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「地方議会成熟度評価モデル」をテーマに議員研修会を開催――岩手県陸前高田市議会

 公益財団法人日本生産性本部の研究会が作成した「地方議会成熟度評価モデル」に関心を示す議会が徐々に増えている。そのうちの一つ、岩手県陸前高田市議会は2022年12月16日、「地方議会成熟度評価モデル」をテーマに議員研修会を開催した。評価モデルの概要の説明を受けた後、議員はワークショップ形式で試行的に評価(1項目)を実施。今後、計16項目の評価をモデル的に行い、今秋の改選後(今任期は2023年9月10日まで)、本格導入する予定だ。

■評価モデルの活用は、議会の「健康診断」

議員研修会の冒頭、挨拶する市政調査会会長の佐々木一義議員。
「地方議会成熟度評価モデル」の概要について説明する日本生産性本部の鎌田朋宏担当課長。

 議員研修会は陸前高田市議会の市政調査会(任意組織)主催。市議会(議員定数18人)から議員16人が参加した(他に隣接する住田町議会から議員6人が参加)。

 最初に市政調査会会長の佐々木一義議員が挨拶。「地方議会成熟度評価モデルの活用は、いわば議会の『健康診断』。足りないところをチェックし、住民の幸せに貢献していきたい」と参加者に呼びかけた。

 研修会の前半は、日本生産性本部の鎌田朋宏担当課長による解説が行われた。鎌田氏は三重県議会や長野県飯田市議会、福島県会津若松市議会を例に挙げ、「議会からの政策サイクル」の重要性を強調。「政策サイクルは、新しい議会運営の実践の成果を、住民福祉の向上に結合させる重要な要素の一つ」と話した。

 また、執行部が監査委員や議会から評価されるのに対し、議会を評価する手段がないことを指摘(選挙があるが、議会ではなく議員を選ぶもの)。そこで、日本生産性本部の研究会が評価モデルを調査研究・開発してきたと経緯を説明した。鎌田氏は「成熟度モデルに完成形はない。議員間討議による『気づき』が重要」とアドバイスした。

■議員間の共通理解を促進

議員研修会の後半はワークショップ形式で対話。それぞれの評価とその理由・根拠などについて話し合った。
議員研修会には隣接する住田町議会からも議長をはじめ6人の議員が参加。熱心にワークショップを行っていた。

 研修会の後半はワークショップ。1グループ5~6人に分かれ、「地方議会成熟度評価モデル」1項目を実施した。 テーマは「議員間の討議」。確認すべきポイントは「議員同士が自由に討議を行うための仕組みがあるか?」「効果的な運用が行われているか?」「結果として、論点化や合意形成が実現しているか?」――の3点。これを◎(議員間討議が日常的に行われ、機関意思の形成を意識した合意形成が実現している)、〇(議員間で議論を行っているが、必ずしも合意形成が実現されているわけではない)、△(議員間の議論のあり方を模索している)、-(いずれにもあてはまらない)――の4段階で評価するものだ。
 まずは個人で15分間のワーク。評価にあたっては「評価の理由・根拠(認識・方法・結果)」と「評価から得られた気づき(今後の改善課題等)」を併せてワークシートに記入する。
 その後は、グループごとに評価結果について、なぜその評価にしたのかを理由・根拠を示して対話。鎌田氏は「人の話は最後まで聞くこと」と対話のポイントを指摘した。現状認識の違いから、評価は◎〇△とまちまちだったが、多くのテーブルから「(評価は異なっても)方向性は同じだよね」といった感想が出ていた。        

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 今後、陸前高田市議会では各議員が計16項目の評価を実施し、議会事務局に提出。その評価結果を踏まえて2回目の議員研修会を開催する予定だ。 福田利喜議長は日本生産性本部の研究会のメンバー。今回の議員研修会について福田議長は「基本的なことを話す機会がなかなかない。議員間討議を『みんなはこう考えているんだ』という共通理解ができていたのは良かった」と感想を話していた。(文・写真/上席研究員・千葉茂明)

〇日本生産性本部・地方議会改革プロジェクト
https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/pi/local-government/parliament.html

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