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K-1後の世界 〜Road to Reintegration〜 木村ミノルのドーピングと日本格闘技界の闇 後編

前回は木村ミノルのドーピング問題を、RIZIN中心に論じたが、今回は格闘技界全体という観点から考えてみたい。今回の問題は、ドーピングチェック体制の貧弱さ、違反者の処遇の曖昧さ、自浄作用の欠如など、RIZINに限らない、日本格闘技界の闇をも炙り出しているように思えるからだ。

【1】キックボクシング界にはそもそもドーピングチェック機能が無い
木村ミノルは元々はK-1出身選手である。私の記憶では2017年頃から既に、ドーピング疑惑をファンや、一部選手から指摘されていたが、ドーピングチェックがなされたという報道は無かった。K-1離脱後、KNOCK OUTに参戦した際にも、同様であった。これはもう、日本キックボクシング界には、ドーピングチェック機能が無いとしか結論付けられない状態である。コストの問題もあるので簡単ではないことは理解できるが、せめてメジャー団体のタイトルマッチに関しては、チェックをして欲しい。そうでないと、競技自体の信頼性が担保されないだろう。
【2】(プロ)格闘技界全体においても、ドーピングチェック体制が確立しているとは言い難い

アマチュア競技は、ボクシングやレスリングなどオリンピック種目となっているものもあり、プロよりむしろドーピングチェックに関し進んでいる。一方で、プロはボクシングを除くと、しっかりとしたドーピングチェック体制が整備されている様子が無いように見受けられる(これは私の調査不足かもしれない。ご存知の方がいらっしゃったら、是非ご教示いただきたい)。一口にドーピングチェックと言っても、基準(どういった薬剤を禁止薬剤とするか)、検査の実施機関、裁定機関をどうするか、など、実際上の問題は多々あり、体制構築が容易でないことは部外者でも理解できる。しかし、選手の安全面に関わることであるため、そこはなんとしてでも解決が望まれる。日本には検査実施機関としてJADA(日本アンチ・ドーピング機構)が、裁定機関として日本アンチ・ドーピング規律パネルが存在しており、是非とも活用して欲しい。

【3】あれだけ疑惑が渦巻いていた木村ミノルを使う団体が複数存在している
あれだけドーピングに関する疑惑がかかっていた木村を、K-1以外にもKNOCK OUT、RIZIN、巌流島などの団体がリングに上げている。木村のネームバリューに期待してのことであろうが、無責任としか言いようがない。これは日本の格闘技界がずっと抱え続けている、競技化できない=見世物小屋感覚から脱しきれない、という構造と結びついているのではないだろうか。健全な競技として格闘技を発展させたいのであれば、ドーピング違反者をリングに上げるなど言語道断であるが、強さ以外の要素でも、それでストーリーが作られ盛り上がればよい、という、客寄せのためなら何をやっても許されるという前時代的発想から、格闘技運営側が抜け切れていないのではないか。この問題は、観客側にも責任はあると思われるため、また別の機会に掘り下げたい。
【4】現役、引退後含め、選手の問題意識が見えにくい
木村ミノルのドーピング疑惑に関し口火を切ったのは、城戸選手である。だが、その他の選手は現役、引退後含め、関心を示すような雰囲気があまり見られなかった。これは業界・団体への忖度もあるだろうし、言っても改善されるわけないという諦めや、むしろ干されるかもしれないという恐怖心などから来ていたのかもしれないが、いずれにせよ不健全なことは確かで、格闘技界に自浄作用がほとんど無いのではないかと疑ってしまう現象である。現役の選手たちには、反ドーピングに対するムーブメントを起こして欲しかったし、引退後のレジェンド達にも、意見して欲しかった。

以上、とにかく、様々な格闘技が安全に、競技として発展していって欲しいという一念から、つらつらと問題提起しました。批判的検証となりましたが、純粋に格闘技愛から来るものです!明日からの格闘技界も、安全に盛り上がっていってくれることを願いながら、筆を置きます。


#キックボクシング #note #格闘技 #ドーピング #木村ミノル

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