土中の水と空気の動きを考えた、山が元気になる道づくり
土の中の水と空気の動きを考えた道づくり。めぐる水講座、今回は秩父の山林で出張講習をしてきました。場所は埼玉県秩父市にある「オリコの森」。森の中を快適に移動できるように、歩くための道。森に人が入るほど山が元気になる。そんな道づくりを目指します。
どこに道を作るのか。
まずは場所の見極めから。
山を観察していきます。
基本的には棚状になってるところを選びます。だいたいそこはケモノ道(動物がよく通る道)があります。
反対に道を作らないほうがいいのが、水脈(水が多く地中を流れているところ)の上。土が安定せず、崩れやすいからです。
水脈は、マクロとミクロの視点で見ていくと見つけやすいです。
地形の読み取り方については、こちらをご参照ください。
水が走らない道
山の斜面は、傾斜が大きいほど水が走りやすいです。水が走ると流れが集まってエネルギーが増し、土砂を削り、崩れる原因になります。水が表層で移動するだけになるので、しみこまないまま谷へと流れてしまいます。
水を走らせずにじんわりと染みこませるためには、
①斜面の角度を変える
②分散させる
③硬いものにぶつける
などの方法があります。
斜面に水平×垂直の段を作ると、
・角度が変わる
・水平面が水を受け止めやすくなる
・土が垂直に削られることで、空気が通る(谷側で空気が抜けることで、山側がしみこみやすくなる)
・垂直方向(真下へ)水が誘導されて地面にぶつかり、速度が弱まる。分散される。
などの効果が期待できます。
このように、水平×垂直の段は、水の動く速さがゆっくりになり、降った雨がしみこみやすくなります。
以上の理由から、歩く道を水平×垂直に作ります。道ができることで、水が走らない仕組みを林内に張りめぐらせることになるわけです。
今回の道は車両を使わないので、高低差のある部分は、階段状にします。斜めに道をつけてしまうと、道が水を走らせてしまうからです。階段も水平×垂直。
掘ったままでは時間が経つと崩れてしまうので、山側の溝には小さな点穴を作ります。小さな点穴を溝に沿って点在させることで水が誘導されて溝の形が保たれやすくなります。
点穴は、スコップなどで穴を掘り、炭を底に入れて枝を縦に挿していきます。穴の上部には落ち葉を詰め込んで枝が揺れないようにします。これは泥が入り込まないようにするのと、時間の経過とともに枝葉に菌糸が育つようにするため。菌糸によって小さな隙間ができて常に水がしみこみやすくなっていきます。
手間をかけられないときには、長いペグやドライバーなど棒状のものでグリグリと開けた細長い穴でもよい。そこに炭のかけらと枝を挿す。
最後に落ち葉を道に撒いてカバーしてしあげます。
歩くときには、
どこに足を置くかも重要。道の真ん中か、山側の溝の近くを踏むようにすると、道がカマボコ状になって、長持ちします。実はカマボコ状の道が理想。道の真ん中に落ちた水が溝と谷へと分散されるからです。ちなみに滝つぼに落ちた水も、山側へ逆流している動きと、下流へ流れ出る動きがあります。
注意したいのは、決して縁(ヘリ)を踏まないこと。ヘリを踏んでしまうと路肩を崩し、斜めにしてしまいます。斜めになると道の上で水が走り、大雨などで道が崩壊しやすくなります。
また道以外の斜面を歩くときには、スコップで段を切りながら歩くようにします。足一つ分の小さな段です。
これを作るのも道を作るのと同じ理由。角度が変わって水が走りにくく、表面の土が取り除かれて空気の抜けを作る、平らな面が水を受け止めやすくなるからです。また斜面に小さな凸凹がたくさんできるので、段を切りながら歩くだけで水がより走りにくくなっていきます。
段切りがたくさんできると平らな面を歩けるので、疲れにくくもなります。
めぐる水講座は、
土の中の水や空気をどうやって動かすのかを原理原則からレクチャーします。奥多摩、青梅で定期開催中。3名以上の参加者がそろえば、出張講習もできます。
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