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「議会評価の導入」に関する調査報告書を議会に報告――福島県会津若松市議会・議会制度検討特別委員会

 福島県会津若松市議会の議会制度検討特別委員会(髙梨浩委員長)は6月定例会議最終日の2023年6月16日、「会津若松市議会における議会評価の導入について」と題する調査報告書を議会に報告した。議会評価に取り組んだ成果や課題などが詳細に記述されており、今後の議会評価、さらに住民福祉の向上をめざした議会改革を考える上で非常に示唆に富む内容になっている。

■公募市民委員(参考人)を含めた特別委員会で調査研究

議会制度検討特別委員会がまとめた調査報告書「会津若松市議会における議会評価の導入について」。

 会津若松市議会(議員定数28人、現員26人)は2022年8月から議会制度検討特別委員会(髙梨浩委員長。議員7人と公募市民委員<参考人>2人の9人で構成)で、(公財)日本生産性本部が作成した地方議会成熟度評価モデルの実装化に取り組んできた。約2年間にわたる調査研究による市議会への議会評価の導入についての考え方及び試行した市議会に対する議会評価の結果を取りまとめたのが報告書だ。

 報告書はA4版・49ページ。改選後の次期議会における議会評価の導入案と試行結果をまとめた本編と、議会評価の導入に係る関係例規等改正案や内部評価(試行)に対する外部評価などからなる参考資料で構成されている。

■議会基本条例に議会評価を位置付け、「議会評価委員会」を設置へ

 まず、市議会の改選(2023年7月30日投開票)後、8月から本格導入する議会評価について。会津若松市議会の議会改革の取組が、「市民福祉の向上及び公正で民主的な市政の発展に寄与するためには、議会が自らその活動を振り返り、課題を明確化するとともに、必要な改善を継続して行い、また本市議会の在り方を追求していかなければならない」と指摘。このための手法の一つとして、議会基本条例に議会評価を位置付け、「次期議会より本市議会に議会評価を導入することを提案する」としている。

 実施主体は、議会基本条例に位置付けた組織「(仮称)会津若松市議会議会評価委員会」で、構成メンバーは各常任委員会(予算決算委員会を除く)、議会運営委員会、広報公聴委員会から選出された者各1人(計6人)+公募による市民2人程度。任期は2年で、「当該議員任期の4年間における議会評価を実施」する。

■「総括評価」を次期議会に引き継ぐ

図「議会改革に係る評価サイクルイメージ」

 評価方法としては内部評価→外部評価→総括評価(市民意見聴取)→公表の順で、評価の基準として、日本生産性本部策定の「地方議会成熟度評価モデル」を使用、としている。

 このうち「内部評価」では1年目に議会プロフィールの作成、3・4年目に地方議会成熟度評価モデルを使用して内部評価を実施する。「外部評価」は4年目に「学識経験者その他の識見を有する者」の中から、議長が依頼する3人程度の者により実施。

 4年目の「総括評価」は市民に公表するとともに次期議会に引き継ぐ。総括評価を踏まえた改善策の策定は、「各派代表者会議において正副議長、各会派等の意向を踏まえながら決定する」。また、議会評価に当たって必要な協議調整は、正副議長と正副委員長による「調整会議」で実施、議会全体での協議は「議員全員協議会」で行う、としている(図「議会改革に係る評価サイクルイメージ」参照)。

■強みを再認識する一方、課題が明確化

議会制度検討特別委員会の会合(2022年12月26日)。

 「特別委員会における議会評価の試行結果について」では、内部評価・外部評価を通じて市議会の強み(議会機能の充実・強化など)を再認識できた一方、「情報公開や主権者教育」などの弱みが顕在化し、「次期議会に向けた課題が明確となったものと思われる」と指摘している。

 「評価の仕方」については、「項目の問いに対する答えが整合しているか、根拠を示したものとなっているかという視点は、本市議会が取り組んできた議決に対する説明責任にも共通するものであり、特に意識する必要があった」「評価結果の公表や活用については、具体的にどのような視点・プロセスで行うのかといった議論がが尽くされないまま実施してしまった点は否めず」と率直に反省。外部評価を受け、内部評価で記述が不足している箇所に「追記」を行ったことを説明している。

 「議会評価結果の活用」では、「議会評価を繰り返し行っていくことで、課題を見いだし、より良い議会へと繋げられるよう、議会基本条例に位置付け、議会運営のツールの一つとして活用していくべき」と強調。また、会津若松市議会が議長選挙のたびにとりまとめ、各派代表者会議をとおして全議員の共通認識としている議会改革における目標「今後の議会改革について」を、議会プロフィールの「これから取り組むべき課題」「通任期(4年間)の活動目標・アクション」と連動させることを提案している。

 「市民意見の聴取及び市民への周知」については、評価者として成熟した市民委員(特別委員会の参考人)による評価と、市民から広く募る意見は違う視点で考えていく必要がある、と指摘。今後の市民への広報広聴の在り方としては、議会が行ったこと(アウトプット)に加え、市民に対してどのような影響があったのか(アウトカム)という視点が必要と述べている。

■課題(申し送り事項)を列挙

 「議会評価の実装に向けた課題(申し送り事項)」では、①評価項目における記載(「各評価項目の根拠等の記載は、具体的な事例を交えた分かりやすい内容とする」「内部評価を行う準備期間において評価項目に対する理解を深めておく」など)②評価のスキーム(「評価の時期や内容について留意する」など)③市民意見の聴取方法(「意見を聴取する期間や手法、評価結果への反映方法などについて検討」など)――を挙げた。

 最後に、議会評価の実装化に取り組んでいる「他市町村議会や各種団体との連携についても留意し、仕組みづくりを進めていくべき」としている。

■「政策サイクルが機能している会津若松市議会であるからこそ実施できた」

3人の外部評価者によるヒアリング(2023年4月28日)。

 「参考資料」では、①議会評価の導入に係る関係例規等改正案(議会基本条例の一部改正案、議会評価委員会に関する規程案、議会評価の実施に関する要綱案)、②地方議会成熟度評価モデルによる内部評価(試行)に対する外部評価結果、③地方議会成熟度評価モデルによる会津若松市議会4年間の取組の内部評価について(追記後の内部評価)、④議会プロフィールを掲載している。

 ②の外部評価ではまず、今回の議会評価モデルの取組は「地方議会にとって先駆的な取組であり、政策サイクルが機能している会津若松市議会であるからこそ実施できた」と高く評価した。
 その上で、市民へ伝える観点から、内部評価における根拠の示し方や市民への分かりやすさ、説得力のある説明の観点から課題を指摘。市議会が議会白書として作成している『見て、知って、参加するための手引書』の内容の豊富化、議会評価を選挙の素材とする、議会評価を試行している議会間の「善政競争」を呼び起こす、ことなども指摘している。

■「評価の理由・根拠、具体的な改善点等」を追記

 ③は、当初の内部評価に対して、4月28日に行われた外部評価者からのヒアリングにおける指摘を踏まえ、「評価の理由・根拠、具体的な改善点等」を追記、より分かりやすさを追求したものとなっている。

 たとえば「確認項目①理想的な姿の構築」の内部評価は「成熟度〇(取り組んでいる)」で、その理由等では「議会基本条例に議会の理想的な姿が明文化されているが、議会全体への浸透に向けては一層の取組を進める必要がある」と記述。これに対して外部評価者は「具体的にどのような取組でどのような成果があるのか、課題として認識していることの改善点など、踏み込んだ記述があれば良い」「議会基本条例だけではなく、自治基本条例についても議会側で関与して制定した経過があり、確認項目に記載しておくべきと思われる」と指摘した。

 そこで「会津若松市議会基本条例前文には、『議会が実現すべき理想的な姿(ビジョン)が明文化され、会津若松市自治基本条例にも『議会及び議員の役割・責務』が規定されていますが、その内容や理念は議会や市民に十分に浸透している状況とは言えません。今後、浸透に向けて一層の取組を進める必要があると考えます」などと追記している。

 ④の議会プロフィールは2021年7月に作成したもの。そのため「これから取り組むべき課題」「通任期(4年間)の活動目標・アクション」もその時点のものとなっている。この議会プロフィールは改選後の議員任期1年目に作り直す予定だ。

  報告書は6月28日、市議会HPに全文掲載された。
https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2023062100059/
 
(文・写真/上席研究員・千葉茂明)

〇日本生産性本部・地方議会改革プロジェクト
https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/pi/local-government/parliament.html

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