進まない(短編会話劇)
植村(男)/神谷(女)
植村 やっぱ多いんだ。こういうの。
神谷 え?
植村 インスタ見たよ。男と呑んでたじゃん。
神谷 ああ、バイト帰りだ。学生バイトの子。
植村 大抵男写ってる気するもん。
神谷 あ、こういうのって、こういうの?
神谷、交互に自分と植村を何度か指差す。
植村 そう。男と呑んでるのが多いねって。
神谷 まー、ね。こっちの方が楽かな。
植村 わかるわー。
神谷 植村も多いもんね。女友達。
植村 たぶん。他人よりはって感じかな。
二人、同じタイミングでビールを飲む。
植村 え、待って。なにでそう思った?
神谷 どゆこと?
植村 いやだから。俺のなにを見て女友達多いって思った? 俺、インスタとかそうそう上げないじゃん。
神谷 あー。ね。
植村 しかも神谷みたいにそんな頻繁じゃないし。
神谷 うーん。雰囲気? 男女の友情さんせーい。みたいな。
植村 雰囲気かよ。
神谷 違うの?
植村 なにが?
神谷 男女の友情、なし?
植村 この状況でそれ言うか。
神谷 だよね。私といるもんね。
植村 神谷は?
神谷 この状況でそれ言うか。
植村 ですねー。
神谷、ビールの一口飲む。
植村 今日はそっちにすればよかった。
植村、神谷の持つクリアアサヒをアゴで指す。
神谷 なに。文句?
植村 いや、気分的に。
神谷 だっていつも植村は黒ラベルじゃんか。
植村 うん、これがイチバン。
神谷 でも今日の気分的に?
植村 そっちだったかも。
神谷、自分のクリアアサヒを差し出す。植村、受け取って一口飲む。
植村 あー。やっぱ黒ラベルだ。
神谷 じゃあ私が合ってたじゃん。
植村 うん、神谷カミ。
植村、自分の黒ラベルを飲む。
植村 今日は?
神谷 泊まってく。
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