文章組手「心霊現象」2500字

 心霊現象の話を聞くのは大好きだ。youtubeで怪談と検索し、好きな怪談を話す方のを視聴している。心霊現象は多岐にわたる。
・白いモヤが…
・手が足を掴んでいた…
・怒った顔の女が立っていた…
・恨みの声がこもった声が聞こえた…
 聞いたことがある心霊現象を適当に書き出しただけでも止まらない。なのでこのくらいに。。。

 しかし心霊現象。中々に心が惹かれる。私はいわゆる霊感というものがまったくない人間なので「ここはヤバい」と言われるスポットに言っても何も感じない。ただ、怖がることをある種のレジャーとして楽しんでいるフシもあるので、過剰にビビったりはする。
 ただ、多くの人が亡くなった場所には行かない。その理由を今回のテーマ「心霊現象」で説明したい。

 高校生の時だ、その時はまだ千日前プランタン。過去、千日前デパートとして難波の買い物拠点、呑処、各種レジャーの総合ビルとして建てられた場所だ。そこで起こった千日前デパート火災事故。多くの人が亡くなり、今でもデパートがあった近辺では多くの怪異が起こっていると言われる。
 それが千日前プランタンとして復活し、その中にビレッジヴァンガードがあったことでサブカル、パンク、ファッションなどに興味を持ってしまいがちな高校生私と友人で何度も行っていた。私の人生初ビレッジヴァンガードだった。

 当時、大阪に住む人間として火災事故があったことは知っていた。「衝撃事件50連発!」的なテレビ番組でもよく取り上げられていた。しかし、インターネットもそれほど普及しておらず、何より頭が悪い高校生ズはプランタンと千日前デパートが同じ場所にある建物とは知らず、毎回帰宅後に「勢いで買ってしまったけどこんな雑貨どうするんだ。アストロゾンビーズでフィギュア買えば良かった」となってしまっていた。

 何度も何度もプランタンに行った。ある秋の日、ビレッジヴァンガードがある階にエスカレーターで上がってきた時だ、

「痛い痛い、熱い熱いって声がずっと聞こえるんだよね。私はそういう人たちとチャンネルをつないでいるから聞こえるけど普通の人には無理だと思う。私は聞こえてしまうからそれを受け入れるしかないよね」

 などと聞こえてきた。声の方に顔を向けると、本当に普通の女性。顔も服装も完全に忘れてしまっているので、本当に普通の格好をしている人だったのだろう。その人がものすごい早口で上記のような言葉を言いながらフロアをずっと歩き回っている。

「やべえ人がいるな」

 そんなことを言いながら私達はビレッジヴァンガードに入っていった。女性のことは忘れ、遊べる本屋の本領発揮、カルチャーに飢えていた私達はどんどん遊び、少ないバイト代から捻出したカルチャー代を駆使して買い物を終えた。
  ホクホクした気持ちで店を出ると、あの女性がまだいた。エスカーター、エレベーターがある広いホール、季節の服の安売りなどをやるスペースを中心に壁沿いに多くの店舗がある。そのホールを早足で周りながら先程と同じような言葉を発している。

「まだいるやんけ」
「ちょっと後ろついて行って一緒に回ってみようぜ」

 小心者の私はその案に尻込みしていたが、高校生だからこそ友達に察せられるのが嫌で渋々承諾。多少の距離を取り、その女性の後ろを付いていく。ずっと何かを喋り続けている。まるで誰かに話しかけるように。しかし、確実に女性は一人。歩くペースが思いの外速く、何周もついて歩いていると息が上がってきた。最初にキープしていた距離が開き、女性がエレベーターがある壁に続く角を曲がった。植木などがあり、曲がった先にいる女性が見えなくなる場所なので私達は少し速度を上げる。そして女性と同じように角を曲がると

 その女性は消えていた。

 不思議なことがあると声が出なくなる。私と友人は顔を見合わせ驚くばかり。いや、エレベーターがあるところで消えたのだ。ならばエレベーターに乗ったに違いない。エレベーターがどの階にいるのかを示す表示を見ると下の階から上に上がってきている。2機あるが、両方ともそうだ。階段でも移動はできるはず。しかし階段は少し離れたところにあり、私達が追っていたスピードを振り切ってそこまで移動するのは難しい。それに全力で走れば足音も出るだろうが私達には聞こえなかった。

 私達は何も見なかったことにして近くにある餃子の王将に行きメシを食った。色々な雑談をしても結果としてあの女性の話になる。そこで友人が仮説を言う。

「もしかしたらエスカレーターに乗って少し速く歩いたのでは?エスカレーターは全然見ていなかったはず」
「それにしては早すぎるとは思うがそういうことなんかなあ」
「多分そうじゃない?でも…」
「何?」
「ってことはあの女性、俺たちに気が付いていたってことだよね」

 何周も付いて回っていたので気がつくのは当たり前だろうが、行動は一切変わっていなかったはず。しかし、認識をしていた上で行動を繰り返しているのは怖い。なにより、女性が消えた理由をハッキリすることができずに消化不良な気持ちが残ったままだ。

 もしかしたらただの変わった人で、調子に乗った高校生を避けた人なのかもしれない。それか痛ましい事件があった場所で必要以上に騒ぐ私達を諌めるために出てきた存在なのかもしれない。その後も何度かプランタンに行ったが、あの女性と出会うことはできなかった。

 それから大人になり、車も乗れるようになったころ、心は子供のままの青年で心霊スポットに行くことになったが、その場所も多少ニュースになった場所なので私は断った。そこに幽霊が出るとかより、もし、あの時の女性がいたらどうしようと考えてしまったのだ。あの時の女性がいたら、私は確実に幽霊やこの世ならざる物の存在を信じるようになってしまっていただろう。
 心霊現象、そして幽霊。信じると本当に色々と怖くなってしまう。今後も私はそれらから目をそむけ続ける。自分が経験し、わかってしまうとエンタメとして楽しむことができなくなる。前向きに怖がることができなくなる。部屋鳴りの音が妙に気になるが、今日も私は信じない。

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