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日本アクティブ・ラーニング学会チャレンジ教育部会研究会開催にあたって

8月23日20時から22時に、下記の会合にて、問題提起のための講演をすることになっていましたが、開催の趣旨に鑑みて、講演をすることをやめました。(会合はZOOMによるオンラインでの開催になります)

限られた時間の中で、少しでも長くディスカッションをすることが、今回の開催趣旨に沿うことだろうと考えました。

ただ、頼まれた講演をキャンセルすることはあまりにも無責任です。
ですから、参加者のみなさんに下記のような文書をお送りして、問題提起に代えさせていただくことにしました。

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2021年8月18日

日本アクティブ・ラーニング学会チャレンジ教育部会研究会開催にあたって

教育ジャーナリスト
後藤健夫

■ テーマ
 「新学指導要領の精神に問いを立てる」

■メッセージ
「お上のお達しを唯々諾々と受け入れるのではなく、クリティカルに捉えていかなければ、学習者に「問い」を求めることなどできないのではないか。いま立ち止まって考えてみたい」

■参考資料 
 https://reseed.resemom.jp/article/2021/08/11/2084.html
 https://reseed.resemom.jp/article/2021/08/12/2088.html

 ディスカッションのテーマ
 1)「主体的、対話的で深い学び」はどのように言い換えられるか
 2)「思考力、判断力、表現力」とはなにか
 3)「探究」をいかに成績評価するか

参加者には、事前に、この2つの参考資料を読んでいただき、今回のディスカッションを深化するために、自主練として「問い」を立ててもらいます。

 <「問い」を立てるコツ> 僭越ながらのアドバイス
1)読んで「引っかかり」を持つ。
2)「そもそも」を考える。
3)「why」(「how 」「what」)を考える。
4)ひとつの「問い」が立ったら派生を考えてみる。妄想すると言った方がわかりやすいかもしれません。ひとつの「問い」を起点に妄想を膨らませると連鎖して「問い」が生まれます。
5)「くだらない問いだな」と思っても書き記しておく。ほかの「問い」と結びついてなかなか良い「問い」になることがあるから。

具体的にはこんな感じでしょう。

リード文で僕の紹介に「影響力を増している」みたいなことが書いてあるけど、本当かな? という「引っかかり」。
そもそも「影響力」ってどんなものか?
なぜ、そんなことが言えるのだろうか。
どうしたら、影響力を持つことができるのだろうか。
誰への影響力を持ったらより効果があるのだろうか。
影響を与えて遂行させるまでにはどんなことをしたら良いだろうか。
などなど、ここだけでいくつも「問い」が生まれます。

そんな感じで「問い」を立ててください。

<ディスカッションテーマの進行にあたり>
今回は「探究」についての考えを深めることが目的です。

ですから、ディスカッションで結論を出す必要はありません。

例えば「<主体的、対話的で深い学び>こそが探究だ」としたときに「探究は、必ずしも主体的な学び、対話的な学び、深い学びの3要素だけで成り立っているのか」と「問い」を立てることができます。そうした「問い」を大切にしながら「対話」を楽しみながら思考を深めてもらいたいと考えています。

ディスカッションを「討議」「議論」として捉えると、自分の意見を貫いたり議論の勝ち負けにこだわったりして、自分の意見を変えることはないでしょう。むしろ変えてしまったら敗北です。
一方、ディスカッションを「対話」として捉えると、他の人の意見に耳を傾け、自分の意見や考えを高めたり深めたりして、自分の意見を変えていくものなのです。

そう考えると、最後の「報告・まとめ」では参加者がディスカッションを通して「探究」への認識が変わったかどうかがポイントになるのでしょう。

今回の3つのテーマは入試問題における誘導的な小問のようなものです。最終的には高校での新カリキュラム「総合的な探究の時間」に代表される「探究」の成績評価について話し合ってもらいます。つまり、この「探究」の授業で何を教え、何を学んでもらうのかがはっきりしないと成績評価はできないでしょう。ここまで「対話」ができると「探究」への理解も深まってくるのではないでしょうか。

因みに、多くの方はご存じだと思いますが、「思考力、判断力、表現力」は「知識、技能」と合わせて、文部科学省が「学力の3要素」として定めた認知スキルです。成績評価を学力評価として捉えると、この「思考力、判断力、表現力」とはそもそも何かという「問い」になります。「思考力とはなんぞや」。論理的思考力なのか。「判断力とはなんぞや」。状況に応じて判断する力なのか。「表現力とはなんぞや」コミュニケーション能力なのか。こうした「問い」が思い浮かぶことでしょう。(「問い」を立てることは自分の考えを断定しないで、自分の考えを疑うことから始まるのでしょう)

こうした練習をまず参考資料でしてみてください。

また、参考資料には「探究」を示唆した部分がいくつかあります。そして「学力の3要素」を置き換えて表現した部分もあります。これらも「探究」をイメージするための助けになり、そこからも「問い」が生まれるのではないでしょうか。

当日は、1分1秒でも多く、ディスカッションに時間を割きたいと考えています。
従来ですと、基調講演や問題提起のような講演があってそれを受けてディスカッションするスタイルが多いでしょうが、今回は主催者にご理解をいただき、そうした講演をとり止めてディスカッションに時間を当てることにしました。そのために長々とこの書類を書いております。

今回のディスカッションは「対話」重視です。他の人の意見に耳を傾けることが重要です。その一方で限られた時間ですから、ひとりで話して時間を消費しないことも大切なことです。この時間はあなたのものですが、参加しているみなさんのものでもあります。
どうぞご理解のほどを。

是非、当日の「対話」を楽しんで、「探究」への理解を深めてください。

以上

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