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はたして、海の森水上競技場は「問題の多いコース」なのか?
0.はじめに
5/12〜15の日程でボート競技の全日本選手権が行われました。今大会は東京オリパラ会場だった海の森水上競技場で初の開催ということで、NHKでも全国ニュースとして取り上げられていました。
一方で、海の森と言えば「数年前にワイドショーネタとしてかなり大々的に取り上げられていた、何かと問題の多い施設でしょ」と記憶している人も多いんじゃないかとも思います。長くなるので当時の議論の詳細は記せませんが、おときた都議(当時)のブログ記事(下記リング)で概要を把握できますのでご参照ください。
本投稿では、海の森の後利用が本格的に始まったと言える第100回全日本選手権の運営等を踏まえて、当時行われた議論を私の視点で振り返りたいと思います。
1.そもそも、何が問題視されていたのか?
まず最初に、「何が問題視されていた」のでしょうか?。
当時、相当色んなコメンテーターが独自の視点で様々なコメントを述べていたせいで、何が問題点だったのかよく分からない状態でしたが、大きくは2つの視点に分けられたのじゃないかと思います。
コース性能の妥当性
投資対効果の妥当性
元々は、2の視点(当初69億円で建設する予定だった海の森水上競技場の建設予算が、7倍以上の519億円に膨らんだこと)がきっかけだったのですが、そこに色んな思惑を持った競技関係者が擦り寄ってきて、1の視点(海水や海風などの影響から競技者(アスリート)にとって最適な環境を提供できるとは限らない)で、かなりのネガキャンが行われました。かなり一部の競技関係者だけがネガキャンを行なっていたのですが、その中にボート界を象徴する方もいらっしゃったので、「多くの競技関係者がそのように思っている」とメディア上では伝わっていたと記憶しています。
一方で、投資予算の膨張については、その他の新規恒久施設(オリンピックアクアティクスセンター・有明アリーナ)と比較しても相当に目立った数値だったため、組織委員会や都の予算管理に何かしら問題点があったんだとは思います。
2.はたして、本当に問題だったのか?
次に、今回の全日本選手権や昨年の東京オリパラを振り返って、上に記した問題点が実際のところはどうだったのかを確認したいと思います。
「1.コース性能の妥当性」について
まず、「1.コース性能の妥当性」に関する問題については「完全に杞憂に過ぎなかった」と言えると思います。色んな人がSNS上で「素晴らしいコースだ」という趣旨のコメントを残しています。
水面に問題がないのはもちろんのこと、艇庫前の敷地や伴走路の広さなど、ぼく個人的には、ようやく日本にもこういうコースができたかという感慨が深いです。
— ムラマコト (@Mako_the_Rower) May 11, 2022
関係してくださった全ての皆さんに感謝しながら、お互…
続きは質問箱へ #Peing #質問箱 https://t.co/5vFvYiWkvi
海の森水上競技場、あらためて素晴らしいコースだと思う。もちろん改善というか進化したい点はあるけれど、あの広い土地だけでとてつもないポテンシャルだ。芝生席なんてキャンプエリアみたいにして開放できたら最高じゃない? クルマで乗り入れてテーブルや椅子を出して、BBQして、ボート見て。最高
— 佐橋健太郎@Rowing Coach/編集者/ライター/編プロ代表 (@kentarowing) May 14, 2022
私自身も、①戸田では難しい6艇レースも余裕で可能なコース幅、②近隣住民との折り合いで戸田で近年は禁止されてた鳴り物応援の復活など、新コースの必要性(=戸田のコースがいかに時代遅れだったか)が良く分かりました。
やっぱり6杯レースの方が見てて面白いし、漕いでる方も誰かしらいるので頑張れる気がする。
— 中野 紘志@大学からオリンピック (@hiroshi_rowing) May 15, 2022
あと競漕規則(敗復、準決勝の上がり方)が世界ルールと同じになってくれれば。
タイム上がりだと毎日全力になっちゃうから決勝行くまでに疲れる。
全日本3日目。大雨から始まった1日も昼前には明るくなってきた。
— 佐原英行 (@H_Sahara) May 14, 2022
今大会のチャレンジ2つ。
昼休みの応援団パフォーマンス。戸田では禁止でも、海森は叫んでも、鳴らしても、叩いてもOK。
土曜日のA決勝実施。写真は表彰式クルー。女の子も男の子も、がポイント。 #ゼンニチ100 #栄冠ヲ漕ギ取レ pic.twitter.com/Jz9oQKrnAg
また、東京オリパラに出場した選手や関係者からも、かなりの高評価を得ているようです。
海の森会場は、大会前は実に多くのネガティブな話題を提供してしまったコースでした。お金がかかりすぎる、海水でボートなど機材が傷む、風が強くて競技に向かない、など。しかしながら、私の知る範囲では大会に参加した選手らは「すばらしいコースだ」と口をそろえて言っていました。その理由は、多くの世界最高タイムが更新されたことに尽きます。マラソンやスケート国際大会では記録の出ないコースでは有力選手が集まりません。今回五輪ののちに世界漕艇連盟の会長らがコースを絶賛し「ぜひ国際レースをホストしてほしい」と発言ありました。東京2020レガシーを日本ロウイングが使いこなせるでしょうか。注目していきます。
従って、「コース性能の妥当性」について当時ネガキャンを行なっていた一部の競技関係者には考えを見直していただきたいなと改めて感じました。
もしくは…
今でも「海の森なんかでレースできっこない」と言っていて欲しい。 https://t.co/5UMnfWyDM3
— ムラマコト (@Mako_the_Rower) May 11, 2022
「2.投資対効果の妥当性」について
ただ、「2.投資対効果の妥当性」については、かなり課題がありそうだと感じました。特に、初期投資(=建設費用)がかなり膨張した結果だと思いますが、戸田のコースと比較しても、施設利用料が数倍に膨れ上がっています。
【参考】 戸田公園利用料金一覧表 海の森水上競技場利用案内
施設利用料が膨れ上がった分だけ大会コストも増大するため、それを何かしらの方法で補填する必要があるのですが、今大会では特に「観覧エリアの有料化」がそれを象徴しています。
「ボート競技もようやく観戦料を徴収できるスポーツになったか」と捉えている競技関係者も一部で見受けられますが、競技の価値が向上したから観戦有料になったのでは無く、施設利用料の補填という側面が強い点は忘れちゃいけないと思います。その点は、NHKの記事でも指摘を受けています。
今大会では日本ボート協会が有料の臨時シャトルバスを運行したうえで、ゴール付近の観覧席などを有料で販売して、売り上げを施設の利用料などに充てることにしていますが、今後の施設の活用に向けて課題が浮かび上がっています。
一方で、大会に参加している知り合いのSNSを確認する限りでは、こういった効果も感じられています。
ボートの全日本選手権に出場する遠征組の知り合い達が、気分転換にお台場や有明近辺を散策している様子をインスタのストーリーに上げていて何だか楽しそうですわ。
— Ryo (@goyagoyagoya58) May 10, 2022
周辺施設での経済効果も見込めて、都心の直ぐそばに国際規格のコースがある良さを実感できるフェーズに突入したかもしれないです。
つまり、施設を管理する都の立場で見た場合に、真水の(=実際に都の収入増に寄与する)効果だけでなく、見なしの(=周辺施設等への支出に波及する)効果まで含めれば、中長期的にかなりの効果を期待できるのではと感じています。
3.まとめ
今回の全日本選手権や昨年の東京オリパラを踏まえて、過去に指摘された問題点について振り返りましたが、効果刈り取りに関しては課題を抱えているものの、レガシーとしての活用に関してはかなりのポテンシャルがあるんじゃないかというのが現時点での印象です。
とはいえ、それは日本ボート界が競技場をレガシーとして上手く使いこなせた場合の話であり、それは競技に携わる人それぞれが多少とも考える必要のある内容だと感じます。わたし自身も「競技を愛好する一人として何ができるか」を引き続き考え、実行したいと思います。
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