これくらいって、どれくらい?
「幼蛇の時は数寸の傷でも、大蛇となった時には数尺になる」(新井白石)
江戸時代、6代将軍家宣に仕え、「正徳の治」と呼ばれる善政を手助けしたという新井白石。
彼は幼少期、貧しいながらも聡明なことで知られていた。
ある時、それを聞きつけた、さる商人が資金援助を申し出た。代わりに、自分の娘との縁談を持ち掛けた。
その際、白石は冒頭の台詞と共に断ったそうだ。
お金のために結婚をした。という評判は、いずれ自分が出世した時に悪評の素になると考えての事だろう。
私は嘘をついたことがない。という、人に自分は出会ったことがない。
自分自身、いろんな嘘を付いてきたし、悪いこともしてきた。
これくらいなら良いか。と、勝手に決めつけて、バレたこともあるし、バレなかった嘘もある。
小学生の頃に、夏休みに頑張ったことを書こう。という作文があった。
特に思いつくことも無かった自分は、毎朝早起きしてランニングした、という嘘を書いた。
それを読んだ担任が、これは素晴らしい!と言い、自分はクラスの代表に選ばれ、全校生徒の前で発表する事になった。
正直、気が気でなかった。今更嘘でした、とも言えないし、発表ともなれば嘘に嘘を重ねることになる。子供心に、恐ろしくてたまらなかった。
が、逃げ出すこともできず体育館で嘘の作文を読み上げた。
近所に住む友達が、ニヤニヤしながら、そんなことしてたんや。と聞いてくる。心臓をバクバクさせながら必死に取り繕うのがやっとだった。
心底、嘘は嫌だと思った。軽い気持ちでついた嘘が、とんでもない事になるものだ。と思った。
それからも、一切嘘はついていない。ということは、もちろんない。
けれども、嘘に対する考え方は変わった。ついつい、簡単な方に流される自分は、つまらない嘘もついてしまうけれど。それに慣れてしまわないようにとは、心掛けている。
特に、つかなくてもいい嘘、しょうもない嘘ほど気を付けたい。
重ねればそれだけ、信用を失うからだ。
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