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藤井風「HELP EVER HURT NEVER」

藤井風(ふじいかぜ)。今年の5月にファーストアルバムを発表し、人気急上昇中の新人メジャー・アーティスト。23歳。名前も知らなかったが、知人が大変推していたのでサブスクにて早速試聴。予想以上にはまり、CD購入。「HELP EVER HURT NEVER」全曲、藤井による作詞作曲。

シンプルで品のあるR&Bのサウンドに、「何なんw」「もうええわ」という、場違いな言葉がサビで乗っかってくる冒頭2曲。これが実に自然に英語っぽいフィーリングでしか聴こえないという、なかなかの離れ業。「泣くぐらいじゃったら笑ったるわ」というような岡山弁が歌にちょいちょい入ってくるが、これも奇をてらっているというよりは、親しみやすく歌の説得力に繋がっている。いい意味で変で面白い。つくりものっぽくない。

言葉の選び方の妙とともにその声にも耳が捉えられる。例えば3曲目「優しさ」での甘い雰囲気とはガラリと変わる5曲目「罪の香り」での、ゾクゾクする粘っこいヴォーカル。巧いなと思う。

7〜8曲目「特にない」「死ぬのがいいわ」などは女性が語り手になっているようでもあって、それが昭和の歌謡曲に通じるドロっとした世界観を感じさせるなど、その作品の幅はとても広い。

個人的クライマックスは10曲目「さよならべいべ」。アルバムの中では異色のロック・サウンドに、やはり昭和というか1970年代ごろの日本のポップスの匂い、具体的には筒美京平とかを想起させるメロディー。そこに軽やかで切ない歌詞が件の岡山弁で歌われる。「さよならがあんたに捧ぐ愛の言葉/わしかてずっと一緒におりたかったわ/別れはみんないつか通る道じゃんか/だから涙はみせずに さよならべいべ」繰り返されるフレーズに40代のおっさんの胸もジーンとくる。

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