懺悔:何故私は「声優やってました」と言い続けたのか~4~

前回のあらすじ!わーい!最終面接!!社長さん好感触やんけ!レッツゴーロックンロール「お祈り」うぎゃあああああああああああああ!ぽっぽぴいいいいいいいいいいいいい!私は世界の迷子!私は世界の迷子!アイムパセンジャー!らんらんらんらんららららー!https://note.mu/gotoofthedead/n/n94a7a128f216


酒を飲んでいた。もうかなり大量に。酒をほぼ飲めない私は無理をしてお酒を飲んでいました。なぜか?

「よし!一社落ちる事に缶チューハイを飲もう!」

そう決めたのですが、そこから一気に6社落ちたからです。それも全てウェブレジュメで。何がレジュメじゃ!日本人なら日本語話せファック!!!世界を呪い、呪いの濃度がどんどん濃くなっていく。「もしかしたらアタイって世界のお荷物なの!?教えてアルゴマン!」そう叫んだ瞬間最強に凄まったニセ毛利がこの世界に降臨し邪と言う邪を打ち払った。世界は静寂を取り戻し僕はただ悲しいふりをする。

だめだ。完全にだめだ。

色々と駄目すぎる。何をどうしたら良いのか?落ちた所は普通の工場も含め、芸能関係、アニメ、声優関係の所でした。やはり駄目なの?これなに?同族嫌悪ってヤツ?完全に無職になり、貯金を食いつぶす毎日。あの最終面接に落ちてから、受ける所は全て落ち、もう40回位祈られていました。気分はもうブッダ!神!イエーイ!俺は神だぜ~!お前の大便を可愛いポメラニアンに塗りつけても許されるねん!神やもん!ああ、また現実から目を背けてしまっている。本当にどうしよう。これが、これが、芸能の世界で生きてきた罰なのでしょうか?いや、遊んでる世界と思われるかもしれないですが、結構真面目にやってきたんですよ。それが今コレ。電車に乗ってハローワークに向かう時、凄く態度が悪いサラリーマンや狂ったOLや何かを発症したスーツの人を沢山みます。彼等に仕事が有ってなぜ俺に仕事が無いのだ?おかしいじゃないか。くれたまえよ。そしてお銭をくれたまえよ。

もう一度バイトをするか…そうでもしないと…死んでしまうかも知れない。そうだ、派遣のバイトをしよう。派遣のバイトだったら就活しながらでも大丈夫じゃないか。オッケーオッケー。楽勝だ。何か面白そうな所でバイトするか。イベント整理!?ええやんけ、私は元々整理してもらった場所で何かをしたりしていたのだ。その恩を返す時が来たって事よ!

善は急げ、銭も急げと言う事で、映りが悪くて捨てる予定だった証明写真を書き損じの履歴書に張り付け登録会とやらに行きました。面接なども特になく、書面に記入と捺印をしたら終わりでした。ああ、職を得た。バイトだったらこんなに簡単に職を得られるのにどうして社員には成れないのだ?でも、そういうものだ、簡単に切れる、誰でも良いって仕事ならなんだってすぐに成れる。俺はもしかしたら選びすぎているのか?なんでもない誰でも出来そうな仕事をやれば良いのか?でも、それはその仕事をやっている人に失礼な考えだ。失礼なのは分かっている。それでもそう思ってしまうのは世界に否定された呪いが私の心を蝕み始めたからなのでしょうか?

とりあえずその場で出勤する仕事を一つ決めました。声優関係のイベントがあり、何となく機微が分かるので会場周辺の整理や案内の仕事をする事になりました。

人は労働に飢える。労働は金を稼ぐだけではなく、心の平穏を保つためにも必要なのだ。そこを通り抜けた賢人だけがニートになれる。ニートも才能だと思う。だって耐えられない。将来や周りの幸せを見ていると仕事がないと言う事が全く耐えられなくなるのだ。

朝五時過ぎに家を出て早朝の集合場所に向かいました。点呼をとり、地図や予定を渡されて柵などを適当に運ぶ軽作業をやっていました。良いじゃない。労働良いじゃない。これよ。血が求めているよ労働を。労働ポンチャックするぞ!そんな気持ちでガンガンに柵を運び倒していたら社員さんから褒められたりしてちょっといい気になっていました。人と普通に話せたりする事が嬉しいのです。自宅ではPCに向かって企業にメールを送り続けるか、多くの転職サイトを渡り歩いて仕事を探すだけです。外に出て人と触れ合うのがこんなに楽しいのかと感じていました。そしてイベントが始まりました。女性声優が歌ったり踊ったりしています。トークもしています。入場前は「押さない、かけない、ジャングルブギー」と周りに注意をしていたのですが、イベントが始まってしまったら結構暇です。会場の中にはいませんでしたが、声などは聞こえてきました。その時聞き覚えがある声がしました。「どうも~!声優川アイドル子です~!」

その専門学校時代の後輩の名前だった。

血の気が引いた。そして悲しくなりました。声優はとっくの昔にやめた。しかしこれはなんだ。この地獄は。うわあ、なにこれ。吐き気がする。あいつは努力してそこに立っているんだろう。俺は努力してここでお客の整理をしている。俺はどこで間違えたんだ。最初から間違えていたのか?その思いは友達のV系バンドマンを見ても強くなっていました。てめえ勝手に辞めた分際で良い感じの人に嫉妬する心は残っているのです。彼女は俺を見たら「せんぱ~い!!!」と寄ってくるだろう。しかし俺は「おー!久しぶり!!」なんて言えるか?無理だ。倒れそうだ。マジなんなんだよこれ。かなりきつい。

そこから先の記憶は余りなく、嫉妬した自分への恥ずかしさと、情けない現状のダブルパンチでもう泣いちゃいそうでした。いや、すでに泣いて居ました。帰りの電車の中では自分自身の過去が回っています。回って回ってどうしようもなくなっています。
そうだ、もっとちゃんとしよう。ちゃんとすれば誰か見てくれる。誰かに見られる為に東京に来たんだ。それは就活や就職でも同じなんだ。俺は誰もが若い時に経験して失敗する就活を三十過ぎてやることが出来ている。これはアドバンテージだ。前に受けた会社は俺の経歴を面白がってくれた。多分戦おうと思ったら戦える。今までは何か格好をつけた所があったのかもしれない。「芸能やってましてん!」そんな人間腐る程いるじゃないか。ここは東京なのだから。狂った街なのだから。

もう一度ちゃんと戦おう。もう嫉妬なんてしない。その先に何があるのか…何って就職が有ってくれないと困るじゃねえか。

帰り道、100円ショップで大量の履歴書を買い帰宅しました。これからの就職活動は違う。そうだ。真面目にやろう。運なんて関係ない。もう本当に自分自身の地力を見てもらう事で自分の道をひらこう。そう言う風に今まで生きてきた。その生き方をもう一回真摯にやるんだ。それしかない。それが何より大切な事だ。もう俺は何にも頼らない。俺は声優だった事を肯定的に人に伝えていたか?何かネタになると思って伝えていたはずだ。でもそれは違う。それは過去を、過去を馬鹿にして今までの自分自身も裏切っている行為だ。もっと真摯に、そうだ、声優だったことはちゃんと言い続けよう。それだけじゃなくて、そこで社会的な事を学び、多くの事を経験してきた事を言おう。そうだ。向き合うんだ。分析するんだ。俺が声優で得てきた事は演技だけじゃない。狂ったヒエラルキーの中で立ち回りも学んだ。多くを学んだ。それを上辺だけ使ってごまかしていたんだ。声優だった自分に馬鹿にされるのが怖くて。そうだ。もう真っ直ぐに生きるしかない。それしかないんだ。

その時携帯が鳴りました。古い友人からでした。こいつからの連絡は十中八九飲酒の誘いです。まあ今日くらいは良いかと電話をとり、お互いの近況を話していました。

「てな感じで就活してるんだよね。頑張るわ」

「あ、ならウチ来る?」

「はい?」

「いや、丁度人が辞めるんだよね」

「はい?え?」

「ちょっと待って、社長!良いのが居ました!タフな奴です!」

「もしもし、社長の黒腹と申します。明日暇?」

「あ、暇です。はい。」

「じゃあそうだなー。十七時に銀座来て。大丈夫?あ、履歴書とハンコ持って来てね」

「あ、履歴書とハンコ。はい。」

「それでその後、ちょっとだけ仕事手伝ってもらうからさ」

「はい。仕事を。はい。」

「じゃあよろしくね~」

「後藤!仕事決まったね」

「あ、決まったんですか」

「こっちとしても助かったよ~!マジで人いなかったからさ!」

「あ、こちらとしても助かりました。明日、はい。銀座。なるほど」

「じゃあ明日!」

「はい」

人は簡単に変われない。無理だ。決意は崩れる。だがやってきた事は崩れない。とりあえず生きていこう。

~完~


これはほぼ完全にノンフィクションなのですが、やはり何か適当に嘘を混ぜないと面白くないですね。そんなこんなで色々と頑張ります。シクヨロです。雑。雑。雑。









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