングスクールは?
A.まずは親もやってみてどこが難しいかを体験してみることが大事。
子どもだからできないと決めつけないこと。
例えば、低学年でもプログラミングはできし、子どもだからビジュアルプログラミングと決めつけない。テキストプログラミングもできる。

最後は記念撮影をして終了です。

写真

参加者の皆さんから今回のイベントで印象に残ったこととして次のようなこコメントをいただきました。

吹き出し画像_上

・プログラミングを教えるのではなく、プログラミング的思考を養うと言うこと
・親も勉強が必要だと思いました
・考える力を得るためというのに納得感がありました
・子供に端末を渡す際に、信じてあげることが大事というお話に、なるほどと思いました。(遊びのフェーズが終われば、自分で使いこなせるようになる)
・プログラミングと構えていましたが、まずは本人が興味を持てることから始めてみようと思えたこと。
・今は過渡期であることを十分に理解すること。寛大な心で先生や子供たちを見守ること(子供は遊びつくしたら学ぶ方向に向いていく)。サポーティブにPTA活動することが重要!
・GIGAスクール構想が進んでも、現場の教員の数は圧倒的に足りていない状況にある。学校の外から、プログラミング教育に取り組めるきっかけを持つようにしたい。
・子供もだが親も変容が必要

吹き出し画像_下

今後のイベント紹介はこちらです。
「男性の育休」の天野妙さんより、男性育休に関する最前線の内容をお話しいただきます。

天野さん

編集語記

私の感想共有グループでは、グループの子どもが通う小学校のアナログっぷり(学校からのメールは文字化けしているような体裁。ワード使えるの?)
の悲しき現状で盛り上がりました。
学校を変えるにはPTAに入り、学校と協力して改革するしかないのでは?
と思いつつ、我が子だけではなく地域の教育のために何ができるのかを考えさせられました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?