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【連載・地方議会政策サイクルリポート③】市民の意見を、委員会代表質問の提言に反映――滋賀県甲賀市議会

滋賀県甲賀(こうか)市議会は広報広聴機能を強化。市民との意見交換会等における市民の意見を起点に、各常任委員会で調査・研究、2020年9月から、委員会代表質問をスタートさせた。政策サイクルの取組みはまだ緒に就いたばかりだが、地道に改革の歩を進める同市議会を取材した。

■4次にわたる議会改革特別委員会で議会改革を推進

ガラス張りの甲賀市議会の議会図書室。「一般の方の閲覧・利用も可能」と案内している。

 滋賀県南東部に位置する甲賀市は2004年10月、旧甲賀郡の5町(信楽町、甲南町、水口町、甲賀町、土山町)の合併で誕生した人口8万8677人(2023年10月末日現在)のまちだ。
 市議会は2008年3月に第1次議会改革特別委員会を設置し、議会改革に着手(現在は2023年3月設置の第4次議会改革特別委員会が活動中)。2013年9月には議会基本条例を制定し、2014年11月から議会報告会を実施した。正副議長選挙における議場での所信表明演説(2018年11月)や政治倫理条例の制定(2018年12月)、龍谷大学とのパートナーシップ協定(2019年10月)、議会BCPの策定(2020年4月)などの改革を進めてきた。
 この間、議員定数は2回にわたって削減し、現在の議員定数は24人。2018年3月に設置された第3次議会改革特別委員会では議員間討議の実施や広報広聴機能の強化、常任委員会の代表質問の導入などが打ち出された。広報広聴については2021年11月から「広報広聴委員会」を設置(議長と3常任委員長を除く全員で構成)。委員会には広報部会、広聴部会を設け、議会だよりの編集だけでなく、情報発信や議会報告会で意見交換したことなども議論している。

■委員会代表質問がスタート

谷永兼二議長。
林田久充・議会運営委員会委員長。
広聴活動からの政策提案までのフローモデル図(議会だよりVol73・2023年2月1日発行号より)。

 2020年9月からは委員会代表質問をスタートした。委員会の所管事項で十分に調査・議論した内容について、委員会代表者が議場で質問する制度で、市議会では委員会を基軸とした政策形成サイクルを実現するために活用。委員会の総意として政策提案を行うことで、提案の実効性と議論の継続性が期待できる、としている。発言時間は30分。
 これまでに委員会代表質問により、政策の具体化につながったのは次の通り。
〇消防団員が抱える諸課題と対応策について提言し、課題解決に努める意向を確認
〇行政が示す今後の自治振興会のあり方について提言し、方針見直しにつながる
〇道の駅あいの土山の活性化に向けて提言し、抜本的な見直しが必要な時期であり再整備を進め地域課題の解決につなげることを確認

 一定の効果は出ているが、「まだ議会全体の意見となっていない部分があるのは課題」と谷永兼二議長。林田久充・議会運営委員会委員長も「所管事務調査で現状把握しているがまだ不十分な面もある」と語る。とはいえ委員会代表質問自体、導入している議会は少ないだけに今後の充実が期待されよう。

■「議会だより」はフルカラー化

2018年度から全ページフルカラー化となった「あなたとつなぐ甲賀市議会だより」。
議会だよりの最終ページでは、市民の活動を広報広聴委員会のメンバーが取材し、紹介している。


 議会だより「あなたとつなぐ甲賀市議会だより」は2018年度から全ページフルカラー化した。イラストや余白も多く、より読みやすいものとなった。また、同年7月からタブレットが配備されたことで編集作業もタブレットで効率化。最終ページでは「あなたとつなぐ」をテーマに、市民の活動を広報広聴委員会のメンバーが取材し、紹介している。
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 甲賀市議会で正副議長は慣例で1年交代。これまでさまざまな取組みに挑戦してきたが、「改革が継続できる仕組みが必要」と谷永議長は話す。政策サイクルの取組みの充実に期待したい。

(文・写真/上席研究員・千葉茂明)
(注)記事中の肩書きは取材日(10月4日)時点。甲賀市議会は11月10日の臨時会で、議長に橋本恒典議員を、副議長に田中將之議員を選出した。また、谷永兼二氏は議会運営委員会委員長に就任した。

〇日本生産性本部・地方議会改革プロジェクト
https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/pi/local-government/parliament.html

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