処方薬依存症患者の家族になって①

ここにきて双子育児から大分トピックが変わってしまいましたが、弟が処方薬依存症になった時からこれまでについて書こうと思います。

弟の病気が発覚したとき、私は目の前が真っ暗になりました。それまでの生活が一変して、家族が大きな渦に巻き込まれている感じで、いつも心がちぎれそうでした。

でも今、私は自分の生活を取り戻し、心穏やかに希望を持って生活しています。辛い時期ではあったけれど、今思えば得られたこともとーってもたくさんあった。もし私の経験が誰かの役に立つことがあるなら・・と思い、今回書くことにしました。

処方薬依存症発覚のはじまりは、弟の借金が判明したことでした。

数年前から弟は、うつになり休職していました。その時期から睡眠薬を飲むようになり、「たまに睡眠薬を飲んだ状態で何かしても覚えていないことがある」と言うようになっていました。そしてある日、睡眠薬を飲んだ状態で投資に失敗し、数百万の損失を出したのです。それをしばらくして父に打ち明けたところ、厳しく叱責されましたが、父に肩代わりしてもらえることになったのです。その金額は少しずつ本人が返済していく約束でした。

ところが…、返済すら始まっていない時期にもう一度数百万の借金が判明したのです。私は、医学の知識が多少あり、ギャンブル依存の方の家族ブログを読んだこともあったので「これはおかしい。家族が返済しちゃいけないやつだ」と思い、親に「これは多分病気だよ。ギャンブル依存症だと思う。私がなんとかするから返済はしないで。」と伝えました。父は「わかった。頼む。」と冷静でしたが、母はもはや感情のジェットコースターに乗っていたので、オロオロめそめそするばかりでした。

そしてそこから、どうしたか。まず、幸運にも精神医学に詳しい親友がいたので、連日相談しました。彼女は一貫して私自身の心配をしてくれて、一生足を向けて寝られないくらいお世話になりました。そして他にも自分であらゆる情報を調べ、本もたくさん読みました。借金については、弁護士さんに相談することになりました。

始めは、近くの依存症の専門医に、本人と一緒に行きました。そこで「おそらくギャンブル依存症だ」と言われ、少なくとも3か月以上の入院を勧められましたが、本人はあっさりと断り家に帰ってしまいました。

元々、本人がかかっていた精神科の主治医にも会いました。その先生は、本人が「多めに飲んでしまった」「薬をなくした」などと言って受診予定日より早めに受診しても、また同じ薬を処方してしまっていました。時には「薬ばっかり飲んでいてもしょうがないだろう!」と本人を叱責したりしていたそうですが、脳が薬を渇望している本人には全く効果がありませんでした。私が「処方薬やギャンブルの依存症だと思うのですが・・」と言うと、その先生は、「依存症は医者が直すものじゃないから!自助グループとか探してみれば?」と言い放って終わりでした。「あなたがたくさん処方しつづけた薬の依存症になったのに…それでも精神科医なの!」と怒りがこみ上げました。

次なる提案は、「うつのリフレッシュ入院」でした。引きこもり状態になっていた本人の生活リズムや体調を改善するため、心療内科にしばらく入院しました。でもここの先生は依存症について全然知識がなかった。心理評価やカウンセリングは受けていましたが、依存症の診断もつきませんでした。本人は入院生活に楽しみを見つけたりしつつも、ただひたすら「退院したい」と言っていました。(後でわかることですが、通常の心療内科や精神科の先生は依存症についてはあまり詳しく知らないのだそうです。ここは本当に改善してほしいことだと強く思っています。)

弟が入院している間、私は精神保健福祉センターに電話をしたり、大学の精神科医の先生に相談したり、情報収集を続けていました。そして、ある依存症専門クリニックを推薦してもらい、そこの外来に継続して通うことこと条件に退院許可を出しました。この入院先の心療内科ドクターは「ご家族が許可すれば退院できます。」というので、本人が退院できるかどうかは家族次第でした。だから弟は私に早く退院したいと交渉してくる。そのへんの本人とのやりとりが、本当に疲れました。しかし、ここでやっと依存症専門外来に定期的に通うようにできたこと、これは最大の収穫でした。

このころ、弟はまだ解雇ぎりぎりのところで仕事を続けていて、「仕事を辞めたくない」が口癖でした。一回辞めてじっくり治療に専念しろ、とみんな口をそろえて説得しましたが、取りつかれたように仕事に執着していました。でも、その仕事へのモチベーションを「仕事を続けたいなら、治療に最善を尽くさないとね」と、依存症専門治療に誘導する材料に使えたのは、とても助かったと思っています。

このあたりで、本人の症状の全貌が明らかになってきます。具体的な症状は、精神科クリニックから処方されたある睡眠薬(一か月分)を一度に飲んでしまうのです。そして無くなるとまた違うクリニックに行き、一か月分まとめて飲んでしまう。これを繰り返し、10件近くのクリニックから処方された通常の10倍近くの睡眠薬を日常的に飲んでいました(!)。睡眠薬を飲むと酩酊状態になり、そこでギャンブルをしてしまう症状もありました。酩酊状態の本人から送られてくるメールは誤字脱字だらけで、意味がほぼわかりませんでした。あの誤字脱字メールは、今思い出しただけでも恐怖です。

この頃私は、ある専門機関主催の依存症専門医の講演会に参加し、個別の家族相談会で家族支援専門の先生と出会います。これが、依存症家族として最大の転機でした。(長くなったので続きます)



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