くろねこのミーくん

<I hope>
 黒猫のミーくんと出会った。
 捨て猫だった。
 僕をじっと見つめる目がかわいくて、親に頼み込んで飼う事にした。

 ミーくんは僕に幸運を運んで来る天使みたいだ。

 僕がずっと好きだった舞ちゃんと、ミーくんがきっかけで最近よく話せる様になったんだ。

 でも、どちらかと言うと舞ちゃんの方が積極的だったかな。
 もしかしたら、舞ちゃんもずっと僕の事が好きで、話すきっかけを探していただけだったのかもしれない。
 「ミーくんに会いたい」を口実に、僕の家に遊びに行きたいって毎日言ってきたもの。

 嘘か本当か分からないけど、舞ちゃんが前に飼っていた猫が交通事故で死んでしまって、その猫がお前にそっくりだったらしいんだ。

 僕も舞ちゃんもミーくんの事が大好きなんだ。
 2人でデートしてる時もミーくんの話ばかりしてたな。

 実は、白状するけど、舞ちゃんにプロポーズした時のセリフ、舞ちゃんと僕とミーくんと、3人で一緒に暮らさない?だったんだ。
 舞ちゃんは「ミーくんと一緒なら」だってさ。半分くらいは本気かもな。
 でも、俺もミーくんの事が大好きだ。

 そんなある日、ミーくんがトラックに轢かれて死んでしまった。

 神様がいるなら問い詰めたい。
 なんでミーくんが死ななければならないの?
 なんでこれから幸せになろうとしている3人を邪魔するの?

 俺は悲しかった。猛烈に悲しかった。
 舞ちゃんも凄く泣いてたぜ。
 またミーくんが死んじゃったって。

 またかわいい黒猫を2人で飼おう。今度こそは交通事故で死なない様に大切にしようって2人で話してるんだぜ。

 あの世で見てるかな?ミーくん。
 俺たちの事、あの世から見守っててくれよな。

 俺が舞ちゃんの笑顔を守るから。

<My wish>
 私の大好きだった黒猫のミーくんが死んじゃったの。
 交通事故だった。
 とても悲しくて、悲しくて、悲しくて、毎日泣いていたわ。

 ある日の夜、私は夢でミーくんに会ったの。
 僕はまだこの世でやり残した事があるんだ。
 またきっと舞ちゃんの元に行くよ。
 また仲良くしようねって。

 ある日、帰りの校門の前でこっちを見ているかわいい黒猫がいたの。
 ミーくんだ、絶対ミーくんだ。
 だって、昔と同じに、私の姿を見ると一目散に抱きついてきて、顔を舐めるんだもの。

 ミーくんは同じクラスの藍くんが飼ってる猫だと知ってびっくりしたわ。
 私、ミーくんに会いたくて、それまで一度も話した事なかった藍くんと仲良くなろうと一所懸命に話しかけたのよ。
 ほんと言うとね、私、なんか藍くんって苦手なタイプだったの。
 でも、ミーくんに会う為、私頑張ったのよ。

 藍くんもミーくんの事が大好きなのね。
 ミーくんを見つめる藍くん、すっごく優しい目をしてた。
 藍くん、本当はいい人なのかもね。
 だって、ミーくんがあの世で選んだご主人様なんでしょ?
 私も藍くんのこと好きになっちゃったかも。

 もしかしてミーくんって私たち2人を繋ぎ合わせる為に生まれ変わってくれたのかな?
 だってミーくんは私達2人の愛のキューピッドなんだもの。
 今日もミーくんの話題で盛り上がったのよ。
 私、今、とっても幸せよ。
 ありがとう、ミーくん。

 そうそう、今日は藍くんがプロポーズしてくれたの。
 ミーくんが今夜突然私を訪ねて来てくれたのは、祝福をしに来てくれたの?
 ありがとう。これからは3人ずっと一緒にいられるね。
 大好きな私のミーくん、幸せになろうね。

 翌日、ミーくんがトラックに轢かれて死んでしまった。

 神様がいるなら問い詰めたい。
 なんでミーくんが死ななければならないの?
 なんでこれから幸せになろうとしている3人を邪魔するの?

<Me desires>
 僕は死んでしまった。
 交通事故だった。
 僕が死んで舞ちゃんは泣いていた。
 笑顔の素敵な舞ちゃん。

 大好きな舞ちゃんの笑顔を守ってあげたいなぁ。

 死んですぐに僕は神様に会った。
 僕は神様に言った。
 僕は大好きな舞ちゃんと一緒にいたい。お願いです。舞ちゃんの側にいさせて下さい。
 神様は言ったんだ。
 そんなに舞ちゃんと一緒にいたいのなら、下界での仕事を与えてあげよう。
 舞ちゃんの近くの人の天使として下界に送ってあげよう。
 ただし、天使としての仕事もちゃんとやるんだよ。
 そうすればまた舞ちゃんのそばに居られるよ。

 大好きな舞ちゃんの笑顔を守ってあげたいなぁ。

 僕は藍くんの天使として生まれ変わった。
 僕は校庭の木に登って藍くんの教室を毎日見てる。
 藍くんは舞ちゃんと一緒のクラスなんだ。
 藍くんは舞ちゃんの横顔ばっかり見つめてるんだなぁ。

 ある日の夜、また夢で神様に会った。
 藍くんに愛の大切さを教えなさいと言っていた。
 藍くんは誰の事が好きなんだろう。
 多分、舞ちゃんの事が好きなんだ。

 僕は舞ちゃんの学校からの帰り道、舞ちゃんの前に立ってみた。
 ミーくん?ミーくんだ!絶対ミーくんだ!

 そうだよ、僕だよ。

 大好きな舞ちゃんの笑顔を守ってあげたい。

 舞ちゃんは僕の家に遊びに来る様になった。
 僕は幸せだ。
 大好きな舞ちゃんが家に遊びに来る日は朝からそわそわしちゃうよ。
 舞ちゃんと藍くんが結婚してくれないかなぁ。そしたら舞ちゃん、これからずっと一緒だよ。

 何年か経ったある日の夜、また夢で神様に会ったんだ。
 今度は藍くんに命の大切さを教えなさいと言っていた。

 どうすればいいの?

 例えば、藍くんの大切な人の魂をあの世に送ればいいんだよ。
 藍くんの1番大切な人はだあれ?

 舞ちゃん

 神様、もしも藍くんの大切な人の魂をあの世に送らなかったらどうなるの?

 簡単さ、この世で大切な学びが出来ないのなら、藍くんの魂があの世へ行くんだよ。

 僕は舞ちゃんの家の窓から入る。
 舞ちゃん、これからもずっと一緒だよね?
 舞ちゃんはとびっきりの笑顔で僕を迎えてくれる。こんな素敵な笑顔は初めてだね。

 大好きな舞ちゃんの笑顔を守ってあげたい。

 舞ちゃんはとびっきりの笑顔で言うんだ。
 藍くんがプロポーズしてくれたんだって。
 これからはずっと一緒だって。
 幸せだって。

 大好きな僕の舞ちゃん。

 僕がきみの笑顔を守ってあげる。

(おしまい)

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