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地方議会成熟度評価モデル・自己評価(試行)に対する全国初の外部評価を実施――福島県会津若松市議会

 議会制度検討特別委員会を中心に、(公財)日本生産性本部が作成した地方議会成熟度評価モデルの実装化に取り組んでいる福島県会津若松市議会。同市議会は2023年4月28日、市議会議場で、「議会評価における外部評価ヒアリング」を実施した。地方議会成熟度評価モデルの自己評価(試行)に対する外部評価を行ったのは全国で初めて。外部評価を受け、市民の意見も反映する形で総括評価を実施。同市議会では評価結果を今年7月までに公表する予定だ。


■3人の学識者による外部評価 

ヒアリングの冒頭、挨拶する清川雅史議長。

 会津若松市議会(議員定数28人、現員26人)は2022年8月から議会制度検討特別委員会(髙梨浩委員長、議員7人と公募市民委員<参考人>2人の計9人で構成)で、地方議会成熟度評価モデルの実装化に取り組んできた。その内部評価(試行)結果がまとまり、より客観性を担保するために実施したのが外部評価だ。

 外部評価者は識見を有する者、学識経験者等の中から議長が依頼。今回は議会改革等の動向に詳しい廣瀬克哉・法政大学総長、江藤俊昭・大正大学教授、中村健・早稲田大学マニフェスト研究所事務局長の3人が選ばれ、廣瀬・中村両氏はオンライン、江藤氏は対面で参加した。

 議場には外部評価者の江藤教授、特別委員会の髙梨委員長と目黒章三郎副委員長、オブザーバーの清川雅史議長、横山淳副議長、議会事務局職員らが出席。ヒアリングではまず、清川議長が「内部評価を一定程度終了した。外部評価を合わせて総括評価として、議会改革の方向性、議会運営の検討課題として活かしていきたい」と挨拶した。

 ヒアリングは、髙梨委員長による自己評価の概要説明→外部評価者による質疑・応答→外部評価者による講評、という流れで2時間余りにわたって行われた。

■改選後に本格実施、4年間で評価サイクルを回す

図「議会改革に係る評価サイクルイメージ」
自己評価(試行)の概要を説明する議会制度検討特別委員会の髙梨浩委員長。


 会津若松市議会では、「議会制度検討特別委員会」が議会評価の実務を担い、正副議長と常任委員会等の正副委員長による「調整会議」で調整、「議員全員協議会」で全体協議を行い、決定する。今回の外部評価を踏まえて、議会として総括評価を行い、次期議会へ引き継ぐことにしている(今任期は8月6日まで)。次期任期からは議会評価を本格導入、4年間で評価サイクルを回していく予定だ(図「議会改革に係る評価サイクルイメージ」参照)。

 会津若松市議会の「議会プロフィール」における「議会に期待される役割使命(ミッション)」「議会が実現すべき理想的な姿(ビジョン)」は次の通り。

【ミッション】市民参加を基礎として、市民との活発な意見交換を図り、その上で、議員同士が自由闊達な議論をたたかわせ、市民本位の立場をもってより適切な政策を決定するとともに、その執行を監視し、政策提言や政策立案を積極的に行っていくことにより、市民の負託に的確にこたえ、市民福祉の向上、公正で民主的な市政の発展に寄与していくことである。

【ビジョン】地方分権時代において、議会は、審議権、議決権、調査権、検査権という機能をもって、二元代表制の趣旨を踏まえ、首長と相互の抑制と均衡を図りながら、自治体の自立に対応できる議会へと自らを改革していかなければならない。このような認識のもと議事機関たる議会は、多様な市民の多様な意見を反映しうる合議体としての議会づくりを通じ、成果を目に見える形で出し、市民の負託にこたえ続けていくことが目指す姿である。

 これらはいずれも会津若松市議会基本条例の前文や第1条(目的)を踏まえたもの。「これから取り組むべき課題」では①公正・透明な開かれた議会運営②市民本位の政策監視及び評価の推進③市民参加機会の充実による多様な意見の把握④政策提言と政策立案の強化⑤継続的な議会改革への取り組み――の5項目を挙げた。

 成熟度評価(5つの視点・計16の確認項目)では、◎(継続的に成果を生んでいる)が10項目、〇(取り組んでいる)が6項目、△(模索している)はゼロだった。髙梨委員長は「市議会で最も弱いのは視点4(信頼と責任)の項目」と説明した。

■新型コロナへの対応などが不足

外部評価者の江藤俊昭・大正大学教授(中央)。
外部評価者の廣瀬克哉・法政大学総長。
外部評価者の早稲田大学マニフェスト研究所の中村健事務局長。

 続いて外部評価者による質疑が行われた。江藤氏は「議会評価を試みる意欲と実践は重要」としつつ、「新型コロナへの対応が落ちている。今後の縮小社会についての議論も弱い」と指摘。また「この評価結果だけでは市民には全くわからない」とし、全体の説明や成果と改革課題が明確に分かるよう記述のあり方についても注文を付けた。

 廣瀬氏もコロナ対応がないことや、確認項目の記述が「問い」に対する回答になっていない点があることなどを指摘した。

 中村氏は、評価結果の公表のイメージを質問。髙梨委員長が議会HPや支所での全文公開、広報紙や意見交換会での概要版配布などを考えていると回答すると、中村氏は「広報はいままでと同じやり方でいいのか」と疑問を投げかけた。
 そのうえで、究極の市民参加は選挙における投票率向上や立候補者数の増加(特に若い世代や女性)であり、そこにつながる記述の必要性を述べた。さらに、「なぜ成熟しないといけないのか。議会が成熟することが住民自治や民主主義の成熟につながることであり、連動している」と話した。

 最後は講評。廣瀬氏は「評価結果を誰に伝え、どのように活かしてもらうかを意識してまとめをしていただきたい」、江藤氏は「さらにバージョンを上げた評価を」、中村氏は、「議会評価によって『私も議員になってみよう』という雰囲気をつくってほしい」などと述べた。
(文・写真/上席研究員・千葉茂明)

〇日本生産性本部・地方議会改革プロジェクト
https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/pi/local-government/parliament.html

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