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抽象化できれば、アイデアは無尽蔵に出てくる

最近読んだ本。
すごくいい本だった。
高校生を対象に、アイデアの出し方を教える講座をまとめたもの。
三章に分かれていて、1章はアイデアを伝える道具としての画の書き方、2章は分解して構造を観察する、3章は観察した構造を転用して新しいものを作り出す。

第一章は、アイデアを伝えるための画の書き方。
上手いとか下手とかは関係なく、ある程度訓練すればだれでもそこそこに伝わる絵は描ける。

まず、姿勢を正すと、線をひきやすい。
特に直線で差が出るんだけれど、手首中心に動くと円弧になってしまう。
姿勢よくお腹から腕全体を使えると、まっすぐに近い線を描きやすい。

ものの形の捉え方。
大きくふたつ。
そのものを描こうとするのではなく、その外側を描く。
構造を中心に肉付けしていく。

構造を捉えると、形になりやすい。
構成するのは、軸と楕円。
もしくは骨組み。
どこに軸があるのか、骨があるのかがわかると、伝わる画を描きやすい。

骨組みや軸を捉えるということは、肉を削ぎ落として抽象化させるということなのかも。
単純化してそれぞれのかかわる構造として捉えられれば、形にしやすい。

第二章は、分解して観察する。
機械製品を分解すると、空気を入れると震えて音が鳴るとか、ゼンマイなど駆動させるとか、熱源近くに空気を通して温めるとか、そういう仕組みと、それを製品の内側にまとめあげる工夫が見えてくる。

構造を単純化して見ていくのは、画を書くときと一緒。
スケッチはただ姿を写しとるだけではなくて、単純化してその構造と部品同士の関係性を見ていく作業。
それが次のステップ、アイデア出しに繋がっていく。

アップル製品は、プラスチック成形や組み立てる手順とか、そういうひと手間が積み重なって、あの端正な美しさになっている。
その話もすごくおもしろかった。

成形の型から抜きやすくするには、台形に設計するのが通常なところを、成形の型をひとつ増やして加工している。
プラスチック成形の凸凹が表面に出ないように凹みが計算されているとか、ビスが表面に平らに打ち込まれるように、斜めにネジ穴が掘ってあるとか。
細かな部分に一手間、ふた手間が加えられて、あのすっきりとした形ができあがっている。
蓋を開けた内側の美しさについても、こだわっているとは。

そういうひとつひとつが滲み出てくるのかな。

第三章は、分解して観察した仕組みや関係性から、新しいものを作り出す。

高校生たちがアイデアを出し合っていく経過が読める。
これがアイデアを出すヒント。

新しいものをゼロから考えるのはとても難しくて、何かと何かを掛け合わせると、考えやすい。
空気が通ると音が鳴る仕組みを大きくしたり、小さくしたり、素材を変えたり、場所を変えたり。
いかにその「元になったもの」から離れられるかが、とても重要なんだな。

日ごろから、わたしも新しいことを考える(妄想する)のが好きなんだけれど、他にある構造や関係性を別のものと組み合わせてサービスを考えたりすることが多い。
この方法がわかると、際限なくアイデアが出てくるのだ。

いろんな本で「アイデアの出し方」について語られるけれど、だいたい言ってることは同じようなこと。

細野功さんの「アナロジー思考」も、考え方はかなり近い。

アイデアを出すには、構造や関係性を抽出する訓練をするといいのかな。
そして、元になったものやことから遠く離れる練習が必要だな。

白丸カフェの本棚に追加しました。
貸し出しもしています。


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