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コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/9/30)

「脱株主宣言」の存在意義 米有力経営者の視点

【記事の注目ポイント】米経営者団体のビジネス・ラウンドテーブルが8月に「脱株主至上主義」を表明。従来は、株主至上主義を明言していたが、今後は、株主も重要なステークホルダーの一つとして位置づけ、あくまで顧客や従業員・取引先・地域社会などのその他の重要なステークホルダーと同列としている。米国企業は、本当に「脱株主至上主義」となるか。

【一言コメント】いうまでもなく、ESG投資を意識したメッセージと受け取るべきだろう。今や株主利益を追うだけでなく、広くSDGsやESGを意識して、初めて機関投資家やその後ろに控えるアセットオーナーから投資対象として選ばれる。当然彼らのポートフォリオに入ってこなければ、成長のための資金調達は困難になり、結果競争に負けるということにつながる。日本では、のんきに「昔から日本には三方よしという概念があり~」などと得意げに語る経営者がいるが、記事でも触れられているように「米企業はガバナンス改革を進め、株主重視を徹底した末の利害関係者重視への回帰であり、「周回遅れといわれる日本が『米国型経営は行き詰まった』とはいえないはず」(KKRジャパンの平野博文社長)」という言葉を真摯に受け止めるべきだ。日本企業は端的にもっと稼げる体質になることが強く求められている


メルカリ山田氏が社長復帰 ヤフーにらみフリマ強化

【記事の注目ポイント】メルカリは、27日創業者の山田進太郎会長兼最高経営責任者(CEO)が同日付で社長に復帰したと発表。赤字で時価総額も上場時の半分程度の約4000億円となる中、スマホ決済サービスなどの競争が激化する中、2年半ぶりの社長復帰で成長戦略を示すとのこと。

【一言コメント】CEOであったことから、今回の社長復帰はあくまで小泉氏との役割分担を社内外に明確に周知させることにあったと思われる。一方で、ガバナンス上非常に気になるのは、同社には経営陣の指名や報酬を審議・検討する指名委員会・報酬委員会が存在しないことだ。9月27日に出された同社のコーポレートガバナンス報告書にも「当社は、原則3-1に記載する役員報酬や役員候補の指名に関する方針に従って、社外取締役、社外監査役の助言・提言を踏まえて、報酬の決定や役員候補者の指名を実施しております」と決まり文句的に書かれているにとどまっており、実態はブラックボックスだ。同社では、以下のリンク先にあるように、巨額のRSU(譲渡制限付株式報酬ユニット)を導入するなど、役員の処遇はグローバルの同業他社を意識した制度設計となっている。もちろん、グローバルのITサービス企業としてグローバル規模で競争しているのだから、競争力の源泉である人材の処遇もグローバル基準で行うというのは全く問題ない。しかし、もしそうであるならば、ガバナンス体制もグローバル基準に整えるべきで、現在取締役8名中2名に留まる社外取締役の増員と相応しい人選はもちろんのこと、指名や報酬に関することもきちんと委員会を作って、ガラス張りの中、審議・検討する体制を築くべきと考える。

参考リンク

【日本初の挑戦を。メルカリが新インセンティブ制度に込めた想いとその舞台裏】


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